体をきたえる、誠をきたえる

コロナ禍騒ぎもようやく落つき、にぎわいを取り戻した夏の夜の花火の音を遠くに聞きながら、コロナ禍であろうがなかろうが変わらぬ日々を送っています。

絵葉書ありがとうこざいました。お元気になさっておられるようですね。いつも記事を読んでいただきありがとうございます。約束とは… 夢を現実化するトレーニング も読んでくださったのですね。

ぼくは相変わらず、臨床に向き合っているか、勉強をしているか、畑を耕しているか、その内のどれかをしている毎日です。飽きもせず楽しくさせてもらっています。

夜は9時過ぎに寝につき、朝は4時過ぎに起きて勉強した内容をブログをまとめ、5時半からスクワット500回、腕立て伏せ600回、ジョギング3.5kmを20分弱で走ってから朝食を摂って、7時から自家製野菜 (農薬不使用・化学肥料不使用) を収穫パッキングして直売所に出荷するという余計なこと(笑)までして、8時に家を出て出勤、9時から臨床に没頭…という日課を繰り返しています。朝から汗びっしょり、通勤車内のエアコンでやっと一息です。

休日は院のかわりに畑に出勤?、終日汗を流しています。耕運機は使わず、すべて手作業です。深く耕すことを自分に課しています。この暑い時期、ゆっくりするのは雨降りの日くらいです。

なぜここまでやるのかと聞かれても、自分との約束だから仕方ありません笑  

盛夏のサトイモ。
茎の青い品種はズイキとしても美味なのでそれ用に作っている、青ズイキ (ハスイモ) と同じく今が旬。
でも芋は紫の茎の品種のほうが美味しい。芋の収穫は中秋の名月から始める。

ジョギング・筋トレ、決して真似はしないでくださいね笑。

真似してほしいのは早寝です。眠れなくても、太陽のないくらい時間帯に、目と口を閉じて寝室で静かに横になっているだけで「陰」が補われると説明しましたね。活動 (陽) は休息 (陰) という土台の上に乗っかります。陰 (落ち着き) を得てから陽 (はつらつさ) を得るのが順番です。陰を得たら (早く寝ることができるようになったら) 、最初は毎日5分くらいのウォーキングから、コツコツ始めるといいです。
>> 早く寝なさい!

運動は強靭な体を作るために不可欠です。特にこの暑い夏、汗と脂をしぼって体を動かすことは非常に大切です。植物が葉を広げて陽の光をいっぱい浴びて光合成し栄養を蓄えるように、人体が健全であるかどうかは夏に動けるかどうかが鍵をにぎります。
>> 夏の養生… 蕃秀 (ばんしゅう) とは

体は動かしてナンボです。口から栄養をいくらとっても、体を動かさなければ全く意味がありません。体を動かせば動かすほどお腹がすけば、体は栄養をドンドン取り込もうとします。美味しくて仕方ない。そして、それが血となり肉となります。それが生命力を強くします。
>> 栄養のとりすぎと仕事のしすぎ

ただし、体を動かすということは負荷をかけるということです。生命力のラインよりも負荷が上回ると、生命力は下がってしまいます。逆に、生命力のラインぎりぎり手前まで負荷をかけると、生命力は押し上げられます。無理にやればかえって体を弱らせる、適度な運動ならば生命力が強くなる、ハイリスク・ハイリターンと言っていいです。だからといってサボっていても体を弱らせる、マストアイテムでもあるのです。

ここは自分とシッカリ向き合わないといけない部分です。

生命力が上がるということは、健康になることです。病気が改善したり寿命が長くなったりすることです。生命力が下がるということは、不健康になることです。病気が悪化したり寿命が短くなったりすることです。

僕の場合は、ウォーキングを短時間からはじめ、だんだん量を増やしてウォーキング3時間、ジョギングに変えてだんだん量を増やし、多い日は10kmを走り、はじめて筋トレが「できる」ようになって今のルーティンになっています。できるかどうかは、体に聞いて (脈診で) 判断しました。
>> 脈診で “体の声” を聞く 

その上で、自分と向き合いながら、オーバーワークにならないように速度や力の入れ具合を時々で慎重に調整しています。気持ちよさを感じつつできるということが必須です。
>> 自分と向き合う、体と向き合う

ここまでやれるようになるのに20年近くかかっていると思います。

このようにして築き上げたルーティンは僕にとっての財産です。もう二度とあの弱かった過去に戻りたくない。また今日も汗と筋トレとジョギングか…とは目が覚めたら毎日思いますが、そんなことくらいはあの苦しみに比べたら大したことありません。生命力のレベルを下げたくないので続けています。

昨秋の治療の際、〇〇さんには余計な運動・無用の外出はしないように指導しました。寒邪に囲まれている状態 (隠れ表証) だからだ…と言いましたね。その段階では、いかなる弱い負荷であっても、負荷をかけること自体が生命力を弱らせる状態であることを、ご説明したことと思います。
>> 難病・奇病と表証

寒邪に囲まれた病態 (表証) の代表は「カゼ引き」で、カゼを引いているときは体を鍛えたり出歩いたりしていては良くならない、それと同じだよ、と説明しましたね。
>> 隠れ表証と大阪城

ぼくも30代までは、ウォーキングに出かけても5分も持たずに、戻って寝込むこともあるほど弱い体でした。いま思えば寒邪に取り囲まれていたのです。

そこから徐々に生活を正し、動けるようになりました。

直売所の出荷を始めたのもその頃だったと思います。その頃は本当にお金がなくて、生活費のいくばくかの足しにと始めたのがきっかけでした。こんな田舎で「一本鍼」を貫くのは思った以上に難しく、そのとき心の支えになってくれたのが野菜と、そして「土」でした。

その恩義を忘れぬためにも、今も少し多めに野菜を作り、ほんの少しずつですが出荷しています。もうそんな余計なことをしなくてもいいのですが、長い間支えてくれたものをケロッと忘れてしまうのは本意ではありません。

だからといって何が何でもとは思っておらず、無理となればいつでもやめようとは思っていますが。
>> 執着とは… 一ばんめは「この体」

こうやって毎朝のトレーニングをこなせているのも、体調の心配なく臨床や勉強を好きなようにさせていただいているのも、「土」に支えられて出来ているものだと感じています。畑仕事に費やす時間は一見無駄なことのようにも見えますが、決してそうではありません。 種まきなどの期日に迫られ、重い腰を上げて外に出る。気がついたらガンガン耕している。体を動かすキッカケを頂いています。
>> 脾はなぜ重要か…東洋医学の「土」の哲学

土の恩恵が今も昔も変わらないのと同じく、それを享受する僕も、ずっと変わらないものでありたいと願っています。

こういうものが「誠」であるとするならば、やはり僕の頼りない体と心は、この「誠」によって支えられ、助けられ、鍛えられているのではないかと思います。ただ闇雲に体を動かしてきたのではなく、その土台のうえで知らず知らずに育てられてきたのでしょう。そして不遇の頃に誓った願いを忘れることなく、いま与えられた仕事に全身全霊をもって応え、あらゆる人々が健康であるために、この短い生涯を捧げたいと思っています。

我利でやりすぎることなく、怠惰でやらなさすぎることなく、中庸で精進し続けてこられたのは、脈診技術とか根性努力とかそういう小賢しいものよりもむしろ、自分自身との究極の対峙である「誠」のおかげであったかもしれません。

約束と「誠」… 夢を現実化するトレーニング
当院は予約制です。 これは、患者さんをお待たせすることなく臨床という業務を円滑に進めるためです。 しかし、それだけではありません。 約束。 それを守るトレーニングでもあります。

立秋とは暑さの極みです。陽 (暑) 極まれば、陰 (涼) となる。これ以上暑くならないということは、最も暑いということでもあります。暑さは気を傷 (やぶ) ります。気 (活動力) は陰に支えられています。陰とは、休息・安心・安静・やすらぎ・うるおい・クールダウンです。夜 (陰) の休息 (睡眠) は最も大切です。
>> 壮火食気

休息 (陰) の上に、活動力 (気) は乗っかります。

〇〇さんも僕も、気陰を弱らせやすい体質です。それをよく自覚しつつ、おたがい体には気をつけてまいりましょう。

2023.8.12 飛鳥古京のひざもとにて
眞鍼堂

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました