人工透析10年無尿、にもかかわらずカリウム・尿素・リン自力排泄という奇跡

「腎臓が機能しなくなっても、大腸がその代わりをする」

この言葉は、たしか間中喜雄先生だっただろうか。人工透析をふくむ慢性腎臓病 (CKD) で、尿から老廃物を出せなくとも、大便から老廃物を出せるというのである。

今回、その言葉が虚偽ではないことを実証できる症例を得たので報告する。

53歳。2024年3月12日初診の女性である。

当該患者は、以下の特徴を持つ透析患者である。

  • 10年間、尿が全く出ていない。つまり腎臓は老廃物の排出を全く行っていない。
  • 透析時間は3時間 (週3回) 。ふつうは4時間 (週3回) 行う。
  • カリウムおよびリンを下げる薬を用いていない。 (医師はこれを了承)
    ※尿素 (尿素窒素) を下げる薬はない。人工透析によるしかないが、これも4分の3の時間しか行っていない。

このような特異な環境にあり、そのために却って本症例の特別な意義を見出すことになる。
※くれぐれも良い子の皆さんは真似をしないように。

すなわち上グラフのように、当院治療開始後の経過において、カリウムが正常値となったのである。
たとえば、蛇口から水が出ないのに食器がきれいに洗えていたとしたら不思議だろう。じつは、尿が出ていないのにカリウムが正常値を示しているというのは、それと同じくらい不思議なことなのである。
誰がどうやってきれいにしたんだろう。

【注意】グラフ左側 (1/16あたり) で数値が激減しているが、これは数値が改善したのではない。脳幹出血で生死をさまよう時期があり、食事が取れていないのでカリウムも摂取していないために数値が下がっているのである。以下の尿素・リンのグラフにおいても同じことが起こっている。

さらに上グラフのように、尿素が透析患者目標値を下回る、良好な値となった。
※尿素は、正しくは尿素窒素である。煩雑を避けるために以下においても尿素と表記する。

さらに上グラフのように、リンも目標値に迫るという結果も見られたのである。

この3つ (カリウム・尿素・リン) の数値は、透析患者の三大指標である。そのことごとくが同じようなグラフの形をしていることがよく分かる。だいたい6〜7月ごろ (治療開始から3ヶ月後) から、急落に転じていることが分かるだろう。

鍼と養生が効いていると考えられる。

当該患者の体は今、自力で老廃物 (カリウム・尿素・リン) を排出しているのである。ほんらいは腎臓でしか排出できない老廃物である。腎臓の代わりをしている臓器がどこかにある。体は、本当に良くなれば、みんなで協力し合って腎臓の働きを肩代わりするのだ。少なくともカリウム排泄に関しては、正常値レベルの自力排泄を行っているという事実が確認できたのである。

じつは、微量ではあるがこれら老廃物は、毛細血管を通じて腸管に染み出し、大便とともに排泄することができる。

例えばカリウムは10%大便 (腸管) から排出可能である (腸管排泄) 。しかしこれは微細すぎて、実質的には何の役にも立っていないレベルである。健常者は残りの90%を尿から排泄するが、当該患者は無尿であるためそれができない。注目は、この微細な機構を使って、正常値となるところまで排泄を始めたという点である。

しかも、である。

カリウムは野菜や果物に多く含まれる。当該患者は制限を行わず、煮こぼしもしていない。
リンは魚介類や豆腐 (大豆) に多く含まれる。当該患者は制限を行っていない。
尿素はタンパク質から生成される。当該患者は制限を行っていない。
※気を付けてもらっているのは白米と副食物の割合である。後述する。

しかも、鍼灸治療開始後、いままでは義務的に食べていた食事が美味しくなり、食べることが楽しみになり、食事量が増えた。2024/11/26現在で、初診時の倍量である。これは、カリウム・リン・タンパク質の摂取量が増えたことを意味する。摂取量が増えて、だが排泄できないのであるから、これら数値は上昇して当然である。実際、治療開始直後は数値の上昇が見られた。ところが6月前後を境として、食事量が増えつつあるにも関わらず、逆に減少して正常値になるものまで現れたのである。

さらに、血圧の下降についても特記しなくてはならない。
初診時、オルメサルタン (血圧の薬) 10㎎/日で、190/100mmHgだったものが、
2024/11/26現在、初診時のオルメサルタンの10分の1の量で、120/80mmHgが維持できている。
立て続けに起こっていた脳出血も、初診以降の8ヶ月間、影を潜めている。

通常ありえない良い結果となった。
その軌跡を克明に記載し、参考に供したい。

初診… 3/12 (火)

初見の挨拶を交わしつつ、一瞥する。
透析患者特有の真っ黒い顔と体、羸痩 (るいそう) 著しい。伏し目で元気がない。印象は、全てが真っ黒…。目がどこにあるのかわからない。光っているはずの目の光がないのである。

神シンは? ない。
これは治せない。
ああ、断るしかない。

とめられなかったガン… 逆証 (死の証) 鑑別診断の実際
ガンが進行する人は休むのが苦手である。ぼくの父 (享年42歳) 、母 (享年69歳) もそうだった。彼らの死、そして当該患者の死を無駄にしないため、あらゆるガン患者を救い啓蒙するため、本ページをまとめる決意をした。

問診

しかし、できるだけのことをやってみよう。問診を始める。

2011年に無尿となり、だが人工透析を拒否、まもなく尿毒症となって意識不明となり、意識不明のまま病院に搬送され人工透析をかけられ、1週間後に意識が戻る。それ以来、人工透析を受け続けており、尿もこの13年間ずっと出たことがない。尿意もなく、その感覚すら忘れてしまった。

透析を拒否したのは、過去に原因がある。19歳のときにネフローゼ症候群と診断を受け、1ヶ月間ステロイドを服用したところ、発狂状態となった。それ以来病院に行かなくなったとのことである。東洋医学的に見ると、ネフローゼも発狂も邪熱である。腎臓にあった邪熱を退かそうとして、しかし取り去ることはできないので心に移行、発狂状態になったものと推察できる。
この事がきっかけで、極端な薬ぎらいとなった。そのことが今、体の持つ神秘的な能力の実証につながることとなる。

体調は… 危険な状態。

3ヶ月前 (2023/12/23) に脳幹出血でたおれ、1ヶ月間入院した。検査で脳のあちこちに出血跡が見つかった。血圧が高く、血管がもろくなっているので、各所で出血が始まっているのである。脳幹とは、呼吸など生命の営みを支配する中枢のなかの中枢であり、ここで出血が起こると数時間で死亡したり、脳死になったりすることが多い。

一命をとりとめたのである。

担当看護師の「私が学習してきた脳幹出血でこの状態は考えられない」という言葉通り、後遺症すら残していないのは奇跡と言える。ただしそれ以来、形容のしがたい体の頼りなさがある。本人はそれを「あやしい感じ」と表現しておられる。

そもそも、人工透析に至る病態を慢性腎臓病という。慢性腎臓病の主因は動脈硬化である。腎臓は毛細血管の集合体であるが、血管がひび割れボロボロになって、その毛細血管が破壊されて、腎臓の持つ「ろ過機能」が失われていったのである。その血管のもろさは、毛細血管にとどまらず、脳にある主要な血管まで破壊し始めた。

命の危機がせまっている。だから神シンがないのだ。

神シンをもどす

1%の可能性にかける。神シンを動かせるか!

その強い気持ちとは裏腹に、おもむろに話し始めた。

「体ってね、不思議なんですよ。この腕、あるでしょ? これって、3ヶ月もあったら消えて無くなるらしいんです。で、新しいのに入れ替わる。爪が伸びて何ヶ月後かに新しいのに入れ替わるのと同じで、爪は硬いので6ヶ月ほど、骨はもっと硬いので2年ほどかかるみたいですけど、人体の軟部組織は3ヶ月で入れ替わるんです。すごいですね。では、新しく作られた組織って、材料は何でできているんでしょう? 食べ物です。食べ物を材料にこの体は作られている。この体のほとんどはタンパク質でできていますが、10万種類もあるらしいんです。10万種類のタンパク質でこの体はできている。皮膚・血管・神経・脳・心臓・腎臓…みなそれぞれ固有の形や働きがあるのは、10万種類の固有のタンパク質でできているからなんです。1種類じゃないんですね。もし皮膚のタンパク質ばっかりでできていたら、脳ミソまで皮膚になっちゃう。これだけ複雑な体だから、10万種類くらいは必要だというのも納得です。で、その中にね、魚のタンパク質は1個も含まれていないんです。魚を食べているのにね、もし体のどこかに魚のタンパク質が紛れ込んだら、理論的にはやっばり皮膚の一部にウロコができてくる、肺の一部がエラに変わってくるんです。でも実際はそういう事はありえませんね。それは、肝臓という臓器が、魚のタンパク質を人間のタンパク質に変えてくれているからなんです。すごいですね。魚のタンパク質はアミノ酸に分解されて、これを肝臓はさらに原子レベルにまで分解するんです。そして再結合させて、皮膚できたよ、筋肉できたよ、脳ミソできたよ、そして腎臓できたよ、血管できたよ…とやるわけです。いま、〇〇さんの血管は非常に脆い状態にある。だから脳幹出血が起こったんですね。でもそれは永遠に脆いわけではなくって、肝臓がシッカリすることがあったならば、3ヶ月後にはシッカリした血管に置き換えられるわけです。たしかに肝臓はいま脆い血管を作ってしまっている。でもそれには何か原因があるんです。肝臓を困らせるような何か、その原因を改善すれば、肝臓にはね、4分の3切り取られても元通りに回復するという奇跡的な再生能力があるんです。その再生能力を活かしさせすれば、血管だって腎臓だって肝臓がつくっているんですから、奇跡はいくらでも起こるんですよ。それから、肝臓の働きは500以上あると言われているんですけど、 “言われている” ということは、全容は明らかになっていないということです。肝臓はこの体の生みの親なんですから、腎臓が使い物にならなくなっても、腎臓の代わりをする能力を生み出す可能性もあるんです。その可能性を、僕は真剣に信じています。そう信じて懸命の努力をする。だから当院では、チョクチョク奇跡が起こるんですね。」

“肝臓” を考える…東洋医学とのコラボ
肝臓には500以上の働きがあると言われ、様々な病気と関わる “主役級の臓器” です。と同時に寡黙で “沈黙の臓器” とも呼ばれます。これを往年の名優、高倉健に例えつつ、東洋医学ともコラボしながら、肝臓とは何か、病気の原因とは何かを考えます。

話が進むなかで、ずっとうつむいていた当該患者が、だんだん顔を上げだした。真っ黒だった目が、輝き出した。神シンが… 戻った!

「〇〇さん、よかった。助かりますよ。実はね、僕は治療を断ろうと思ったんです。でも、一か八かやるだけやってからにしようと、お話させていただいたんですよ。でももう大丈夫、これから治療を始めましょう。いっしょにがんばりましょう!」

ありがとうございます…
泣き出した。うれしそうに。

こんな場面から本症例の治療は始まったのである。

切診

【表証】
表証 (表寒証) がある。天突の特殊反応が決め手となる。
背候診で、左肺兪に虚の反応があり、これも表証の決め手となる。
左肺兪は拡大しており、上は風門から下は脾兪にまで達している。これは重症度が高いことを示す。

【邪熱】
短期邪熱スコアが右歩廊のレベルに達している。危険域である。
同時に激しい熱証があることを示す。
右肝兪に邪熱。

【出血】
隠白に実の反応がある。脾不統血証である。
脳幹出血を始め、複数の脳出血が続いていることは考慮すべきである。

【虚証】
脈診は、大脈・緊脈が甚だしく、弾発的な激しい打ち方をしている。北辰会でいうところの第一脈の弦急脈、生命の危険を意識すべき脈である。だだしそんな激しい脈も、三脈同時診法でみると、細脈にして無根となる。つまり虚脈であり虚証である。

【危証】
これほど激しい脈は診たことがないレベルである。羸痩(156cm・33kg) に比してこの脈の激しさは危証である。脳幹出血のリスクを示すものか。

帝曰.決死生奈何.岐伯曰.…形痩脉大.胸中多氣者死.《素問・三部九候論20》

この大きく激しい脈も、三脈同時診法では虚脈である。この要素も危証と言える。

形氣有餘.脉氣不足.死.脉氣有餘.形氣不足.生.《素問・方盛衰論80》

これら証候からみると、逆証を疑わざるを得ない。しかし、神シンが復活したのは前述のとおりである。生死を分けるのは神シンである…当該患者がこの後見せる奇跡的な回復は、この仮説を定説とするための材料となりうる。

弁証

八綱弁証においては、虚実錯雑 (虚>実) 、正虚表実。表寒裏熱。
病邪弁証においては、邪熱。
五臓弁証においては、脾虚 (脾不統血) 。肝火。肝脾同病。

かなり複雑であるが、まずは先表後裏の原則に従い、表証をねらう。ただし 虚>実 なので、正虚を補いつつ結果として表邪が取れるようにすべきである。

水腫をはじめとした慢性腎臓病は、虚寒証で取るのが一般的だと思うが、ぼくは虚寒証のなかに実熱を挟んでいると考えている。これは、以下リンクのような経験を踏まえて言うのである。

慢性腎臓病…87歳で腎機能回復、クレアチニンがケタ違いの減少を見た症例
失われた腎臓機能は元に戻らないので、 (慢性腎臓病の) 治療の目的は「進行を食い止め、遅らせる」「症状の改善」となります。…この悲観的な常識をくつがえすかもしれない症例を検討する。
腎臓の難病 (ネフローゼ症候群;指定難病222) … やはり、奇跡は起こる
ネフローゼ症候群の中医学的な症例検討である。ステロイドが効かない巣状分節性糸球体硬化症において、数値の激減を見た症例を考察する。

病因病理

11歳のとき虫垂炎、小さい割によく食べる、食べ過ぎの自覚に乏しい。
つまり疏泄太過である。おそらく (自覚の有無は別にして) 五志七情の過不足 (ストレスなど) があり、そそれとのバランスをとるために大量摂取となった。

ストレスは肝火となり、大量摂取は脾虚を生む。この時点で虚実錯雑の素因がある。
脾虚が進めば進むほど、肝火は激しくなり、
肝火が激しくなればなるほど、脾虚が進む。
このような負の循環が起こる、それが虚実錯雑である。

肝火は深く陰分を犯し、西洋医学的な腎臓に達した。ネフローゼ症候群 (19歳) である。
その邪熱はやがて心を襲って意識喪失となり、同時に腎臓組織を破壊し、無尿となって人工透析となった。
またその邪熱は血脈を襲い、脳幹出血の主因となったと考えられる。
また脾虚による統血作用の弱りもまた、脳幹出血の一因となったと考えられる。

施治

百会に金製古代鍼をかざす。
右少沢に銀製古代鍼をかざす。

天突・左肺兪・右肝兪・左右隠白・右歩廊の反応が消失するのを確認して、治療を終える。

養生指導

どんな養生指導をしたのか。
養生指導はすべて脈診で行った。 >> 脈診で “体の声” を聞く

これだけひどい状態の腎臓病である。指導は慎重のうえにも慎重を期する必要がある。しかも、慢性腎臓病ほど正しい養生が求められる病気はない。この病気は有効な改善手段がないからである。

脈診で体に聞く。この体の生みの親は肝臓である。その肝臓に是非を問うのが一番確かな方法である。僕 (人間) の悪い頭で考えたことよりも、はるかに信頼できるのである。なにせ20年来の乾癬でプレドニン (最も強いステロイド錠剤) を10㎎ (長期投与の限界量) を服用していたものを、5㎎まで減らしつつも治すことができたのは、この脈診で体に直接問うた結果に他ならない。乾癬は、皮膚病では珍しい「致死率」がある病気である。普通はこわくてそんなことできない。それほど体の言ってることは正鵠を得ており、脈診でその情報を得ることは重要であると考える。本症例で起こった奇跡も、この脈診を抜きにして考えることはできない。

  • 食べること
    ▶朝食 (8:00) は食べる時と食べない時がある。
     → 米1粒でもよいから朝食を必ず食べるよう指導。
      >> 胆汁とデトックス… 朝食は一口でも
    ▶白米を主食とする。 (動物性や甘い食品を摂取しない条件で)
    もともと動物性食品やおかしは口にしていない。もしそれらを口にするなら分つき米は不可、白米にすべきであるとの脈診結果である。
    玄米は不可。
     >> 玄米は昔の話
    ▶ご飯とおかずとの割合は、米7:おかず3 を指導。(6ヶ月後に6:4に指導変更。)
    間食はもともと摂っておらず、その習慣を継続するよう指導。
     >> 夜間の呼び出し出勤 = ほんの少しの間食
    ▶牛由来の食品・餅製品・揚げ物・甘いものを禁ずる。油を多めに含む食品 (ブリ・サバ・サンマ・鶏もも肉・豚肉) を禁ずる。卵焼き・ささみ・ちりめんじゃこなどはOK。
    ※6ヶ月後にブリ・サバ・サンマ・鶏もも肉・豚肉 などは食べてもよいと指導したが、そもそも肉や魚はほしいと思わないとのこと、それらは別に食べる必要はないので今まで通りの献立にしたらよいと指導した。食欲の暴走がないのは御本人の気持ちが正しく保てているということが大きく、それには鍼も一役買っている可能性がある。
      >> 食養生表
    ▶できるだけ体温以上の温かいものを飲食するよう指導。電子レンジは使わない主義だったが、電子レンジを大いに活用するよう指導、ただし加熱中はレンジから50cm離れるよう指導。
     >> 電子レンジ、使ってくださいね
  • ナトリウム (塩) とカリウム (野菜)
    ▶みそ汁は美味しいと思う分、摂取してよいと指導。
    ▶ご飯とおかずの割合を守ったうえで、野菜中心の食事はこのまま続けてよいと指導。
    ▶もちろん腎機能がほぼ0の状態であり、ナトリウム (塩分) やカリウム (野菜) が自力で排泄できないことは承知している。そのうえで、脈診 (体の言う事) を信じたのである。今まで見てきた腎臓病で、脈診においてこれら2つのミネラルを制限すべきという判定が出たことがない。当該患者もその例に漏れることはなかった。
    ⚠️これらのことは、治療および上記「食べること」の養生があってはじめて言える可能性があるので、読者におかれては「断片的なマネ」をしないように注意しておく。
  • タンパク質とリン
    ▶ご飯とおかずの割合と、を守ったうえでタンパク質を摂取してもよいと指導。
    ▶ご飯とおかずの割合を守ったうえで魚 (リンを多く含む) などを摂取してもよいと指導。
    ※当該患者は肉魚や加工食品 (リンを多く含む) を好まない。油揚げ・豆腐は少量食べる。スーパーの惣菜試食コーナーみたいに少量ずつ作って並べるのだという。
  • 寝ること
    就寝は20時〜21時、起床は4〜5時。これは初診以前からそうしている。昔から朝型。この調子で続けるよう指導。
     >> 早く寝なさい!
  • 考えること
    もともと、食べたいと思わなかったり、食べ始めたら止められなかったり、波が大きい。その波が小さくなれば良いという知識を持つよう指導。https://sinsindoo.com/archives/anger.html#知識
  • サプリ
    以下のサプリを使用していたが、中止するよう指導。
    ▶アミノ酸
    ▶有機亜麻仁油・食用ボラージシード油・ビタミンE含有植物油・エゴマ油・ゼラチン・グリセリン・ミツロウ・ビタミンB1・ニコチン酸アミド・パントテン酸カルシウム・ビタミンB6・ビタミンB2・葉酸・ビオチン・ビタミンB12
    >> 薬物性肝障害 (薬剤性肝障害)

いろいろ言いたい人はいるだろうが、腎臓抜きでカリウムを正常値にするくらいの実例を添えたうえでお願いしたい。机上の空論では話にならない。

現在使用している薬

【服用】

  • オルメサルタン10㎎/日… 血圧を下げる薬。初診時 (2024/3/12) は血圧190/100。
    ※2024/11/26現在で、2.5㎎ (火・木・土のみ) を服用している。1日換算なら 0.8㎎/日 であり、約10分の1の減量で血圧120/80を維持している。
  • 沈降炭酸カルシウム500㎎/日… リンを下げる薬。※2024年5月くらいから服用を中止し、現在 (2024/11/26) に至る。医師も了承している。

カリウムを下げる薬は飲んでいない。飲むと気分が悪くなるからである。医師も了承している。初診時から2024/11/26現在までその状態である。

【透析回路からの投薬】

  • ダルベポエチン… 貧血の薬。腎臓で分泌されるエリスロポエチン (ホルモン) の不足を補う薬剤である。外からエリスロポエチン同様の作用を与えることで赤血球の生成を促進する。エリスロポエチンとは、腎臓から分泌される造血ホルモンである。透析患者はこのホルモンが作れないために貧血になる。
  • フェジン… 鉄。※10月から入れていない。フェリチンが十分になった (150) から。
  • オキサロール 副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑え、血中の副甲状腺ホルモン濃度を下げる薬。※リンが排泄されない状況下においては、血中のリンが増え、そのリンと血中カルシウムが結合してリン酸カルシウムを作る。結果として血中カルシウムが減少する。不足した血中カルシウムを補うために骨に貯蔵しているカルシウムを血中に移動させるのが副甲状腺ホルモンの働きである。その結果として骨は弱くなり、また副甲状腺が常に興奮状態となる。
    オキサロールは活性型ビタミンD製剤であるため、リンやカルシウムを吸収しやすくする。血中カルシウムが増えると、副甲状腺ホルモン (パラソルモン) を放出する必要がなくなるので副甲状腺機能は抑えられる。よって、リン吸着薬を使用しない状況下でのオキサロールの使用は、むしろリンを上げるリスクがある。

2診目以降の経過

その後の経過をすべてカルテから転載した。何かの参考になれば幸いである。

2診… 3/16 (土)  

遠方 (京都) から車で送り迎えでの通院のため、本日は1日に2回の治療 (午前10時からと11時30分から) を行うこととする。以降、そのほとんどが1日2回治療である。

初診時から体調に変化なし。

天突・左肺兪・左右隠白・右歩廊の反応は消失したままである。右肝兪のみ反応あり。
この所見は以後同じなので今後の記載を省略する。

【1回目】百会に2番鍼を1分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】同上。

4診… 3/19 (火)   

食欲が出てきた。 >> 脾虚が大きく改善してきたことを意味する。

きのうは透析の日だったが、7時半に朝食べ、透析は9時から12時まで、12時半にもう空腹を感じた。13時半に昼食をとると16時半に空腹感がでた。脳幹出血を起こしてから空腹感がなくなっていたし、それでなくても透析を受けるとしんどくて食欲が出ないので、驚いたしうれしかった。

【治療】百会に2番鍼を1分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。

5診… 3/21 (木)

脈がドンドン軟らかく穏やかになってきている。

ここ2日間、大便が出ず、お腹が張る。
小松菜などのスジのある野菜を食べるよう指導 (脈診) する。

【治療】百会に2番鍼を1分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。

6診… 3/26 (火)  

大便は、帰りの車の道中でスッと出た。

脳幹出血以降感じている「あやしい感じ」「あぶない感じ」がシッカリしてきた。「たしかな感じ」「力が出てきた感じ」になってきた。

当院受診の最高血圧は、透析直前190 → 透析直後150
当院受診の最高血圧は、透析直前160 → 透析直後160
・血圧が下がってきている。
・ドライウェイト (適正体重) が保てている。そういう食べ方ができているということである。米主食、野菜中心の食事で、自然と食べすぎない食べ方ができている。もし食べすぎると血管の内外がむくんで血圧が上がるため、透析のついでに除水する必要がある。当院受診前は、血圧150まで下がるように除水していたが、当院受診後は除水しなくてもドライウェイトが保てている (体重が増えずに維持できている) 。体に負担にならない食事量の調整ができていることが伺える。

【1回目】百会に3番鍼を1分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に3番鍼を4分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。

8診… 3/30 (土)  

起床時、動き出したときに元気になってきたと実感する。
今朝はおかゆ、甘さが分かってきた。

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。

10診… 4/2 (火)  

食欲あり。食べる量が増えた。
サプリを撮らなければと思わなくなった。

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右少沢に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右豊隆に銀製古代鍼をかざす。

12診… 4/6 (土)  

右膝の痛みが出てきた。もともと痛かったが、脳幹出血以降、痛みがなかった。

【治療】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右豊隆に銀製古代鍼をかざす。

13診… 4/11 (土)  

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右豊隆に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右豊隆に銀製古代鍼をかざす。

ウォーキングを5分間行うよう指導する。

15診… 4/18 (木)  

大便が親指大で硬い。脳幹出血以降、スッキリしたことがない。

担当医から、透析の時間を4時間に増やすよう勧められている。
現在は3時間にしてもらっている。4時間にするとしんどいから。

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

17診… 4/25 (木)  

大便が硬くて少ししか出ない。お腹が張ってスッキリしない。前回よりも顕著。

透析後でも、食欲旺盛。

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

ウォーキングを10分間行うよう指導する。

19診… 5/2 (木)  

硬い大便は、前回治療後からバナナウンチに変わり、量も増えた。

このごろ食欲があるので、透析から透析までの間に体重が増えていた (除水で減らしていた) が、大便の量が増えてから透析間の体重増加が少なくなった。 >> これは、ドライウェイトが保てていることを意味する。体重が増えすぎるとそれだけ除水しなければならないので、体にかかる負担が大きくなる。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右豊隆に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

21診… 5/7 (火)  

3 (金) 38.6℃の発熱 痰のからんだ咳
4 (土) 37.6℃に下がる 痰のからんだ咳
5 (日) 同じ
6 (月) 37.2℃
今日 37.5℃

発熱が続いているが、体調は悪くない。表情も明るく、さして心配していないようである。風邪薬は飲んでいない。食事も美味しくいただけている。

【1回目】百会に3番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。

23診… 5/14 (火)  

カゼは治った。
食欲が増している。ご飯がとても美味しい。
>> https://sinsindoo.com/archives/kaposi.html#感染症はピンチでチャンス
>> 今思えば、このころから尿素窒素の自力排泄が増加している。

大便の量が少ない。ただしお腹は張らない。 >> 便通はダムの放流のようなものである。水が流れ込んでこないのに放流しすぎると水位が下がって生活用水が足りなくなる。正気が回復しようとする時は、大便は毎日出ず量も少なくなるのが特徴である (腹が張らないという条件付きで) 。よって、このままでいいので気にしないように指導した。腸に溜まった大便は、そこからエネルギーをチャージするためのバッテリーのようなものである。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

25診… 5/23 (木)  

ウォーキングが楽しい。考え事をしていると気づきがある。
便通は波がある。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

27診… 5/28 (火)  

食欲あり。
ベチャッとした感じの便で、スッキリしない。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

29診… 6/6 (木)  

鍼をしてもらった後は便通がよかった。
3 (月) から便通量少ない。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。抜鍼時、穴処から出血。 >> 百会からの出血は、井穴刺絡と同様の意味があると考えている。おもに邪熱を漏らすが、痰湿も除去できていると考えている。僕の臨床では、百会出血の後は必ず平脈となる。よって2穴目はない。

31診… 6/13 (木)  

鍼をしてもらった後は便通がよい。11 (火) まで良かった。

夜中、脇腹の痛みがある。左脇腹が痛かったが、昨夜は右脇腹が痛かった。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

33診… 6/20 (木)  

鍼をしてもらった後は便通がよい。

かがむと腰が痛い。こむら返りがある。体の水分量が足りないのかな…とのこと。 >> ドライウェイト (適正体重) が上がっているのかも知れない。体重は、透析 (除水) で病院によって管理されている。31診での脇の痛みも、それが関連するかもしれない。穴処に悪い反応がないからである。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

35診… 6/25 (火)  

鍼をしてもらうとその週は便通がよい。
昨夜11時、右母趾がつった。

1ヶ月前から尿意を感じることがある。トイレで大便をするとき、5回に一回くらい感じる。感じるというより、思い出すというのが正しいのだが。
その尿意がお風呂に入っている時にも感じた。尿意は2011年に無尿となって以来感じたことがなく、すでに尿意とはどういうものであったかさえ思い出せなくなっていた。
泣いて喜ぶ。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。抜鍼時、穴処から出血。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

37診… 7/2 (火)  

トイレ (小便) に行きたいと思ったときがあった。
朝、尿意でブルっと来たことがあった。
>> いま思えば、このころからカリウム自力排泄・リン自力排泄が増加している。出ていなくても、尿意は重要かもしれない。

買い物で外出して歩きすぎたのか、右股関節が歩くと痛い。寝返りができない。

透析での除水 (体から水分を取り除くこと) で、ドライウェイト (医師が割り出す適正体重) を33.0kgに保っているが、食欲旺盛で元気が回復しているので、もう少し増やしたほうが良いのではないかと直感した。そこで、脈診で体に聞いてみると、体が判定したドライウェイトは33.2〜33.3kgだった。ドライウェイトは0.1kg増やすだけでもリスクが高い。それを承知で、ドライウェイトを少し増やしてはどうかと医師に言ってみるよう指導する。

  • ドライウェイトが足りないと、血中の水分量が少なすぎるので血圧が下がり、筋痙攣をおこしやすくなる。中医学的には血虚や津液不足による痛みが出やすくなることが考えられる。
  • ドライウェイトが多すぎると、血中の水分量が多すぎるので血圧が上がり、脳出血や血栓などのリスクが増える。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

39診… 7/9 (火)  

娘とイオンにお出かけした。3〜4時間の外出だったが疲れなかった。帰ってから家事もできた。脳幹出血で倒れる前よりも元気がある。右股関節はずっと痛いわけではない。寝返りもゆっくりならできる。

夢で、トイレを探した。そして、トイレ (小便) をした。夢の中でのことであるが、おどろいた。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

41診… 7/11 (木)  

股関節は楽になった。寝返りもできる。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

43診… 7/18 (木)  

排便量が増えた。治療直前でも通じがよい。今までは治療後は便通がよくなるが、治療前になると悪くなっていた。

貧血が改善しているので、ダルベポエチン (透析回路から投薬) を120→60に減らした。

血圧が下がってきているので、オルメサルタン (経口投与) を10㎎→8㎎に減らした。
当院初診時は血圧190/100mmHgだったのが徐々に低くなってきており、昨日は130/80mmHgだった。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

ウォーキングを15分間行うよう指導する。

45診… 7/25 (木)

ドライウェイト (医師が割り出す適正体重) が33.0 → 33.3kgに上がった。 >> 37診 7/2 (火) で、当院の脈診で算出したドライウェイトは33.2〜33.3kgだった。はからずも一致を見た。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

47診… 7/30 (火)

ドライウェイトを上げた後も、120/80mmHgくらいで血圧は安定している。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

49診… 8/6 (火)

血圧が120/80mmHgくらいで安定している。初診時は180/100Hgだった。
透析中回診の医師も、「熱中症だけ気をつけてください」としか言わない。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

51診… 8/10 (土)

血圧が安定している。オルメサルタン (経口投与) が10㎎→8㎎になっていたが、さらに8㎎→5㎎になった。

貧血の数値が良くなってきている。ダルベポエチン (透析回路で投薬) が120→60になっていたが、さらに60→30になった。

心胸比 (女性では55%以下が適正) が小さくなっていると言われた。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

ウォーキングを20分間行うよう指導する。

53診… 8/20 (火)

担当医から「血圧の薬 (オルメサルタン) 、もう全部やめてみたら? 」と言われ、全部やめた。
便通OK。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

55診… 8/27 (火)

脈診でオルメサルタン50㎎がよいとのこと、指導する。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

57診… 9/3 (火)

大便が硬くて量が少ない。
ご飯が美味しすぎる。

寒府に実…パジャマを長袖にするよう指導 →寒府の反応取れる。
三里に実…お米を一口減らすよう指導 →三里の反応取れる。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。

血圧の薬 (オルメサルタン) は3分の1〜4分の1にしている。
昨日の測定で110台/80台。

59診… 9/12 (木)

便通回復。

副甲状腺ホルモン (パラソルモン) の数値が高い。
リンが高い。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

61診… 9/19 (木)

便通よし。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。

63診… 9/26 (木)

空腹感が落ち着いてきている。
9/20から血圧の薬 (オルメサルタン) をやめている。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

65診… 10/3 (木)

軟便や下痢の日があった。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

ウォーキングを25分間行うよう指導する。

67診… 10/10 (木)

カリウムが正常値だった。
カリウムを下げる薬は、飲むと気持ち悪くなるのでずっと飲んでいない。医師も了承している。
おかずは、野菜中心のお惣菜しか食べない。油揚げは食べるが、肉はほしくないので食べない。試食コーナーみたいに少しずつ食べる。

透析回路からのダルベポエチン (血を増やす) を30から60㎎に増量。

検査結果はいつもワクワクする。

家事以外にも、なにかできそうな元気さを感じる。

69診… 10/17 (木)

右下腿部に湿疹。ずっと前からあるが少し悪化。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

71診… 10/22 (火)

食事が美味しい。
今までは少し気温が下がると浮腫で体重が増えていたが、今はない。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

73診… 10/31 (木)

気温が下がっているが、体調に変化なし。
右下腿部がかゆい。

血圧の薬 (オルメサルタン) は現在4分の1錠。血圧安定に医師も驚いている。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

75診… 11/5 (木)

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に銀製古代鍼をかざす。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

77診… 11/14 (木)

ダルベポエチン60から90に増量。

長期邪気スコアが3から2に減少。

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

79診… 11/21 (木)

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。

81診… 11/26 (火)

夜、横になって目を閉じている時間が好き。

ウォーキングしているときは先生 (僕) とつながっている感じがある、とのこと。

医師「副甲状腺以外はいうことありません。」

【1回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。
【2回目】百会に5番鍼を5分間置鍼する。右上巨虚に5番鍼即刺即抜にて瀉法。

考察

カリウム

カリウム・尿素窒素・リンのなかで、一番危険なのはカリウムである。高値になると心停止となって死んでしまう可能性がある。そういうカリウムを下げる薬はあるのだが、当該患者は当院受診前から医師の承諾のもとその薬を飲んでいないという。

グラフを見ると分かるように、心臓停止の危険がある6.5を越えた時がある。知らぬが仏とはこのことだろう。僕はその当時、それが危険値とも知らずに、というか渡された数値を見る暇もなく、ただただ中医学的に見て危険はないか、生命力を脅かすものはないかを真剣に診ていたのである。もし、数値的に心臓がいつ止まってもおかしくないということを知っていたとしたら、どんな感覚で診ていたのだろうか。

ただし、その後の数値の下がり方を見れば分かるように、一時的に数値が上がったが、それは正常値になるべき素地があってのことだったということが、結果論として分かる。

人生もそんなもんだ。その時は不幸のドン底にあったとしても、結果として幸福になったのならば、そのドン底のなかで学び取ったものが、今の幸福の素地になっているのである。だれしも安全な方法で幸福を得たいだろうが、そう上手くは行かない。

体とは、数字のカウントでできているのではない。決して物質的にのみ見るべものではないのだ。生きている。命がある。それは、人生だって同じだ。人生とは、生きて命を営むものに他ならないのである。

理系では切れない命がある。
文系でしか分からない命がある。

それにしても、透析を行う技術者の方も、気を使うことだろう。2024/9/16は透析前4.7で、透析後は3.1 (正常値3.5〜4.6) だった。透析後に血清カリウムが3.0 mEq/Lを下回る場合、カリウムが低すぎて心不整脈や筋力低下など命に関わるリスクが生じるのである。その前後の透析後のデータは得られていないが、低カリウム血症にならないように、カリウムの除去には注意されたことだろう。

尿素窒素

体の組織生成に欠かせないタンパク質であるが、これは同時に猛毒であるアンモニアの生成と背中合わせである。タンパク質を摂れば摂るほどアンモニアが作られ、肝臓はそれを尿素に弱毒化する。アンモニアは血中に0.005%混入しただけでアンモニア脳症を引き起こし死に至る。

尿素は血中4%に達しても害はない。ただしそれ以上になると当該患者のように意識を失い、そのまま放置すると死に至る。5月20日は、その危険に肉薄する93.6㎎/dLに達したが、その後、減少に転じ、9月からは透析患者の目標値すら下回る良好な数値となった。

通常4時間の透析時間を、3時間しか行わない中での良好な数値である。

リン

リン値が上がると血中カルシウムと結合してリン酸カルシウムを作る。この結合が過度に進むと血中カルシウムが足りなくなり、骨格筋や心筋の痙攣すなわち不整脈から死に至る場合もあるので、骨に保存していたカルシウムを副甲状腺ホルモンが解凍して血中カルシウムを多くする (骨吸収) 。それによって生命の危機は脱することができるのだが、かわりに骨が弱くなる。よってリンが多くなるとそれを下げようとする副甲状腺機能が亢進して副甲状腺炎を引き起こす。またリンが多くなるとリン酸カルシウムが増え、リン酸カルシウムが血管に付着して塞栓を起こしたり血管を狭めたりして、様々な血管障害 (脳梗塞や心筋梗塞など) を引き起こす。

沈降炭酸カルシウムは、腸内でリンと結びつくことによってリンの吸収を阻害する薬である。リン吸着薬とも呼ばれる。この薬を当該患者は医師の承諾のもと2024年5月に中止している。上記の通り、様々な血管障害を引き起こす可能性があるので、危険な行為であると言える。

腸管代償排泄について腎臓からの排泄腸管からの排泄
尿素窒素80-90%10-20%
リン85-90%10-15%
カリウム90%10%

ナトリウムと適正体重 (ドライウェイト)

血管中の水分量が多いと血圧が上がる。
当該患者が1年前に脳幹出血で生死をさまよったのも、これが原因の一つである。

体内の水分量を一定かつ適正に保つ必要があり、その体重のことをドライウェイトという。つまり、不要な水分を透析で抜き終えた体重は、ドライウェイトに等しい。

塩分 (ナトリウム) の摂取量が多すぎると、当該患者の場合は尿からナトリウムを捨てられないのであるから、血中ナトリウムが多くなり過ぎる結果となる。血中ナトリウムが多すぎると、体液が濃すぎるのでそれを薄めるために喉が渇き、水分が血中に貯留する。すると体重がドライウェイトを超えて増加する。また血液中の水分が多くなるために血圧が上昇する。

ドライウェイトを維持できているかどうか、これは以下の項目により確認できる。

  1. 血圧測定
    • 血圧が透析前後で安定しているか。
    • 高血圧がある場合、ナトリウム摂取過多の可能性がある。
      >> 当該患者は透析前後での変動はほとんどなく、120/80mmHgで安定している。降圧剤は透析のない日のみ4分の1錠 (2.5㎎) を服用するのみである。
  2. 透析間体重増加率(IDWG)
    • 透析間の体重増加が4〜5%以内であるか。
      >> 2024年12月、当該患者は4.8%であった。食事内容および食事量が適正であることを示す。白米と副食物の割合以外は、何の制限もしていないことは繰り返し述べるところである。美味しい分だけ食べ、腹八分目を意識するよう指導している。
  3. 血清ナトリウム濃度
    • 血清ナトリウム濃度が正常範囲内(135-145 mEq/L)で安定しているか。
      >> 当該患者はその範囲内で安定している。
  4. 臨床症状
    • 浮腫や呼吸困難など、体液過剰を示す症状がないか。
      >> 当該患者においては、それら症状はまったくない。

質疑応答

フェイスブックの僕のグループに本記事を投稿したところ、ご質問があった。これはこれで重要なので転載しておく。

その人のご飯は透析をしてない人と同じ量ですか? 自分の83歳の父親が腎臓がだんだ悪くなり透析をするか迷ってます。今もですが透析をすると食事の管理が大変なので興味をもちました。

なるほど、状況がよくわかりました。

ご質問ですが、ご飯の絶対量は把握していません。ただここでは比較ができれば十分だと考えましたので、「初診時の倍量」という形で記載しました。鍼がかなり効いています。それ抜きで「食養生」だけでやろうとしても、危険だと思います。eGFRが10を切ると、全く自覚がないまま死の危険が襲ってきますので、迷わず人工透析を受けられることをおすすめします。僕の患者さんでは、eGFRが10になって心膜炎 (心臓に水が貯まる) まで急変し、しかし一命をとりとめ、だんだんeGFR11、12、13と回復して透析を回避できている方もありますが、こういうのは本当に特殊なケースです。透析をしたほうが食事の管理が大変になるのではなく、透析をしようがしまいが食養生が大切だということを強調しておきます。食べることだけではなく、早く寝ることも重要です。運動療法は素人考えでやっても逆効果になることが多いと思います。以下リンクをご参考になさってください。ただし、養生法は伝えても、強制したらダメです。強制はどんな場合でも生命を弱らせます。どうか、ご無理なさいませんように、お父様をお大切になさってください。

まとめ

本当に言いたいのは、数値ではないのだ。

当該患者は、本当に元気になったのである。初診は歩くのもぎこちなかった。本人は “怪しい感じ” と表現、脳幹出血を起こす前の嫌な感じが常にあった。それが治療開始後から、毎日25分のウォーキングを楽しみ、食事を楽しみ、思索を楽しみ、そして数値を見ることさえ楽しみになった。

よくしゃべり、よく笑う。そしてよく、嬉し泣きの涙を流す。
初診時では考えられない変化が起こった。
こんな明るい人だったとは。

そう、そっちのほうがむしろ考えられない変化なのだ。

そんな元気な姿から、数値の改善は見られたと思う。食欲すら改善できずに、健康にすることなど及びもつかないことであることを、もう一度再認識したい。机上の理論しか盾に取れない醫者は、とくに心すべきであろう。

ぼくは、数値は相手にしない。症状も相手にしない。ただ相手にするのは、この体の生みの親である、まさに子宮 (胎盤) と同格の仕事をしてくれている「肝臓」である。肝臓は最後の消化器である。食べ物から人体を作り生み出すこの臓器が、機嫌よく仕事をしてくれさえすれば、最大公約数としてのベストが尽くせるのだ。

腸管排泄がありえない仕事量をこなし出したのも、腎臓が役に立たないことを知っている「肝臓」が、排泄機能を強化した腸を作り始めたからだ、そう考えている。肝臓の持つ機能は、いまだに解明されつくされてはいないのである。

人知では及びもつかない「肝臓さん」のお仕事の、快適な労働環境をお膳立てする。それが僕の仕事であると自負している。

“肝臓” を考える…東洋医学とのコラボ
肝臓には500以上の働きがあると言われ、様々な病気と関わる “主役級の臓器” です。と同時に寡黙で “沈黙の臓器” とも呼ばれます。これを往年の名優、高倉健に例えつつ、東洋医学ともコラボしながら、肝臓とは何か、病気の原因とは何かを考えます。

「肝臓」とは、西洋医学の肝臓である。実在する機能 (各種タンパク質の生成) としての呼称のほうが分かりやすいと思って「肝臓」と表現しているが、本当は東洋医学でいうところの「脾」である。脾は気血生化の源であり、それと全く符合する。

「肝臓さん」と、さん付けで呼ぶのは、人体の持つ働きを「人間扱い」しているからである。モノ扱いでは奇跡は起こらない…とは、本ブログで繰り返し述べるところである。

人間扱いこそ、この医学の基本である「気」を動かす方法であると断じる。

「気」を動かした。だから奇跡が起こったのである。

 

 

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