パーキンソン病…中断患者からの電話

「先生に取り次いでほしい」

ある中断患者 (74歳・男性) からお電話があった。

パーキンソン病。治療は5回のみ。非常に素直に、こちらの言うことに耳を傾ける方だった。
保険が使えないか熱心に質問してこられ、同意書が必要だと説明すると、かかりつけの医師に相談する、とおっしゃったきり治療が途絶えた。金銭的な問題があったのだろうか。

それから2か月。

「先生! 先生のおっしゃった通り、奇跡が起こりました! 便秘やら糖尿やらパーキンソンのあれも、全部医者に相談して止めたんです。家内も、友達もみんなびっくりしています。先生から教わったことを一つ一つ思い出し、それを実践して、また歩けるようになりました。こんな日が本当に来るとは…。本当にありがとうございます!」

それから数日後。当該患者を紹介してくださった患者さんが、
「こないだ〇〇さんに会いました。えらい元気にならはって、『奇跡が起こりました!』って言って…。手の震えもなくなってるし、サッサと歩かはるし、顔色もすごく良くなってはりました。何があったんですか!?」

二人して、当該患者の回復を喜び合ったのである。

ぼくは北辰会に育てていただいた。なので初診時は、時間を確保しマンツーマンで、患者さんの生まれたときから現在にいたるまでの症状・生活習慣を詳しく問診し、それぞれに応じた説明・指導を、手を抜くことなく行う。なぜ病気になったのか、それを治すには生活のどこをどう改善したらよいのか。当該患者の場合、3時間以上かけて初診の診察を行った。これは僕の性格だが、困っている人を目の前にすると放っておけない。初診の患者さんがお帰りになった後はぐったりするほどだが、それでもこのスタイルで20年以上続けている。

軽い気持ちで当院を受診される方も、たまにおられる。
「痛みさえ取ってくれればいい」「治してさえくれたらそれでいい」
それはそれでいいのだが、こちらの説明や指導を聞こうとしない方、こういう患者さんに出会ったときは、つらくやりきれない気持ちになる。その考え方では、いくらいい治療をして たとえ効いたとしても、治るということはあり得ないからだ。病気を克服できた人はみな、人間的に成長できた人である。

人の心を動かす。
大本はどこにあるのだろう。

このようなお電話は、非常にうれしく、ありがたい。
治療せずして、言葉によって奇跡が起こったのである。

そうだ、真心だ。
真心は必ず通じる。僕はそう信じる。
それがタイムリーで叶わなくとも、10年後、いや100年後に具現化するかもしれないではないか。
何とか治っていただきたい…今という今、そう強く願い、懸命に行う。
鍼の腕以上に磨かなければならないのは、ここのところなのだ!

この真心に、患者さんの「誠意」という返球があったならば、奇跡は起こる。付せられたレッテルなど関係ない。
ただ、真心と誠意のアンサンブルという奇跡…これを起こすのが難しいだけなのだ。

金銭的な問題・遠方の問題、そんなものを乗り越えて、奇跡は存在する。

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