54歳。女性。2025年2月28日 (金) 初診。
19歳から手の震えがある。
ここ10年、特にここ5年は、それがひどくなった。
いつも震えている状態が続いていて止まらないという。
鹿児島から飛行機で、ホテルに宿泊しての初診である。だが、僕としては特に何も変わらない。いつもと同じように、淡々と診る。淡々と診ているつもりが、我を忘れて3時間、情熱が爆発する。いつものことである。近所であろうが遠方であろうが、年上であろうが年下であろうが関係ない。
どんなふうに震えるのか見せてもらう。
両手を差し出してもらうと、両手とも激しく震えている。
なるほど、これはひどいな。
内風によるシェディング
ひどいといえば、シェディングによる症状もひどい。ワクチン接種者に接触すると、
・まず子宮・卵巣が痛くなり、不正出血が起こる。
・腸も痛くなる。鼻血が出る。
・大腿部が痛くなる。
・ノドが腫れて息がしづらくなる。アナフィラキシーショックを疑うべき症状だ。
本人も、過敏すぎて困るとおっしゃっている。
シェディングが実際にあるのかないのか、確かめたわけではないので僕は知らない。よって事実無根あるいは証拠歴然、いずれも断言することを好まない。
しかし、人から人へと影響を与えたり、大気中の要素から影響を受けたりするパターンがあるとするならば、中医学的に見れば「外邪」である。外邪を受ける原因のそもそもは「血虚」にある。血 (営血) が衛気を作るからである。
血虚が心に影響すると「易驚」などの精神不安定 (気にし過ぎ) が生じる。
つまり、どのみち血虚を治していかなければならないのである。
血虚による内風
血虚があると内風が起こりやすい。内風とは裏 (体内) の風邪である。風邪はデタラメで一定 (安定) しない不安定さを持つが、この不安定な風が体内で吹き荒れるのが内風である。心の波風、ざわつきと表現してもいいだろう。
この風が吹き荒れていると、シェディングも過敏なまでに気になり、そういうものが無かったとしても実際に反応が起こる。アリを見ただけで蕁麻疹が起こることが実際にあるのだ。
また、この内風が「外風」と手を組むと、その外風 (外邪としての風邪) を引き込んで、ますます内風が吹き荒れるのである。一つ断言できるのは、現代社会の混沌とした気風によってシェディングという風評が蔓延し実際に被害をもたらしているということである。まさにこの「風邪」が蔓延しているのである。
邪熱による内風
内風を激しくする要素は他にもある。
先程は虚の側面として血虚による内風を説明した。
今度は実の側面として邪熱による内風を説明する。
一瞥して、外邪の影響を受けている状態 (表証) を見抜く。天突に特殊反応があることを見抜いたのである。このように外邪 (風寒湿暑燥火) が生命に影響する際、必ずついて回るものがある。風邪 (ふうじゃ) すなわち外風である。その影響をすでに受けている姿が、見て取れるのである。
寒邪に取り囲まれていると、生命は魔法瓶状態となって、内熱 (邪熱) が閉じ込められてしまう。内熱は内風を生む。高い海水温が台風を生むのと同じである。この強烈な内風が、手の震えの一因であると見た。
風邪 (外風) は寒邪と手を組み、風寒となって当該患者を取り囲んでいる。生命を防御するバリケード (衛気) にはわずかなスキマ (隙) があり、そのスキマから内風は外風と連絡をとって、さらに強いパワーを手に入れているのである。
手の震えの原因は「内風」
そして、この吹き荒れる内風こそが、手をここまでブルブル震わせる原因である。風で木の葉がブルブル震えるかのように震えているのはそのためである。
風フウを収めなければ。
以上の説明を終えた。
また、食事指導 (食べ過ぎは内熱を生む) 、早寝指導 (夜ふかしは内熱を生む) をも詳しくした。
ようやくベッドに寝てもらう。冒頭で震えを確認したが、もう一度診せてもらおう。かなりひどい震えだ。どれだけひどいか、動画に収めておこう。
あれ? 右手の震えが止まっている。
左手の震えもさっきの半分ほどだ。
「左のほうが強いのかなあ。」
「日によって (その時によって) かなあ…。」
「今は右は大丈夫みたいですね。」
「たしかに…。」
さっきよりましなので、戸惑う様子が伺える。
さっきより明らかにましだが、「その時によるのかな」と、僕もこのときは受け流した。
そんなことより、さっきのひどい状態が撮れなかったことが残念。
風寒を取り去る
ベッドに寝た時点で、大切な説明を忘れていたことに気がついた。
外邪に取り囲まれている状態を取り去ることは容易ではある。しかし、血虚 (生命力の弱り) はすぐには回復しない。よってまた外邪は戻ってくるのである。この場合の外邪とは、風寒 (風邪と寒邪) である。
風寒が戻ってこなくするために、3点の注意事項がある。
・今日のみ風呂に入らない。
・温かい飲食物のみを摂る。
・無用の外出・運動をひかえる。
その時である。
この指導を終えた瞬間、天突に特殊反応が消えた。つまり外邪 (いまは風寒) に取り囲まれている状態 (表証) ではなくなったのである。
なぜ外邪が消えたかは、腺様嚢胞ガンの症例 で詳しく述べたので、それをご参考に。
たしかさっき、すでにましになってきている感じがあったよな。
もしかして…。
「さっきより止まっている…。」
「止まってるなあ。」
「うん。」
「こうやって画面を見ているうえでは震えているのは分からないですね。(控えめに言っても) 肉眼で見たら少しあるのかな?って程度ですね。パッと見ると分かりませんね。」
予感は的中した。震えは止まっている。表証が取れたからだ。外風が消えたことによって瞬時に内風が弱まったと同時に、寒邪が退散することによって邪熱も下火になった。だから内風が、風がピタッと止まったのである。
本当に、最初の震えひどい状態を動画にとっておけばよかった。しかし、臨床とはそんなもの。無心かつ懸命であればあるほど、結果のことを考えない。結果のことを考えないから、本番に強い。結果が出るのである。よって画像や動画の撮影を忘れる。たぶん一生忘れ続ける(笑)。
「さっき、3点注意事項を言いましたね。あの時、取り囲んでいた外邪がパッと無くなったんです。たぶん、その注意事項を “できるだけやってみよう” って思いましたね?」
「はい、思いました。」
「それだけでね、体はすごく喜んでいるんです。分かってくれた。ただそれだけで嬉しい。これって “人間” なんですよ。体は “人間” なんです。〇〇さんがこの体を “人間” として扱った。だから体も “人間” としての反応を返した。そういうことなんです。体が喜んだからこそ、生命力がグンと上がった。だから外邪が消えた。だから内風が止んだ。だから震えが止まったんですね。」
「そうなんですか…。」
続いて、百会に鍼。
3番鍼で4分間置鍼。
抜鍼後、5分間休憩の後、もう一度震えを診る。
「わー、止まってる…。」
「ああ、ほんまやねえ…。ふだんは、こんな感じじゃ? 」
「ないです。」
「ないんですね?」
「わりと静止している感じです。」
間違ってはいけないのは、最低でもここ5年は震えが止まったことがないということである。
「こういう止まり方は? 」
「経験ないです…。」
翌日の経過
その日はホテルで宿泊した。翌朝、8時30分から診る。治療後はすぐ、鹿児島への帰路につくのである。
「一夜明けて、この状態はどういう印象ですか? 」
「だいぶ良いです。」
「良いですよね。昨日の夜から今朝にかけて、こんな感じが持続していますか。」
「そうです。」
「悪くなってこなかった? 」
「悪くなってこなかったです。」
「静止が持続しているんですね。OK。」
鹿児島からわざわざ来ていただいた甲斐があった。
次の予約は3週間後である。ホテルに宿泊して連日の治療を行うこととする。
考察
10代に、ADHD・腰椎分離症・坐骨神経痛・側弯症・喘息・耳閉感・手の震え・メニエール・多嚢胞性卵巣・不整脈・片頭痛。
20代に、アレルギー性肺炎・突発性難聴・子宮内膜症・うつ病。
30代に、橋本病・てんかん・突発性難聴・過食32kg増・自殺未遂。
40代に、糖尿病・脳動脈瘤 (op)
現在も、なにかと気になる要素が多い。身体のことだけではなく、日常生活もある。いろんなことに相手にならなければならない。そんな中で生命力は分散され、血は消耗しやすくなる。
今日、鹿児島から飛行機で来院、僕とゆっくり話ができた。
おそらくである。安心した。
それだけで、まず、右手の震えが止まった。
その安心は、血の消耗を止めた。
その安心は、邪熱の勢いを止めた。
そして、信念をもった。この先生を信じよう。
その信念は、血の消耗を止めた。
その信念は、邪熱の勢いを止めた。
その結果、5年間止むことがなかった震えが止まったのだ。
こういう要素を、理系ゴリゴリのお歴々はご否定になる。
“こういうものは科学じゃない。”
それは、自己の無能をさらす言動となりはしないか。
“私は、知識と技術しか知りません。”
“人として、大切なものを学ばずに大人になりました。”
人の陰口悪口を言ったり、揚げ足を取ったり、全容を見ずに安易に否定したり。
学歴がえらいから。
資格がえらいから。
だからオレはえらい。
人の心? 人格? そんなものエビデンスにない。
そういう人が医療者として一流であると自認し、自己に従わぬものは公然、否定する。
さっぱりだ。
これじゃ医療の世界は、まったく良くなりようがないではないか!
風は、八卦では巽風 ☴で表す。 邪としての風は、⚋ が下 (土台) で不安定さを示し、⚌が上で動きを示す。不安定な動きとも見て取れる卦である。