寒暖差でこたえるとか、季節の変わり目で体調を壊すとかいうが、暑さでやられるものは少ない。多くは冷えである。
体には、寒さから身を守る “防御力” がある。これを “衛気” という。衛気は体全体を覆い、寒さ (寒邪) が体内に侵入するのを防いでくれている。衛気の本質は温かさ (温煦) である。
一昨日 (10/17) 早朝からの急激な寒さは、この衛気をジリジリ追い詰めている。皮膚のトリデを破ろうと迫ってきている。
このトリデが破られればカゼ (表証) である。
この、ジリジリ追い詰めている状態でも症状は出る。脾陽・腎陽は、衛気 (温かさ) を必死でバックアップしているが、それが負担で弱りが出ると下痢をする。あるいは、衛気が寒邪に手一杯になり、衛気 (温かさ) が気のめぐりを助けられなくなると、頭のめぐり・体のめぐりがわるくなり、メンタル・フィジカルのさまざまな症状が出る。
昨日 (10/18) の臨床では、ほとんどすべての患者さんで、寒府 (陽関) に実の反応が見られた。寒邪が衛気を圧迫している状態である。患者さんには「冷えが入ってますね」と説明する。
冬と同じ格好で良い。
以下の2点に留意して欲しい。
- パジャマは冬物を着用する。
真冬になれば、キチンと腕をしまって行儀良く眠るのだが、ついこないだまで暑かったので、みんなまだ寝相が悪い。そういうクセがついているので、フトンにきちんと腕や脚をしまえない人が多い。冬物なら腕を出しても大丈夫だ。
パジャマが半袖だったり生地が薄かったりすると、フトンから出たところから体温が奪われるのである。寝しな暑ければフトンは着ず、横にスタンバイしておいて寒くなったらすぐに着れるようにしておけばいい。半袖でフトンを着て寝るのが一番良くない。
夏のクセで飛び出してしまうので、急に気温が下がる秋は要注意である。ちなみに冬はみんな行儀よくフトンを来て寝るクセがついているので、だんだん暖かくなる春は寝冷えが少ない。
- 朝起きたら、冬と同じ服装で重ね着する。
フトンの中では寒くないのに、起きてから寒いというのは着足りないからだ。あさイチはいったん冬装束にして、朝食を食べれば暑くなってくる。暑くなったところで、一枚ずつ脱いでゆく。これなら寒くなるということはない。いったん寒いと感じてから服を重ね着しても、もう遅い。温まるまでにはかなりの時間がかかってしまう。冷めないようにするのが上策だ。
こないだまで半袖だったので、何枚も重ね着するのが大げさな気もするが、そんなことはない。朝の室内の気温は20℃前後、真冬の暖房を入れた室温と変わらないのだ。真冬の格好で何もおかしくはない。
カイロ (貼るカイロ) はファーストチョイスとして適切な対策ではない。詳しくはリンクをご参考に。
加熱 (カイロ) と保温 (重ね着)
間の体温 (深部体温) は、約37℃である。
つまり人間の体は、37℃のお湯がはいったペットボトルの容器のようなものである。たとえば気温が10℃だと、放っておけばやがて37℃のお湯は冷めて、10℃になってしまう。
冷めないようにするにはどうすればいいか。
ペットボトルをタオルでグルグル巻きにするのである。一重で足りなければ二重に、二重で足りなければ三重に巻けばいい。これが服の重ね着である。皮膚から服の表面までの空気の層が厚ければ厚いほど保温性が高くなる。ピチッとした服をいくら重ね着しても、保温性は高くない。
この2点を指導し、さきほどの寒府を診ると、反応が鮮やかに消える。
寒府の反応が消えれば、出ていた症状も消失する。
意識は体を変えるのだ。