冷えとパジャマ

この5月 (2023年)、連休開けにいったん暑くなった。

このときは、窓を開けて寝た方もおられた。僕は部屋の戸を開けて寝た。過去の天気 (奈良) を調べると、5月17・18日が最高気温31℃を超えている。

これが相当影響して、いま冷えている方がチラホラ見られる。

季節外れに一旦暑くなると、体もそれに対応せざるを得ない。寒さを防ぐ鎧 (よろい) を解除する。そして現在5月も末となったが、その頃に比べると気温が低い日が続いている。この気温の低さが体にこたえているのだ。持病が悪化したり新たな症状が出たりする人がいる。鎧がないために、すぐに冷えてしまうのである。

夏だ! となると体はそれに合わせるのだが、いったん夏仕様にすると、元に戻すのは難しいらしい。体は暑さに対して警戒モードとなり、寒さに対するガードが緩んでしまっているのだろう。だから少しの寒さで冷えるのだ。
「湯冷め」みたいなものである。

ただしこの冷え、自覚できない場合が圧倒的に多い。つまり問診からは得難い。

ならばその診断、決め手は?

切経である。

寒府に実 (じつ) の反応が診られるのである。寒実である。

「冷えがありますね…」
「え? そうですか? 寒くないようにちゃんと服を着てるつもりなんですが…」

こういう場合は、寝ている間に冷えている可能性が高い。寝ている間は寝ぼけているので、寒さを感じない。だから知らぬ間に冷えてしまう。深夜を過ぎた明け方が要注意の時間帯なのである。

「フトンはちゃんと着て寝ていますか?」
「はい、ちゃんと着てます。」
「パジャマは冬物ですか?」
「いえ、ちょっと薄いのに変えました。」
「連休明けに暑い時がありましたもんね。」
「そうなんです。そのときに変えました。」

「冬のパジャマに戻しましょうか。で、フトンは必ずしも着なくてもいいです。」
「え!? フトン着なくてもいいんですか ! ? 」

フトンは着ねばならぬものでもない。

「はい。寝しな (寝ようとするとき) はまだ暑ければ、体の真横にフトンを置いておくか、お腹だけにかける程度にして下さい。冬のパジャマを着ていれば寒くないと思うので。」

冬のパジャマを着ていれば、寝相が悪くて手や足が出ていてもそう冷えない。
寝しなにフトンを着ていなくても、横に置いてさえおけば、明け方に寒くなってきたら寝ぼけながらでもフトンを着る。だから冷えない。

薄いパジャマでフトンをキッチリ着て寝ると、どうしても寝入りばなに暑くなって手や足を出す。明け方に気温が下がったときに、バジャマが薄いので、出ている手足から冷えてくるのである。

冬のパジャマはできるだけシツコく着ていてほしい。暑ければ寝しなはフトンを着ずに、それでも暑くなった時はじめて薄いパジャマに変える。薄いパジャマに変えても、冬パジャマは片付けずに枕元に置いておき、寒い日があったらそっちをチョイスできるように用意しておく。6月下旬までは寒い日があると想定しておいた方がいい。

こうした説明を与えて、寒府の反応が消えれば、薄パジャマのフライングが原因だったと分かる。

この時期は冷えの原因にバリエーションがある。パジャマが原因でなければ、起床直後の薄着や、フトンの湿気が原因のこともある。フトンを着なくても暑いならば、寝る前 (夕食時) から寝室をクーラーで冷やしておき、寝るときに切るという工夫が必要となることもある。
いずれにしても、明け方から午前中の気温の低さに対応できるよう、服をしっかり着るということである。

場合によっては、鍼をするまでもなく、この会話だけで症状が消えてしまうことすらある。

原因を特定し、患者さんがそれを理解することの大切さである。

それにしても、パジャマの着方を指導をする医療 (医業類似行為) とは…。

対症療法 (症状を取るだけの治療) はしない。

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