“来年の事を言えば鬼が笑う” というが、鬼が笑えぬ来年の話をする。
毎年、正月明けは体調不良が続出する。
そのはずである。クリスマスから始まる高揚感は大晦日・初詣でピークとなる。美味しいものをたらふく食べる、朝から晩までのべつ幕なしに食べる。それだけではない。年末の大掃除で力を振り絞り、年が明ければゴロゴロして運動不足。お祭り気分による開放感で夜更かし。
食べること、寝ること、動くこと、我々が行うすべてのことが最悪の状態なのだ。
そんな中で着実に増えるものがある。貯金ではない。
痰湿である。
痰湿とは、口から入るものが多すぎて器 (体の許容量) から溢れてこぼれたものである。ドロっとしていて汚い。あふれる原因は? 食べ過ぎである。
この痰湿、食べすぎていなくとも、器が小さくなっただけでも溢れる。器が小さくなる原因は? 間食・夜更かし・運動不足である。
この正月、日本人全員が痰湿をためるのである。
今年に関しては、痰湿はすぐには悪さをしないと予想している。正月中は温かい気温で推移すると天気予報が言ってるからだ。痰湿は温かいと餅みたいに柔らかくなる性質がある。柔らかければ、そこそこ循環するので、滞りを生まない。よって正月中は、さして体調を崩さないかもしれない。
しかし正月明け、仕事始めや新学期で通常の活動が始まってから、強い寒波がいずれ到来する。そのとき、正月中に貯めに貯めた痰湿が、一気にカチカチに固まるのだ。痰湿は寒いと餅みたいに固まる性質がある。固くなると一気に循環しなくなる。滞って、一気に体調を崩す。
いったん固まったら、痰湿がめぐりだすのを天を仰いで待つしかない。寒さに体が慣れるのを待つか、ふたたび暖かくなるのを待つか。
つまり、暖かいと予想される正月中は、体調が悪化しにくい。悪化しにくければ、誰しも調子に乗って油断する。調子に乗って、不養生をやる。油断して、水面下で痰湿を呼び込む。そして正月明けに到来するであろう寒波、そこで一気に体調悪化…という段取りである。
体調悪化とは、感染症 (カゼ) の発症・持病の悪化・新病の発症などである。
痰湿は、明け方の気温が低いときも固まりやすい。朝起きようとしたら体が痛いとか、だるいとか。動いているうちにマシにはなるが、痰湿そのものが存続する限り症状が出続ける。
横になっても痰湿が固まりやすい。床に就くと咳が出るとか。咳を出して体を振動させることによって、痰湿を柔らかくしようとするのである。
ガンの塊の本体は痰湿である。脳梗塞で血管をつまらせるのも痰湿である。
あらゆる病気が痰湿から生まれる。しかも、痰湿はネバネバと「しつこい性質」があるので、症状がなかなか良くならないという特徴がある。「痰湿は留恋する」と言われるが、誰しもこんなものにしつこく付きまとわれたくはないだろう。
以上のようなことを、理解しているのと、理解していないのとでは、大きな差が生まれる。知識が大切なのである。危険だと予見していれば、それなりに対応策は備わるものだ。
転ばぬ先の杖というではないか。
転ぶか転ばぬかは、膝を擦りむくか擦りむかぬかの大差を生む。
越したる年の峠道、下りも転ばず歩みたい。
一年間お疲れ様でした。
そしてありがとうございました。
どうか良いお年を。
もちろん、痰湿をこれ以上貯めない生活 (食生活改善・早寝早起き) が、体調回復をもたらします。ただしそれはゆっくりですので、予防が大切なのです。もともと正気が充実している人ならば、ウォーキングなどは非常に有効です。体を動かすと痰湿が温められて柔らかくなり、循環ルートに乗って排泄されるからです。ただし運動も気をつけてやらないと、普段やりつけてない人がいきなりやると、かえって器を小さくして痰湿を増やしてしまいます。