再び電話一本でめまいを治す…何があっても朝食を抜かないという信念

ファスティング (断食) は片手落ちである。実証の人には効くこともあるが、虚証の人は悪化する。今までこれで悪化した人を何人も見てきた。一般の方に勧めるならば、万人に効くものでないといけない。一般人は診断能力がないからである。悪化させてもオレには責任なんかない…というような無責任な啓蒙者が多いのは由々しき世情である。断食が効くのは肝臓が休まるからであるが、断食がしたいなら昼食を抜くといい。3回働くところを1回休ませてあげるのである。それでも虚証の極端な人は悪化するので注意が必要である。このように昼食を抜くべきという診断を出すこともあるが、朝食と夕食は抜くべきであると「体」は言ってきた経験がない。朝夕は必ず食べたほうが良い、それを理屈抜きに指導した結果、その場でめまい消失…という事実が2例も得られたのである。真理とは、どんな場合にでも当てはまるものを言う。

63歳。女性。2025./9./13。

名古屋からここ奈良まで通院される患者さんである。

9月13日 (土) 、早朝8時30分、電話があった。ご主人からである。

「家内が今朝からめまいで起きれないんです。それで吐いてるんですけど、どうしたらいいでしょうか。」

食べていないので、えずいては少量ずつ黄色い胃液を吐いているらしい。現在8時30分、まだ「朝」の領域にある。早急に朝食を摂る必要がある。朝とは、午前3時から午前9時までの6時間を言い、その後、6時間ごとに昼・夕・夜となる。午前3時から9時までの真ん中は6時であり、この6時が最も朝らしい時となる。朝食はその時間に摂るのが理想的である。

「白米を、一粒だけ食べさせてください。吐いているのでそれ以上食べさせる必要はないです。ただし、薬みたいに一気に飲み込むのではなく、手を合わせて “いただきます” をしてから、よく噛んでよく味わい、できるだけ甘みを感じようとしてください。もしかするとそれで、吐き気が強くなるかもしれませんが、楽に吐くことができることもあるので、吐きたいだけ吐かせてあげてください。それでスッキリすることがあります。一粒食べてもし吐き気が収まればそれはそれでいいです。吐くか吐かないかは体が判断することですので、体のやりたいように任せてあげてください。」

そう言って電話を切った。名古屋と奈良の距離の隔たりがある。 “今すぐ来てください” という訳にはいかないのである。

9月16日 (火) 、来院。

「あの後、すぐに主人が白米一粒を持ってきてくれて、食べさせてくれました。 “まだ噛め、もっと噛め” と言ってくれて、飲み込むと、すぐに吐き気が強くなって、楽〜に吐けました。たくさん吐いたらそれでスッキリして、めまいも止まって、眠くなってそのまま夕方まで寝ました。頭痛もマシで体調もかえって良くなりました。前から先生に “朝食は必ず摂りなさい、白米一粒でも摂りなさい” って言われていたんですけど、いざとなったら出てこなくて、お電話でそれを言っていただいて、ああそうだったと思い出しました。お米一粒の力ってすごいですね〜。」

めまいはあれ以来なく、元気にお越しいただいた。

当該患者はCRPが9.28 (正常値0.14以下) もある。4/18は4.99、5/16は5.23、6/6は7.51、6/27は8.84、8/1が9.28だった。CRPは炎症を表す数値であるが、どこで炎症を起こしているのか病院の検査で特定できていない。原因不明なのである。深夜から12時間続く頭痛がある。その他、体の各所が痛い。7月から当院で治療を行っている。簡単に言うと、いつ入院してもおかしくないくらいコンディションが悪い。そんな悪い状態でも、これほどの改善が見られるのである。

そもそも “朝食と夕食は必ず摂りなさい” というのは、僕の信念である。もちろん思いつきで得られたものではなく、たくさんの患者さんの “体” から教わったものである。僕は脈診で体と会話ができるのだが、どのお体と話をしても、 “朝食と夕食は必ず摂りなさい” と言ってくるのである。理由は分からない。そこまでは体も教えてはくれないのである。

だから理由は後付けである。胆汁とデトックス… 朝食は一口でも にそれを詳しく書いた。しかし、そこには書いていない理由もあって、それが今回のケースである。だが両方に共通することがある。

白米は、デトックスに強烈に作用するのである。めまいが一瞬で消失するほどに。

それにしても大切なのは、愚直なまでの素直さである。体が “朝食を摂れ” と言ってくる。体が “無理に食べてはいけない” と言ってくる。体が “白米を主食にせよ” と言ってくる。これらの声を一つにしたものが、 “朝食は白米を一粒でも食べる” という法則である。体が言うのであれば、僕はそれに従う。僕は「からだ教」の熱烈な信奉者だからである。

吐いていようが何だろうが。

素直に従う。体という不思議で偉大なものに。

誰が食べ物を材料に人間一体を作ることができるだろうか。そんなことができる人間は世界広しと言えどもいない。しかし「この体」はそれをやってのけているのである。我々よりも遥かに優れている。人間の分際で太刀打ちなどできない。

この体は、大自然 (の一部) だからである。

だから素直に従うのである。

一粒の米の中には神が宿るという。これを東洋医学では「穀気」と言うが、神とは大自然の力である。太陽 (火) ・大海 (水) ・大地 (土) ・大気 (金) 、そして飲食物 (木) から、我々はどれほどの恩恵を受けているだろう。その恩恵を凝縮したものが「この米粒」なのである。この恩義を決して忘れない。そういう発想から生まれた養生法であるということを、忘れてはならない。なんでも源が大切である。

最初はノロウイルス感染の子どもの症例だった。食欲がなかったので、おかゆを一口食べさせるように指導したら、その直後吐いたというのである。悪化したかと驚いた。しかしよく聞いてみると、そのあと急に元気になったのである。

催吐剤? その言葉が頭をかすめた。最初気づいたのは、真剣で冷や汗を伴う若い日の臨床だった。

電話一本で、即完治。

これで二例目である。一度ならず二度までも白米一粒で即効となれば、かなり信憑性がある。

電話でめまいをその場で治す…方法はたった一口の白米
診療開始早々、9時過ぎに電話がなった。2025/7/7のことだった。 「母が今朝からめまいがして何度も吐いているんですが、どうしたら良いでしょうか…。」

頭位性めまいであろうがメニエールであろうが、それを良くする要素は身の回りにある。なぜなら我々は、この身の回りに存在するものによって “生かされている” からである。そこに気付けば医療の幅ははるかに大きくなるだろうし、多くの患者さんが救われる結果となるだろう。

理系の頭で難しく考えないほうが、優れた発想が生まれることがある。

コロンブスの卵。

“たった一粒” を軽く見て、今までそんなことをやろうとした人がいなかったのである。

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