40年前に失明した目が、鍼一本で翌朝に見えるようになったという症例を、かつて公開しました。40年間動かなかった痰湿を動かした、ということになり、つまりは陽明胃経を動かしたということになります。
この陽明胃経の経別をいま勉強しています。初心者がやる勉強をなんで今さら、と思われるかも知れませんが、ぼくはまだこんな基本をやっているのですね。
陽明胃経の経別は、ぐるっと目をめぐりつつ目に直接入ります。おそらく僕はこれを動かしたのですね。それを今の勉強で知ることができました。つまり「還」にそういう意味があるということを初めて知ったのです。
リンクをみていだだくと分かるように、こんなマニアックなことやっています。これが臨床に役立つのか? という声が聞こえてきそうですね。
「癒やし」とは、舟です。疒 (やまい) を愈 (いよいよ) 治癒という目的地に進めるのだ。「兪」の中にある「月」のような字は、「舟」のことです。「巜」は波のことで、舟が波を切って愉快に進む様子です。前に前に、それが「亼」で、舳先を表します。
醫者は、舟を作って旅人を乗せ、目的地まで運ぶ船頭です。歩くより何百倍も速やかに到着する。ただしその舟は、できのいい船でなければなりません。隙間から水が入ってくるようではいけないのです。ほんの隙間が命取り、その隙間を埋める作業が、こんな「どうでもいい」かのように見える勉強なのですね。
僕はこの舟を、もっと大きい豪華客船にしたい。そして一度に沢山の人を乗せたい。そして、みんなで目的地に向かって漕ぎ出すのです。
考えてみれば、地球は宇宙に浮かぶ大きな舟です。いま、危険な水底 (みなそこ) に進もうとするこの舟を、もう一度作り変えて、安らぎある目的地に運びたい。バカみたいな夢を持ちつつ、バカと笑われるような勉強を続けています。やりたいんだからしかたない。楽しいんだからそれでいい。