胆汁とデトックス… 朝食は一口でも

胆汁と朝食の関係について考えます。

胆汁がコレステロールからできているという事実があります。血液中での過剰なコレステロールは肝臓で胆汁酸に変換されるのです。
また体中でうまれた老廃物や毒は、肝臓が解毒して胆汁に溶け込ませて十二指腸に排出します。これも事実です。

胆汁とは、「ゴミ出し」の役目があるのですね。
たんに消化を助ける役割だけではないのです。

本ページ内容は、そこから得られた「発想に過ぎないもの」であるということを、まずは告白しておきます。あくまでも中医基礎理論と個人の臨床をもとにした仮説です。
今後の研究テーマにしていただければ幸いです。

コレステロールは必要

コレステロールは肉・卵黄・魚介類に多く含まれていて直接摂取されます。

また、脂質 (脂肪酸) や糖質を分解して肝臓で再合成されることもあります。

コレステロールは、たとえばステロイドホルモンの材料になります。ステロイドホルモンとは、性ホルモン (プロゲステロン・エストロゲン・テストステロンなど) や、副腎皮質ホルモン (グルココルチコイド・ミネラルコルチコイド=アルドステロン) などのことです。大切なものばかりですね。

  • グルココルチコイドは、皮膚炎などで使われる薬剤の「ステロイド」としても使われるもので、抗炎症作用を持ちます。
  • アルドステロン (ミネラルコルチコイド) は、原発性アルドステロン症で聞き覚えがあります。原発性アルドステロン症は、アルドステロンの産生亢進と過剰分泌が見られ、高血圧をきたします。アルドステロンにはナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促す働きがあり、その過剰分泌は、高ナトリウム血症 (高血圧など) や、低カリウム血症 (筋力低下・疲労感・不整脈・筋肉の痙攣など) を引き起こす可能性があります。
    低カリウム血症と言えば、東洋医学では甘草の副作用でよく知られていますが、甘草に含まれるグリチルリチン酸が、まれにアルドステロン分泌過剰を引き起こすことがあるからです。偽アルドステロン症とも言われます。

このように、コレステロールは生命維持のために非常に重要です。

コレステロールは危険

しかしコレステロールも多すぎるとよくありません。「脂質異常症」 (高脂血症) です。つまりコレステロールや中性脂肪などの数値が高過ぎる。血液中にこれらが混じりすぎると、つまり血が油っこくなると、動脈硬化になる危険があります。

血管はゴムのように伸び縮みするから強いのですね。たとえば輪ゴムを日光にさらしておいたとします。年数が経つと、固くなってヒビ割れてきます。

血管も同じです。「油っこい血液」にさらして年数が経つと、固くなってひび割れてきます。これが脂質異常による動脈硬化です。メタボがよくないと言われる理由でもあります。

「甘い血液」にさらして年数を経ても固くなってひび割れてきます。これが高血糖による動脈硬化です。血液が油っこかったり甘すぎたりするとよくないのですね。

動脈硬化はわれわれが健康だと思いこんでいる間に、水面下で進行していきます。まるでガンみたいですね。脳梗塞・心筋梗塞・認知症など、恐ろしい病気の原因になります。

コレステロールを排出

冒頭にも言ったように、胆汁はコレステロールを材料にできています。

血液中に余ったコレステロールは、肝臓で胆汁酸に作り変えられます。
この形で、コレステロールは分解され減っていきます。

胆汁 (おもに胆汁酸から成る) が胆管を通して十二指腸に排出されると、その胆汁酸は小腸で胆汁酸輸送体の媒介を受けて再吸収されますが、一部は大便とともに排泄されます。

胆汁として利用され、体外に排出されることで、血液中のコレステロール量は加減されるのです。ここから、血中コレステロールを下げたい場合、肝臓の機能 (コレステロールから胆汁酸を合成する機能) を活発にし、胆汁を効率的に排出すればいいという仮説が成り立ちます。

胆汁酸とは何でしょう。コレステロールを油だとすると、油をつかって石鹸 (石鹸水) に作り変えるようなものです。
胆汁酸 (石鹸水) は、胆汁として胆のうに蓄えられ、食事を摂るたびに十二指腸に排出されます。
もちろん石鹸水ですから、油を溶かします。口から入った油ものを胆汁で溶かし、油と水が混ざりやすくすること (乳化) によって、小腸の消化酵素が隅々まで行き渡るのです。油が玉のままでは小腸の消化酵素が入り込めません。
不要なコレステロールを有用な胆汁に変える。体はうまくできていますね。

肝臓は必要なコレステロールを増やす (脂質や糖質から合成する) 当事者です。
また、不要なコレステロールを減らす (胆汁酸に変えて排泄する) 当事者です。

このような相反する働きを一人で持っているということは、その人の「さじ加減」があるのです。しかも肝臓は生命維持に重要な500以上もの機能を持つと言われています。人工肝臓が作れないと言われるのも納得ですね。

こういう「スーパー臓器」はむやみにいじくるのではなく、それそのものを良い環境下に置くことで、正常な働きを促す (助ける) のが最も賢明なやり方だと考えます。

少なくとも東洋医学ではそのように考えます。

老廃物・毒を排出

胆汁によって排出されるのは、過剰なコレステロールだけではありません。

全身の各細胞は我々と同じように生きていて、食事も取るし活動もするし、ウンチもオシッコもします。

このウンチやオシッコ (老廃物・毒) は、血管を通って肝臓に集められ、肝臓で解毒されて胆汁に溶け込み、胆管に入り胆のうで貯蓄されて、食事をとるたびに十二指腸に排出され、小腸→大腸→肛門へと大便とともに外に出るようになっています。

ここでも肝臓ですね。

食事をとることによって胆のうが収縮して、胆汁が排出されます。血液中のコレステロールだけでなく、全身の老廃物や毒も、胆汁を通して外に出る仕組みがあるのですね。

腸内のウンチが大便なら、体内のウンチは胆汁と言ってもいいでしょう。

で、これらはいずれも食べることで出る。おもしろいですね。

腸内は「外」です。体内は「内」です。輪切りにする前のバウムクーヘンをイメージしましょう。円柱の中心に空洞がありますね。この空洞が口から肛門までのクダ (消化管) です。

この物体の「外」とは、スポンジ表面の全てであり、クダの内側も「外」になります。
この物体の「内」とは、スポンジ生地の全てです。
「内」から「外」に出るならば、ウンチとよんでいいですかね。

食べなきゃウンチは出ない。それは本物のウンチも、胆汁も同じです。

体内にはいろいろなルート (管) があります。みんなが知っているのは、口から肛門のルート、心臓から毛細血管を経て心臓に戻るルートです。ここで知ってほしいのは、
口→胃→小腸→肝門脈→肝臓→心臓→全身の血管→全身の細胞→全身の血管→肝臓→胆管→十二指腸→小腸→大腸→肛門 
にいたるルートです。こうやって全身は栄養で養われ、全身から老廃物・毒がうまれ、それを外に出している。その最もキーになるのが肝臓、そしてそれが生み出す胆汁です。

かんたんにいうと、肝臓がみんなやってくれているのです。だから「肝臓がやりやすい環境」にすれば、老廃物は外に出やすい。そういう想像ができます。

開けすぎ、詰め込みすぎ

老廃物を外に出す。「ゴミ出し」です。台所のゴミの日が、たとえば週に2日あるとしましょう。その2日が、月曜と火曜だとどうでしょう? …困りますね。月曜と金曜の方がいい。胆汁による「ゴミ出し」も同じです。たとえばその時間が日に2回あるとしましょう。それが12時と19時…困るのです。7時と19時の方がいい。

もう少し詳しく説明します。

食材を料理に変えるときに必ず「ゴミ」が出ますね。

同じように食事を活動力に変えるとき必ず老廃物が出ます。この老廃物を解毒して外に排出する必要があります。これらは二つとも肝臓が中心となって行います。

食事によって入ってきたものを人体に変えるのが肝草の大きな仕事です。たとえば牛肉を食べても牛にならないのは、肝臓が牛肉を人体に変えてくれているからです。食事によって入ってきたものを人体に変え、このときついでにゴミ出し (胆汁の排出) も行うのです。

等間隔に料理を作り、等間隔にゴミ出しをするほうがいいのですね。
肝臓の仕事も同じです。

そのゴミ、生活の中で出てくる台所ゴミと同じです。一時に大量には出ない。少しずつ出る。そんなゴミを、週に2回可燃ごみで出すのです。その2回は、月木か月金の等間隔がいい。月火は近すぎて困る。

肝臓の仕事時間は、食事時間に左右されます。

食事時間の昔からのサイクルは、
・朝食と夕食
・あるいは朝食と昼食と夕食
です。これがもっともいい「等間隔」です。もし朝食を摂らなければ、夕食から昼食までの時間が17時間くらい開くことになり、「何も仕事をしない」時間が長くなります。この時間は「開けすぎ」です。効率の悪い時間だと考えられます。

われわれが仕事をするときも、等間隔にしているのが分かるでしょうか。昼働き、夜は休む。だいたい12時間おきに繰り返します。これがいちばん効率がいい。たとえ等間隔でも、3日間不眠不休で働いて次の3日間は何も仕事をしない…というサイクルだと、仕事の効率は悪くなりますね。開けすぎても、詰め込みすぎても、効率が悪いのです。

この等間隔に、10時や3時に間食が入ると「詰め込みすぎ」です。不眠不休が効率が悪くなるのは肝臓も同じだと考えられます。

また21時以降にとる夜食は「夜勤」です。夜勤で体調を壊すのは肝臓も同じだと考えられます。

「肝臓がやりやすい環境」とはどんなものか、肝臓の身になって考えることです。肝臓も人間の一部ですから、人間が仕事のしやすい環境が一番いいに決まっている。では、人間が仕事がしやすい環境とは? 肝臓も「人間」として扱ってください。でないと十分な働きをしません。

よって、食事をとらないということは、肝臓を休ませることにはつながるでしょうが、体内の老廃物を外に出すこともお休みになってしまうと考えられます。

断食や過度のダイエットは、体の丈夫な人はスッキリしたとおっしゃる場合もありますが、これは食べすぎていたからです。元々丈夫とは言えない人は、断食やダイエット後に大きな体調の悪化を見るケースを今までたくさん診てきました。脾虚が起こるのですね。これは消化器の問題として出ることはむしろ少なく、消化器とはまるで関係のない様々な体調不良であることが多い印象です。
食べすぎたり食べなさすぎたり、極端なことしかできないのでしょうか。節度があれば、食事時間ごとに控えめに食べる (節度をもっていただく) … ということができ、これが陰にも陽にもかたよらない「中庸」です。

とくに、朝食を摂らない人が増えましたね。僕が小さい頃は “朝ごはんをたべましょう” って小学校でも教わったものでしたが、最近はそういうことを言わなくなったためか、朝ごはんを軽視する若い人が多いです。エビデンスがないから言わなくなったのでしょうか。平成生まれくらいから顕著です。昼食と夕食だけにする人が増えてきています。

朝ごはんを軽く見ない

話が変わりますが、朝というのは一日の最初です。朝に生まれ、昼に成長し、夕に成熟し、夜に死ぬ。そしてまた朝に生まれ変わる。四時陰陽・五行理論の基本となる考え方で、生長収蔵 (成長化収蔵) といいます。

生まれたての朝は、いちばん素直で飾り気がありません。だから朝に体調が悪い人は、昼以降に体調が回復するのではなく、昼以降に不調を「感じなくなっているだけ」なのです。昼以降は「飾り気」が満載で、化粧でごまかすのですね。本当に健康な人というのは、朝食が一番おいしく感じます。だから、食べなさいと言われなくても朝ごはんを食べます。

健康な人は、自然の理にかなった生活習慣をしています。そこから逆算しても、朝食の大切さが分かります。

感謝は損しない

大切なことを言います。

食欲がないのに無理に食べる。これは絶対にやってはいけないことです。
でも朝ごはんは食べなさい。どうしたらいい?

食欲がなければ白米を一粒でもいい。いただきましょう。

きちんと座って、手を合わせて、よく味わって。
手を合わす。これって感謝ですね。

白米は、もっとも感謝に近い感覚を呼び覚ますことのできる食材です。
瞳をとじて白米を
白米と深い「ひと息」
をご参考に。

われわれも、人から感謝されると元気になりますね。さっきまでグダグタだったのに、急にシャキッとして生き生きと動けるようになります。感謝はきっと肝臓をも元気にするでしょう。肝臓はモノではなく人間です。人間に言える法則は肝臓にも当てはまるはずです。しかも、そもそも肝臓は4分の3切り取られても元通りになるくらいの再生能力を持っています。

その能力を最大に引き出すのは、食事に向かって心から手を合わすことである。エビデンスはありません。でも、そう信じて実行したところで、何か損失 (リスク) がありますか?

無理のない量を感謝していただけば、肝臓にとっても良いリハビリとなり、質の良い胆汁を分泌することでしょう。人間も肝臓も、寝てばかりいたのでは丈夫になりません。でも働かしすぎてもよくない。中庸が大切なのですね。

まとめ

肝臓の能力。

その能力が発揮されれば、コレステロールを胆汁酸に変え、全身の解毒が行われ、そしてそれらを胆汁として、ウンチとともに外に出す。

朝ごはん。

合掌。

健康にとって最も大切なことが、なぜが軽く見られる時代です。

【参考文献】“コレステロールを調節するたんぱく質の立体構造を世界で初めて解明-副作用の少ない、高脂血症や動脈硬化症の治療薬の開発へ-
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2011/111006_2 (参照2023-6-13)

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