無病息災という言葉、これはよく聞きますね。
それに対して、「一病息災」という言葉があります。
なにか一つ持病があれば、それを悪くしないように体をいたわるため、結果として健康でいられる。そういう意味があります。
しかし、もう少し意味を広げた解釈を試みたいと思います。
分かりやすく、地震に例えてみましょう。
大地震は、プレートの歪 (ひずみ) が限界に達して、その先端部が跳ね上がることで起こりますね。たとえば南海トラフでは100〜200年分の長い年月をかけて、歪が徐々に大きくなっていきます。
言い換えると、ドンドン歪が大きくなるということは、地震がずっと起きていないということです。だから大地震になる。
このプレートの歪がマメに修正されたならば、大地震にはなりません。ただし修正のたびに小地震が起こることになります。震度5弱以下なら被害はほぼ出ませんので、こういう小地震がたびたび起こったら、揺れはしますが災害は起こらないことになりますね。
歪が大きくなる前に是正されている。修正されている。
病気も同じです。生活習慣の歪が毎日少しずつ積み重なり、それが限界に達したときに一気に表面化する。これが大病です。
大自然に起こる現象は、人体という小自然にも同じように起こる。そういう考え方を「天人合一思想」といいます。中国伝統医学の根幹をなす考え方です。
天人合一… すこやかであるために をご参考に。
大病とは、訳もなくいきなり起こるものではありません。分かりやすい例は脳梗塞です。脳梗塞の主な原因は動脈硬化ですね。動脈硬化の主な原因は高血糖や高脂血症、つまり血液が甘すぎたり油っこすぎたりするからです。そのまた原因は? 甘いものや脂っこいものを食べ過ぎる生活習慣です。そういう毎日の生活習慣が、少しずつの歪みとなって、何年もかけて負のパワーをギシギシと蓄え、それが限界に達した時に、一気に爆発する。
まるで大地震ですね。
この構図は心筋梗塞・腎不全も同じです。心筋梗塞は心臓を養う冠動脈などに問題が出たもの、腎不全は毛細血管の塊である腎臓に問題が出たもの、そのように総括できます。
ガンや認知症も、中医学では生活習慣病 (気滞・邪熱・痰湿・瘀血を主因とする病気) と考えます。いずれも、自覚なしに水面下でギシギシとパワーを蓄え、それが限界に達したときに発症します。
何年も自覚なく進行し、そして一気に表面化する。
ここに列挙した恐ろしい病気の数々は、そういう共通項があります。
ガンの多くは検診で見つかりますが、この時点では自覚症状がありません。たとえばオデコにオデキはある日突然できますが、これは小さい状態で発見できますね。しかし胃にできたオデキ (ガン) は発見できません。自覚症状がない平穏な日々の中で、水面下ではギシギシと負のパワーが蓄積されている。触って分かる程度に大きくなったら、もう末期です。初期がんでは自覚症状が出ることはまれで、進行してから症状が見られます。
ガン・脳梗塞・心筋梗塞は、日本人の死因の上位を独占します。
ある意味、もっとも身近な病気なのです。
ところがそれ (大地震) を身近と感じるのは、それを病む一部の人です。多くの人はそれ (大地震) が忍び寄る影に気づくことなく、ハッキリと自覚症状があるもの (小地震) だけを身近に感じているのではないでしょうか。その代表が痛みであり、その他ありとあらゆるハッキリと自覚症状を呈する病気・症状です。ドラッグストアにあふれかえる鎮痛剤、その他の医療品の膨大な量の数々がそれを物語っていると思います。
そして、それを用いれば、起きかけた「小地震」を容易に止めることができます。
地震を止める。地震が起こらない。
小地震が起こらなければ起こらないほど、地下のプレートの歪は強く激しくなっていきます。地上の平穏な生活とは裏腹に…。そしてある日突然の、青天の霹靂。
恐ろしいことが起こる。大地震。
もし、小地震が度々起こればどうでしょうか。たとえば震度3とか4の小地震がたまに起こる。その度に、プレートの歪が是正され、ギシギシが消え去る。これくらいの地震だと、揺れが強くて怖くは感じますが被害は出ません。地下でギシギシを溜め込まれるよりも、マメに揺れてくれたほうが大地震にならなくていいですね。
われわれが自覚する痛みを始めとする症状も、怖くは感じるかもしれませんね。しかし、その症状を消して地下でギシギシを溜め込むよりは、その症状をマメに出した方がいい。
さらに良いのは、震度1以下の微震が、毎日起こることです。その度に毎日、プレートの歪が消える。プレートが動いて歪が出た分、毎日微震が起こって修正される。そんなことがあるとするならば、小地震はもちろん、大地震も永遠に起こりませんね。震度1くらいなら歩いていると感じないこともありますし、全く問題がありません。
微震が毎日起こればいい。軽い地震が起こればいい。
でも、いくら軽い病気でも、毎日起こるのはイヤですね…。
じつは、無病息災の人が、毎日起こす「一病」があります。その病気とは?
みなさん、よくご存知の「病気」です。
それは毎晩おとずれます。夜の9時頃がいいですね。
その病気の主たる症状とは?
まぶたが重くなる。目を開けていられない。
立っているのがつらい。座っているのもつらい。
勝手にうなだれてくる。早く寝転びたくなる。
そして、目が勝手にふさがる。意識を失う…。
眠たくなって寝ちゃうんですね笑
この病気が毎晩起こる人は、それ以外の病気が一切ありません。
なぜなら、その日の疲れ (歪) を、その夜のうちに修正するからです。
負のパワーが生まれても、その日のうちに消えてしまう。
溜め込む余地はありません。
大地震は、一生起こらない。
大病は、一生しない。
ああ、眠い。
この病気が起こらない人、いますね。
夜なのに元気いっぱい。
その病気が起こらなければ、別の病気が起こって動けなくなる。
脳梗塞で動けなくなる。痛みで動けなくなる。
結局は、動けなくなる。
ああ、痛い。つらい。苦しい。
これが「病気」です。
これは陰が足りないからです。陰とは…。
休息・静けさ・安らぎ・うるおい・クールダウン。
夜 (陰) の暗い時間帯に寝室で横になる行為は、これを補います。
それが足りないから補おうとする。休み足りないから休ませようとする。
ブレーキが掛かる。動けなくなる。
どうせ動けなくなるなら、痛みで動けなくなるよりも。
脳梗塞や心筋梗塞やガンで動けなくなるよりも。
自然な形で、夜に動けなくなる方がいいですね。
睡眠。
これがホントの「一病息災」です。
小地震を止めてもまだ飽き足らず、この微震をすら完膚なきまでに封じ込める。
また、蛍光灯・テレビ・携帯を始めとした文明の利器も、この一病をかき消しています。封じ込めています。
その結果、毎日毎日、プレートの歪が大きくなりつつある。
少しずつ、少しずつ。
今も大きくなっている、忌まわしい負のパワー。
毎日、毎日。
ゆっくりと流れる平穏な時間は、その不安をすらかき消してしまうのでしょうか。
高血糖・高脂血症、こういう血液に血管壁が何年もさらされると、まるで輪ゴムが日光に何年もさらされたように、固くひび割れて伸縮性がなくなっていきます。やがて、ひび割れた一部がめくれたり剥がれたりして血栓を生じたり、ひび割れが血圧に耐えきれずに破れて出血を生じたりします。そういうものが、いきなり脳で起こるものが脳卒中です。その結果として生じる脳虚血状態による部分壊死が脳梗塞です。