動脈硬化の原因… 〇〇→血液→血管→あらゆる病気

血管をすべてつなぎ合わせると、地球を2周半もする長さがあると言われています。そのほとんどが毛細血管である以上、人体は毛細血管の集まりであると言っても過言ではありません。脳も、肝臓も、肺も腎臓も、毛細血管の塊なのです。

その血管がボロボロになったら何が起こるか。とうぜん内臓がボロボロになる。目も耳も、神経も筋肉も、ボロボロになってしまうのです。

血管がボロボロになる病気、つまり動脈硬化について、理解を深める必要があります。

なぜ、動脈硬化が起こるのでしょう。血管が「太陽にさらした輪ゴム」のようになるからです。ただし太陽の日差しにさらしたからといって、すぐに硬くなってひび割れるわけではありませんね。長い間さらし続けると、硬くなるのです。引っ張るとすぐにプチっと切れる。ひび割れはポロポロと剥がれる。これが脳出血や血栓になります。血管に伸縮性がなくなれば圧を逃がすことができなくなるので、血圧が上がります。ここまでは、皆さんもよくご存知でしょう。

血管がひび割れてもろくなり、脳で血管が破れれば脳出血となる。ビビ割れの一部が剥がれた破片 (血栓) が体中をめぐり、脳で詰まると脳塞栓、肺で詰まると肺塞栓となる。

では、どうやったら「太陽にさらした輪ゴム」のように血管が硬くなるのでしょう。それは、「甘い血液」「油っこい血液」に血管を、何年もさらし続けると硬くなるのです。つまり、高血糖・高コレステロールの血液ですね。糖尿病や脂質異常症がよくないと言われるのは、そのためです。

糖 (グルコース) ・油 (コレステロール) などが過剰な血液は、人体にとっては異物あつかいです。

糖は、血管壁を構成する内皮細胞のタンパク質と結合 (糖化) して終末糖化産物(AGEs)となります。これによって内皮細胞は変質して異物化します。
コレステロールは、血管壁の内皮細胞に付着して、やがて異物の塊 (プラーク) を生じます。

ブラークは血管の壁に溜まって、血管を狭くして血流を悪くする。ボロボロでヒビだらけの血管になってしまうと、ヒビにプラークが引っかかり、余計にプラークが溜まりやすくなるという悪循環がある。脳で血流が悪くなれば認知症の原因になり、血流をふさげば脳血栓となる。

このようにして異物にベッタリとくっつかれた内皮細胞たちは、血液中の栄養や酸素を受け取ることができません。つまり食べられない・息ができないという状態に陥り、やがて死んでしまいます。壊死です。つまり、血管の壁のあちこちが、全体的に傷つく (死んでしまう) のです。傷ついたら炎症が起こるのは道理ですね。こういう炎症を、虚血性炎症と呼びます。

糖やコレステロールで血管が傷ついて炎症を起こすプロセスは複雑で未解明ではありますが、以上の説明はその中でロジックのあるものの一つです。

長期化すると、傷ついたスキマから「甘い血液」「油っこい血液」が入り込み、さらに炎症が進行する悪循環になってしまいます。炎症とはそもそも組織を修復するための反応で、悪いものではありません。しかし長期に渡ってしつこく原因を加え続けると、体に害を及ぼすようなものになってしまいます。

血圧が上がれば血管壁に負担をかける。その血管壁が古くなったゴムのようにひび割れて硬ければ、血圧が高くなることによって余計にひび割れがひどくなる。その隙間にコレステロールや糖が入り込み、ますます炎症が深くなるという悪循環がある。

たとえばゲンコツで顔をぶん殴られたら、ほっぺたが赤く腫れ上がりますね。炎症が起こって修復しようとしているのです。傷ついた細胞からはサイトカインなどのタンパク質が放出され、それを受けて全身から白血球 (免疫細胞) が集結し、細菌を排除したり、組織を修復したりするのです。と同時に、もう痛いのは嫌だから、ぶん殴られないように気をつけます。だから炎症が治るのですね。

ところがもし、ぶん殴られ続けたらどうなるか。やがてほっぺたはボロボロになってしまうでしょう。傷つき続ける細胞はサイトカインを過剰に放出し、免疫細胞は組織を修復するどころかさらに損傷を加え、炎症がひどくなってしまいます。

炎症が慢性化・長期化することによって血管がボロボロになってしまう。これが「太陽にさらした輪ゴム」のように硬くなる動脈硬化です。動脈硬化はゲンコツのようには痛くないので、気づかないうちに殴られ続けてしまうのです。

動脈硬化の恐ろしさは、脳梗塞や心筋梗塞にとどまりません。全身が毛細血管でできている以上、各種の器官もまた、毛細血管でできています。その毛細血管が「太陽にさらした輪ゴム」のようにボロボロになるならば、その各種器官もまたボロボロになってしまいます。

炎症はガンの温床となるが、血管に炎症が起こるということは、あらゆる組織におけるガン (胃がん・大腸がん・肺がん・膵臓がん・肝がんなど) の原因に、動脈硬化 (血管の炎症) が関わる可能性を示唆する。

たとえば糖尿病の合併症は、失明 (糖尿病網膜症) ・指などの壊疽・慢性腎臓病 (CKD) などが有名です。つまり、目も指も腎臓も、毛細血管の集まりなのです。血糖が高いと血管をボロボロにするという話は先程しました。だからこれらの部位で毛細血管がボロボロになると、目が見えなくなったり、指が腐ってしまったり、腎臓が機能しなくなったりするのです。

繰り返しになりますが、人体は毛細血管の塊です。血管という人体のほとんどを構成するものが、ボロボロになったらどうなるか、ここは深く考える必要があります。脳・心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓…無くてはならぬ組織が、いつ瓦解してもおかしくないのです。

腎臓が機能しなくなると、血圧が上がる。これは、ろ過装置 (腎機能) の数が減ると、ろ過できる水液が減ってしまうので、水圧を上げることによって大量の水液をろ過するためである。だが、それは一つ一つのろ過装置に負担をかけることの裏返しでもある。結果として、腎機能はますます衰える悪循環となる。

しかも、普通は痛みとして自覚できる炎症が、血管内皮細胞では慢性的炎症を起こしていても自覚できない。これを恐ろしさとして感じる必要があります。「太陽にさらした輪ゴム」のようにボロボロになってしまっていても、目にも見えない。感じることもできない。

栄耀栄華を極めた楼閣が、じつは砂上の楼閣と知らない恐ろしさです。

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