冬場の活動量が、夏場をこえない

【質問】2021年10月2日

家族の事でお聞きしたい事があります。現在40歳 男性 9/26の夜中 急にお腹が痛くなり、次の日病院で上行結腸の上部とS字状結腸に炎症があると言われました。熱は37.6℃くらいでした。あとは 顔と胸部中央に夏から治らない出来物がありました。

去年の9月にも急性腎盂腎炎腸に炎症を起こし40℃の熱で入院してます。この時から体調を崩しやすくなってます。普段から肩こりと腰痛があります。ざっくりで申し訳ありません。

こういう場合 東洋医学では どのように治療するのでしょうか。自宅でも食事で改善もできるのでは?と思っていますが なかなか詳しく調べられずにおります。教えて頂けたらと思い 投稿いたしました。宜しくお願いいたします。m(_ _)m

上記は、僕が主催するFacebookのグループへのご質問です。その回答が以下のものです。

【回答】2021年10月2日

まず気になるのは、いきなり腸の炎症が起こるということです。なにかそれに先立つ信号を、体が発してくれていれば良いのですが…。

肩こり・腰痛は、その先立つ信号である可能性がありますね。これを “症状だけ取れればいい” と考えて、実際にマシにしてしまう、そういうことを度々繰り返すと、本当の原因はそのままで、表面的にだけ良くなってしまう可能性があります。

そしてそのたびに、“本当の原因” はだんだん深いところに、見えないマグマのように落ち込んでいってしまいます。

深夜というのは一日のうちで最も深い時間帯で、そういうときに腹痛が急に起こるということは、病根は深いと見ていいと思います。だから去年も腎盂炎という深い病気になっているのですね。その病根は見えたり隠れたりしながら存続している、そういう可能性があります。

人の生活習慣はさまざまで、どういう原因で体に疲労がたまっているかは実際にお顔・お体を拝見しないと分からないことですが…。参考までに以下の記事を挙げておきます。

胃痛…東洋医学から見た4つの原因と治療法
肩こり…東洋医学から見た7つの原因と治療法
腰痛…東洋医学から見た6つの原因と治療法

“胃痛” となっていますが、腹痛と病因病理は同じです。 “胃痛” を “腹痛” と置き換えて読んでください。

新たな気づきがありました。

そして不思議な偶然がありました。

下の Facebookへの投稿を御覧ください。これはグループにではなく、ぼく個人のページへの投稿です。

2021年10月14日

夏の暑さに比べれば、いくらかの秋らしさとともに、随分動きやすくなった。が、この動きやすさがアダになることがある。

日の短い冬場 (秋分から春分) の活動量が、日の長い夏場 (春分から秋分) の活動量を超えてはいけない…という法則がある。この法則に従い、自然界の動植物は、一様に冬場は活動を休止する。樹々は葉を落とし、昆虫も動物も冬ごもりである。そして夏場は葉を広げ盛んに光合成したり動き回ったりする。人間も照明が登場するまでは、自然とこの法則に従っていた。

春にはつらつとし夏によく動ける人はおおむね健康である。しかし、春は木の芽時で体調が悪く、夏に暑さで動けず、秋らしくなって急に動きたくなったならば、注意のしどころだ。

こういう人に “夏場に動け” といっても動けないし、無理に動いたら体調を壊す。だから “冬場にひかえる” しかない。夏場にどれだけ活動したか…をイメージし、それよりも冬場の活動量を少し抑え目にする必要がある。そして、来年の春分が来たならそれを解き放ち、一気に活動的になればいい。

患者さんを診ていると、まったく問題なく順調に体調回復しているかのようなのに、少し活動が過ぎただけで急変することがある。急変とは、緊急入院を必要とするような持病の再発も含む。腸管・血管・尿路・気管といった、チューブ系の爆弾を持病として持っている人である。緊急手術はほとんどこのたぐいであると、現場の方から聞いている。

こういうとき、冬場>夏場 のエラーが出ている場合がある…というのは以前から分かってはいた。しかし、それを直前に見抜くのは能力の限界を超えている…と思っていた。しかしこの秋、事前にこれを見抜く足がかりが、直感として得られた。

診断するための穴処として、内関に注目している。内関は陰維脈 (陰の綱維・陰をつなぎとめる綱) を支配しており、この穴処の左右に邪が出ているならば、このエラーが出る危険があると教えてくれているのだ。冬場は陰維脈に正気が満たされる時期であるにも関わらず、邪があれば正気が入れない。 “冬場の活動量が、夏場を上回ってはいけない” …この指導を与え、患者さんの腑に落ちると、即座に内関の邪は消え去る。

患者さんを診ていて、まったく問題ないかのように映ったのは、それはそれで誤診ではない。急変をみるのは、別次元の大きな陰陽…1年というサイクルの夏場と冬場…その矛盾が、突然ステージに立つからだと思われる。小さな陰陽…1日というサイクルの昼夜…で診ることが臨床では多く、1日サイクルの積み重ねでは、確かに良い反応が見られているのだ。

考えれば当然のことでもある。夏よりも秋のほうが体調が良くなってこなければならないし、良くなってくれば夏場の活動量を越えてしまう。1日1日の積み重ねで病気になるように、1年1年の積み重ねで病気になることがあると、別々に考えることが必要だ。

規模が大きく根深いのは当然、1年の方である。 “冬場” に急変することが多い。春分直前に悪化する “木の芽時” は病根が浅い。秋分直後に急変するものは病根が深い。一年一年の積み重ねがどの程度重いかは、どの時期に悪化するかが参考になりそうだ。

《素問・四氣調神大論》に、春は “発陳”、夏は “蕃秀”、秋は “容平” 、冬は “閉蔵” とあります。これが、冬場の活動量が夏場をこえてはならない文献的な根拠となります。リンクをそれぞれに貼りましたので、詳しくはそちらをどうぞ。

臨床的には、春分から秋分の日の長い時期を夏場と考え、秋分から春分までの日の短い時期を冬場と考えるのがいいと思います。下に図示しますので参考にしてください。

実は、10月2日に、急変し入院となった “大切な患者さん” がありました。

もともと急性腹症 (腸閉塞) の持病があった人で、頻繁に緊急入院されていましたが、当院で療養をはじめると激痛は影を潜め、体調は徐々に回復していました。

なぜ事前に見抜けなかったんだろう…と昼夜をとおし考え続け、朝夕に無事を祈り、やっと考えがまとまったのが、上記投稿 (10月14日) です。

これまでにも、このような “よめない” 悪化があった。それが今思えば、下記投稿にあるように “冬場” であり、 “チューブ系” あるいは “九竅系” いわゆる気閉証です。急性腹症 (虚血性大腸炎) ・尿路結石・カンジダ膣炎・肺炎・喘息… 、九竅なら目・耳・鼻・咽喉・尿道口・肛門となります。一人ひとりの患者さんを思い出します。みんなその持病がもともとある方です。

こういう悪化はもちろん夏場でもあるでしょうが、ぼくの臨床では一度もなく、それは “よめていた” 可能性があります。やはり冬場は “深い” のでしょうか。

朝日新聞に、大自然の循環、健康に生かせ…季節と体 と題して「冬場の活動量が夏場を上回ってはならない」ことを提言したのが 2007年でしたから、上の記事で触れた “診断” ができる (めどがつく) まで、少なくとも14年の歳月を要したことになります。

知ってはいたし気にしてもいたが、明日悪化するということがよめなかった。

なにげなく投稿記事をスクロールして眺めていると、ふと目についたのが今回の質問者の記事です。

あっ、これも同じ “冬場のチューブ系” だ! 質問者の方に伝えておいたほうが良い。そう考え、記事にまとめる決意をしたのが今朝 (10月18日) …。出勤途中の車の中で、草案を頭の中で練っていました。ページのリンクにしようか、それとも書き下ろすか…。

その直後、院に到着するやいなや電話がなりました。その “大切な患者さん” からです。明日来院したい、とのことです。無事退院されていたのか、よかった…。

胸をなでおろし、この記事を書く作業を進めていると、不思議なことに気が付きました。

質問者のご投稿をいただいたのが 10月2日、しかし失礼ながら、その日に返信を済ませて、もう僕の記憶からは消え去っていた。その日付をよく考えると、その同じ日、 “大切な患者さん” が腹痛に苦しまれ入院されていたのです。それは、この記事をまとめながら気がついたことです。

偶然にしては出来すぎた、時間の一致。

また、朝から草案を練っていたことと、再診のお電話をいただいた時間が一致 (10月18日) していたのも、この記事をまとめている途中に気が付きました。

ユングの共時性 (シンクロニシティー) を思わせます。こういうことは、たいがい真実です。

10月2日の一致。
10月18日の一致。

明日、遠方から車で一時間かけ、喜寿の坂をも乗り越えつつ、お越しいただきます。

受け入れる準備は整いました。

 

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