当院を受診された皆様へ。
いろいろ養生の指導、しましたね。
良くなってほしい。成長してほしい。
病気を克服した人は、成長した人です。
肉体活動 (からだ：陰) の養生・努力
【食べる】間食しない。米食で腹八分。よく味わい頂く。
【寝る】できるだけ早く就寝する。スマホを見すぎない。
【動く】毎日のウォーキング。あるいは運動をひかえる。
【思う】感謝と謙虚が大切。生かされていることを知る。
でも、これらは全部、高いところにある「理想」です。
「現実」はここ。もっと低いところにある。
もちろん “今まで知らなかっただけだから、やろうと思えばすぐにできるよ” って場合は、すぐに理想に到達していただければいい。
しかし “言うは易し、行うは難し” というものが、必ず含まれているはずです。
大切なのは、理想に到達することではありません。理想とは何か。まずは、これを「知る」ことです。どの方向に向かっていけば良いのか、ハッキリと見定めることです。それだけで「向き」がかわる。矢印の方向が変わる。努力がいい結果につながるかつながらないかが決まります。
方向が定まれば、1mm、1cmでいい。
少しずつ前に前に進む。これが成長です。
人間としての「成長」が伴うほど、これらの養生は身につきやすくなります。機械的では続きません。正しい養生は、なぜそうすべきかという「意味」を必ず持っています。
精神活動 (こころ：陽) の養生・努力
【食べる】食材はみな命。命をうばい食べるには、自ずと節度が伴う。命を尊び敬う。
【寝る】昼と夜は大自然が決めたオキテ。昼は働き、夜は寝る。大自然に従う素直さ。
【動く】動きすぎない。怠けすぎない。あせらずたゆまず一歩一歩の落ち着き・根気。
【思う】これら養生が成長にどうつながるか、なぜ成長すべきかという意味を考える。
養生努力について、 “この調子ですよ” って、僕はよく言いますね。
これは “このままでいい” ってことではありません。いつも調子いいこと言うなあ…と思われるかもしれませんが、決して適当に言っているのではなく、真剣に診察して見破って言っているつもりです。列缺というツボで診察しています。
成長しているかどうか。それを見破って言っているのです。
成長って何でしょう。
大自然が教えてくれています。それは植物です。
ここに一本の樹木がある。
樹木は上に上に伸びようとしています。上に上に。何を目指して成長しているのでしょうか。
それは太陽です。樹木の理想は太陽なんですね。そうやって太陽に向かって成長し続ける。
しかし樹木は、その理想に到達することはありません。
一生かかっても理想にたどり着けない。 完璧にできない。
そうと分かっていながら、やめない。
1mm、1cm。少しずつの成長をやめない。
成長がなかったらどうなるか。今年、葉っぱを一枚も出せなかったら？
枯れます。
1mm、1cm成長している限り、植物は生き生きしているのですね。
この「生き生きさ」こそ、健康です。
1mm、1cmのなかに「健康」は息づき、映し出されるのです。
樹木は一見、昨日と今日では何も変わっていないように見えます。
しかし、数ヶ月、数年たてば見違えるように変化している。
成長している。
良くなっている。
いま目には見えなくとも、いい方向に向かっているのです。
昨日と今日で変わらない。それを否定してはならない。
そこを全力で肯定しなければならない。
なぜならそこには1mmの成長があるからです。その1mmの成長があるかないかは、生き生きするか枯れてしまうかを左右する重要項目です。そして、それを見極めるのはむずかしい。僕はそこを見極めて言っている。 “この調子です” 。
初めてつかまり立ちをし、ヨチヨチ歩いた赤ちゃんの笑顔。
あの生き生きした目を思い起こして下さい。
あの目を、我々は一生忘れてはならない。
生まれたときから持っていたあの目は、死ぬ瞬間も持っていて当然のものです。
生まれる前から成長するという性 (さが) を持っている。
だから、死ぬまで成長を続ける。死んだあともあの世で成長を続ける。
この世限りと思うから、年をとると成長をやめてしまう。
あるいは生き急いで背伸びしてしまう。苗木が翌日に大木になるなどは自然ではありません。
止まっちゃダメだ。あせってもダメだ。
1mm・1cmこそが、成長。
これが成長。それをやめるから、病気になる。
成長をあきらめるから、いい生き方ができない。
成長をあせるから、いい生き方ができない。
完璧は✕、できるだけが〇。
完璧ではない。「できるだけ」こそ真実。
植物はそれを如実に教えてくれています。
届くことのない太陽を目指し続けながら。
たどり着けない絶望。
それでも諦めない希望。
この相反する「陰陽」のなかで、真の「生き生きさ」が生まれるのです。
病気を克服した人は、かならずこの「生き生きさ」を持っています。
生き生きと生きるのが人生です。病むのが人生ではありません。
完璧になどできなくとも、それを目指す過程に健康は存在します。
まだ走れなくとも、初めて歩いた赤ちゃんが生き生きしているように。
完璧にできなくていい。いや、未熟な我々に完璧などそもそも無い。
しかも完璧 (理想) を見失ってはならない。前を向くのを止めてはなりません。
理想は目指すためにある。
到達するためにあるのではない。
1mm、1cmがいい。太陽を目指して、成長を続ける。永遠に。
この自分が続くだけ。できるだけ。
そう、それでいい。
その調子です。いっしょに進もう、前に前に。
