2025年3月、急に暖かくなった。この現象は、ここ奈良を始めとして各地で起こっている。
2月24日 (月) 、最高気温5.6℃。
(火) 〜 (金) は、最高気温10〜13℃。
3月1日 (土) 、最高気温が一気に19..7℃に。晴れていたので車に乗ると汗ばむほどだった。
日曜日は雨だったが、それでも最高気温が16℃まで上がる。
おとといと昨日 (月・火) は12℃・10℃と再び下がる。
気候の急な変化は、“落差” である。
落差は、“段差” である。
気候急変があった地域では、この段差で全員がつまずいた。
急に段差があらわれたからである。

この段差 (落差) 、中医学的には、風邪 (ふうじゃ) のことである。もちろん気候における風邪なので外風である。体内 (メンタル含む) の風邪は内風である。内風と外風が手を結ぶ。内風が吹き荒れているところに、外風が出現すると、両者はタッグを組み、内風が調子に乗ってますます強くなる。2月28日 (金) あたりからの症状は、この内風が原因である可能性が非常に高い。それを右行間 (実) で診断するのである。
風邪 (ふうじゃ) とは、急に吹いたり急に止んだりする不安定さが特徴であり、衛気から成るバリケードのわずかなスキマから手を伸ばして、内風と外風が手を結ぶのである。
>> 外邪って何だろう
全員が段差でつまずいたが、その結果は2通りある。
1つ目は、つまずいて “おっとっと” となったが、こけない。無傷。
2つ目は、つまずいて “おっとっと” となり、耐えきれずこけた。膝を擦りむいて血が出た。
無傷であるか怪我をしたか。その差は大きい。
怪我をした人とは、この気候急変中に「変わった症状」が出た人のことである。
急に暖かくなった土曜日の前、2月28日 (金) 前後からの症状であると考えてもらっていい。
当院の患者さんでは、だいたい4分の1くらいが該当した。
内風と外風がタッグを組んだ時、正気の弱りの度合いによっては表証を惹起することがある。ただし、今のところ当院ではそこまで重症の方はいない。これには素直に喜んでいる。患者さん各位、正気がそこそこシッカリしていることを意味するからである。
診断点は、右行間 (実) 。
ずっと寒かった。寒かったが、それは一定だった。寒いなりに安定していたのである。
その安定を破って、暖かくなっていく。これからが季節の変わり目である。
季節の変わり目はいつまで続くのか? 夏の酷暑がずっと続く日々が来るまでである。
それまでは、この落差が何度もあるだろう。なかなかの長丁場である。
対処策は。
右行間 (実) の反応を消せば良い。
その方法は簡単である。
スピードを10から8に落とす。
これはフィジカル・メンタルともに、である。
ただし、フィジカルのスピードを落とすのは簡単だが、メンタルは難しい。
だからフィジカルのスピードを落とす。
たとえばスーパーで買い物している時の歩くスピード、家で家事をする時の動きのスピード、これを10から8くらいに落とすのである。ウォーキングを指導されている患者さんは、そのスピードも10から8くらいに落としてほしい。あらゆる仕事のスピードをそのように落とせば、ミスが少なくなってかえって早く仕事を終えることができるとイメージして欲しい。
そうやってフィジカルのスピードを落とすと、おのずとメンタルのスピード (内風) も落ち着いてくる。
ほんのわずか、スピードを落とすのである。
すると、段差でつまずいても、こけない。
ほんのわずかなスピードの差、これが、こけるかこけないかを分ける。
「おっとっと」となってこけるのは、ほんのわずかスピードが出すぎていたからである。
このように指導する。
指導した瞬間、右行間 (実) の反応が、その場で消える。
すると、
いま、新たに現れた体調の急変も、すみやかに改善する。
今後、気候の急変があっても、調子を崩さなくなる。
…そうなる可能性が高くなるのである。
鍼をして治すのもいいだろうし、弁証も大切だ。
しかし、もっと大切なことがある。
病因を断つことである。
これには少々面倒でも、このように「直 (じか) に指導する」ことが必要である。
労を惜しんではならないし、鍼よりも大切だと認識している。
大切なもの、それが病因である。病因を断つのは鍼ではない。
指導である。
昨日と今日は、この指導・説明に時間を割くべき患者さんが多かった。
右行間 (実) を鍼ではない方法で消すためである。
よって時間が押してしまい、そうでない患者さんには待っていただく時間が長くなってしまった。
申し訳ありませんでした。
だが、こういう手間を惜しまず、つい一生懸命になってしまうのが僕の特徴である。そういうことを患者さん方はみんな知ってくださるゆえに、誰からもクレームがない。みんな穏やかな顔をしておられる。
「向かい風」は吹かない。
こんな僕を、「急に温かく」ではない。
「常に温かく」見守ってくださっているのである。