オーバードーズ (特に若年層の麻薬的目的による薬の過剰摂取) には温床がある

高校2年生、進学校ダンス部の学生さんがメンテナンスでたまに来院する。いい機会なので聞いてみた。

「エナジードリンクは飲んでないねえ。周りの子たちはどう?」
「あんまり聞かないです。」
「カゼでもないのにカゼ薬をいっぱい飲んでるとかは?」
「ああ、それはまあまあいますね。」

最近社会問題となっているオーバードーズである。カゼ薬に含まれるエフェドリンなどの成分を多量摂取すると、一時的に気分がよくなる麻薬的効果がある。若年層を中心に口コミで「楽になる」ことが広まり、日常のつらさから逃れる目的で使用されるケースが後を絶たない。安価で簡単にドラッグストアで購入できる薬ばかりである。葛根湯にもエフェドリンは含まれている。

エフェドリンはドーピングの禁止薬物でもある。疲労感を軽減し、運動能力(集中力、瞬発力、持続力)を一時的に向上させる効果があるため、世界アンチ・ドーピング機構により競技会時の禁止物質に指定されている。

楽になればそれでいいじゃん。

そういう考え方は良くないんだよ、って我々大人が言えるだろうか。

痛ければ痛み止め。痒ければ痒み止め。鼻水や咳止め。ぜんぶ薬である。あるいは数値を下げるのも薬である。多くの薬にはこう記載されている。 “本剤はつらい症状を一時的に和らげるものであり、病気の原因そのものを根本的に治す効果はありません。”

“病気の原因そのもの” とは何だろう。たとえば中性脂肪の数値が高いならば、その原因は油脂分の摂りすぎや運動不足である。これは単純で分かりやすいが、例えばカゼの原因はウイルスの他に免疫低下 (体のコンディション) も挙げられる。免疫が低下する原因は、人それぞれで違うので特定が難しい。行動や考え方は人それぞれで違うからである。

さらに難しいことがある。症状を消すばかりを繰り返す一方で、 “病気の原因そのもの” がどうなっているかだ。それは改善しない。楽になれば向き合わなくなるとは、人間の本質である。そして、それはだんだん蓄積されていく。タチの悪いものになっていく。

その一方で症状は消えたままだ。

症状がない。原因はタチが悪い。そんな病気って?
初期ガン。動脈硬化 (脳梗塞) 。
そこが理解できない難しさ。

その難しいことに、医療は真剣に向き合ってこなかった。

よって、一般市民 (大人の一般人) も向き合えていない。

その子供たちが、 “楽になればいいじゃん” と考えることにまったく矛盾はない。

今さえよければいい。その考えの危うさはその昔、イソップが “アリとキリギリス” をもって説明を終えている。


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