春の「冷えと乾き」

渾身の力をふりしぼり開いた花も舞い散り、陽光の影をうつす「葉桜」へと季節は進んだ。

じつは、これは大変な作業である。

光合成がまだ十分にできていない。青葉はまだ小さく薄っぺらく色も淡い。満開の「榮」を演出した原動力は、去年の夏に得たエネルギーなのだ。いままさに、残り少ない力を振り絞って葉を伸ばし広げているのである。

もう少し! 葉をさえ広げることができたらならば、日差しを受け止めて光合成ができる。そうすれば安定した「燃料供給」が得られる。その時までがんばれ! …そんなふうに自らを鼓舞する桜木の気持ちを想像しながら、花期を終えて佇立する姿をみる。

この様相を臨床にもみる。燃料は「血」である。そこから生み出される活動や温かさが「気」である。燃料が足りなくなっていたとしても、次のスタンドで補充するまでは何とか走り続けなければならない。

この時期、そういう弱りが出ている患者さんが少なくない。
・冷えの症状が出る。あるいは冷えがなくとも陽虚証と診断される。
・乾きの症状が出る。あるいは乾きはなくとも血虚証と診断される。
木の芽時から五月病あたりまでが該当する。4月の入学・入社とも重なる。

  • これは2022年における 4/12時点での特徴である。過去の経験では気虚が出やすいこともある。

冷えの場合は、右復溜などに虚の反応が出る。豊隆など痰湿を示す穴処も付随して反応が出ることが多い。

症状としては、花粉症・痛み・朝のふらつきや頭部の冷感などが見られた。

冷たい飲食を禁ずる。適度な運動を心がける。日の出とともに起床するのがよく、そうすることで陽気を受け止める時間が長くなり、気を養うのに有利となる。

復溜が虚しているときは、干しシイタケを少量ずつ摂るのがよい。現代人は冷えていても、熱も同時に持っているので安易に温めると熱証を悪化させるが、干しシイタケは熱を助長しにくい良い食材である。

多食生冷寒凉,可损伤脾胃阳气,寒湿内生,《中医基础理论》
【訳】生ものや冷たいもの・寒凉の性質をもつ品は、脾胃の陽気を弱らせ、寒湿を内生する。

乾きの場合は、右血海などに虚の反応が出る。後渓など邪熱を示す穴処も付随して反応が出ることが多い。

症状としては、後ろ向きなメンタルの状態・メンタルを主要原因とする痛みが複数見られた。

夜ふかしを禁ずる。朝は明るくなるとともに起床して、夜の入眠を前倒しで早くする。早く起きると早く眠くなる。

midnightは深夜0時である。この時間を起点としたその前後がもっとも陰が深く、この時間に人間の動力 (陽) は、陰 (燃料) と合体してよみがえり、日中のやる気と活力を養う。午後9時以降の睡眠はこの力が大きく期待でき、午前3時以降の睡眠はこの力があまり期待できない。

夜半而大會.萬民皆臥.命曰合陰.《霊枢・營衛生會18》
【訳】midnightは 陰陽が重なり抱き合うときである。万民はみな眠る。名付けて合陰という。
※合陰… 子の刻 (重陰) に陰陽がピッタリ合わさること。

木々はこれから枝を伸ばし葉を並べて大きく成長する。

人間も、日の出に起床して、散歩など適度に体を動かし温める (陽を養う) ことが大切である。自然の樹木が、明るくなっても暗いフトンの中にいたとしたら、光合成できる時間が少なくなって損をする。自然のサイクルを重視する。

またクリスマスだ正月だと冬にエネルギーを使いすぎた (狂い咲きした) ならば、「冬 (陰) の力」を損ねた代替として、早く就寝して「midnight (陰) の力」をチャージしておく必要がある。

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