雨の日の体調変化

梅雨ですね。

雨が降ると体調を崩す方がおられます。
体が重くなって動けなかったり、気が重くなってネガティブになったりする方は多いのではないでしょうか。

外湿が内湿を刺激する

雨天時の体調不良は、多くは湿邪が原因です。湿邪には内湿と外湿とがあります。内湿が元々ある人は、雨で外湿が増えるとその刺激をうけて内湿が盛んとなり、体調に影響が出ます。
重苦しさ・重痛さ・重だるさが特徴です。

  • 内湿… 痰湿のこと
  • 外湿… 外の湿気のこと

たとえば、家の中 (内側) がもともとジメジメしていれば、家の外 (外側) の湿気が増すと、ますます中がジメジメしますね。戸締まりができていてもそうなります。もし、もともと家の中に湿気がなければ、戸締まりさえキチンとしていれば中はカラッとしたものです。

よって、内湿がなければ外湿の影響 (刺激) は受けません。内湿があれば外湿の影響 (刺激) を受けます。

内湿 (痰湿) があるのは、原因の多くは食べ過ぎです。長い間の蓄積が体質を作ります。ふだんから気をつけたいですね。食べ過ぎると痰湿が器 (脾胃の許容量) から溢れ出し、ドロっと下にこぼれます。それがドテッとした重苦しさ・重痛さ・重だるさを生むのです。

食べすぎていなくても痰湿ができる場合があります。
>> https://sinsindoo.com/archives/two-qi.html#食べすぎていなくても

しかし、内湿が関係しないのに、雨天時にしんどくなる場合があります。

どういう場合でしょうか?

外風が内風を刺激する

雨の日は休日

そもそも人類は雨の日は屋内でジッとしていました。洞窟で雨露をしのいでいた時代から、雨の日は休息日でした。約20万年前に誕生したホモサピエンスは、その間ずっとその遺伝子を受け継いできています。
晴れた日は外に出て活動的に狩猟・採集・農耕などを全力でスピーディー (陽) に行いました。
雨の日はそれにブレーキがかかって静か (陰) に過ごすというサイクルです。

この陰陽のサイクルが生命をはぐくみます。

ところが現代は、雨でも関係なしに仕事ができるようになりました。これは大きな変化です。移動は車で、仕事は屋根のある大きな建物で。

ですが、20万年も続けてきたサイクルは簡単には変わりません。晴れの日のスピーディーさとともに、雨の日のブレーキが効いてしまうのです。

湿気のブレーキ

それでも、仕事は待ってくれません。雨の日であっても、晴れの日と同じスピードを要求し、背中を突き動かしてきます。そのスピードで、湿気のブレーキがかかる。この場合、湿気は雨が降る前から増えてきますので、雨が降る前 (低気圧の接近) からブレーキがかかるのが特徴です。

湿気は摩擦力を強くしますね。急ブレーキがかかってしまう。つまり、すごいスピードで走っているところに、段差に足をひっかけて、つまづくようなものです。スピード (陽) とブレーキ (陰) の落差が大きければ大きいほど、派手につまづきます。

スピードが出ていなければ、つまづくことなく歩き続けます。これが雨天前 (低気圧の接近) に体調を崩す人と、何ともない人との差になります。

この陰陽の落差が大きければ大きいほど、巻き起こるものがあります。

風 (ふう) とは

それが「風 (ふう) 」です。

気象では、前線が通過するときに必ず風が吹きます。

前線 (寒冷前線や温暖前線) が通過すると風が吹くのは、高気圧と低気圧の落差が大きいからです。高い山から低い谷に水が流れるように、山が高ければ高いほど、谷が低ければ低いほど、水流は急流となります。気流が急流となる、つまり風が吹くのです。

風が吹くと雨が降ります。

低い谷 (低気圧) に気流が流れ込むと、そこにあった空気は上に押し上げられて上昇します。上昇すると、上空で冷やされて水蒸気が水滴になり、雨が降ります。 >> 急に寒くなるときは、大陸の冷たい高気圧 (寒気団) が南下して、そこにあった暖かい空気の下に潜り込んで押し上げ、空気が上昇します。急に暑くなるときは、太平洋の暖かい高気圧 (暖気団) が北上して、そこにあった冷たい空気の上に這い上がるように昇り、空気が上昇します。

いずれにしても低気圧が近づくと、暖気が寒気の冷たさに反応して、湿気が増えます。

風とは、落差です。乱気です。
急ブレーキの衝撃による波風です。
つまづいたときの心の波風です。

その急ブレーキで、脇が開く。
体を覆っていた鎧 (よろい) のスキマが開くのです。
家を守っていた雨戸のスキマが開くのです。

つまり衛気が乱れる。乱気。

そのスキマをねらって、外から「風」が吹き込む。スキマ風です。気を乱し、いても立ってもいられないシンドさが襲う。
ついでに湿気 (風湿) も入る。風といっしょに湿気が体内に入るのです。だから湿証が起こる。体や気持ちが「重く」なるのです。

  • 内風… スピードの出過ぎ (疏泄太過) に急ブレーキ (疏泄不及) が加わった衝撃 (落差) のこと。このとき心にも波風が立つ。
  • 外風… 天候・気温・湿度などの急な変化 (落差) のこと。このとき強風が吹くこともある。

もともとスピード過多で、急ブレーキで内風がおこると、これが外風 (低気圧の接近) に刺激されて内風が盛んとなり、「落ち着かない症状」が出ます。症状は一過性で、天候が落ち着くと消失します。段差でつまづきますが、コケずに持ち直した状態です。

さらにスピードが出すぎていると、内風と外風が手を結んで体内に風が吹き込みます。その風とともに外湿が体内に侵入します。非常に激しい症状となります。段差でつまづき、コケて怪我を負った状態です。怪我をしてしまうとすぐには治りません。天候が回復しても症状が長引きます。

晴天ならば制限速度60kmの広い道路も、雨の日は制限速度30kmの細い道になると考えるとわかりやすいでしょう。急に細い道に入ったことに気づかずに、60kmで走り続けるとドライバーは同じスピートで走っているつもりが、スピードオーバーになる。梅雨ともなるとそれが連日に及ぶので、晴天と同じスピードで走り続けるとスピードオーバーで引っかかる確率が高くなるのです。

雨が降る前、降った後

  • 雨が降る前 (低気圧接近時) に出る症状は、おもに内風に原因があります。この場合は雨が降り出すとマシになります。雨が降らなくても、湿気増加や風が吹いたり止んだりといった「落差」でしんどくなります。外風が内風を刺激します。降り始めると湿気は多いままとなり風もやみ、落差がなくなるので症状が消えていきます。
  • 雨が降ったら出る症状は、内湿が原因です。この場合は雨が降る前は症状があまりでません。外湿が内湿を刺激します。
  • 雨が降る前から雨が止むまで症状が見られる場合は、内湿も内風も原因になっています。低気圧接近 (外風) が内風を刺激します。次いで、雨 (外湿) が降り出すと内湿が刺激されます。
  • 雨が降る前後から激しい症状が発症し、雨が止んでも症状が持続した場合、内風と外風が結びつき、外風と外湿が体内に侵入したことが考えられます。外湿も入るので「重苦しさ」も加わります。

内湿は、足三里に注目します。
内風は、左行間に注目します。今のスピードを10としたら、8に落としましょう。
内風によって外風+外湿が侵入した場合は、急激で大きな悪化を見ます。右行間に注目します。

▶ツボは診断点

足三里・行間を、ぼくは治療点としては使っていません。診断点として使っています。いずれも、実の反応がみられます。
“よし、腹八分目にしてみよう!” という決意がつけば、足三里の実の反応が消える。
“よし、動くスピードを10から8に落としてみよう!” という決意がけつば、行間の反応が消える。
ツボの反応が消えれば (その決心がつけば) 、その場で症状が消えてしまうことは、僕の臨床では珍しいことではありません。

まとめ

低気圧が近づく雨天前に体調を崩す。
雨が降り始めたら体調を崩す。

食べ過ぎを控えましょう。器からあふれるかあふれないかは大きな違いです。
ほんの一口、多いとあふれる。
ほんの一口、控えるとあふれない。

スピードを落としましょう。つまずいてコケるかコケずに済むかは、大きな違いです。
ほんの少し、スピードが出ているとコケる。
ほんの少し、スピードをひかえているとコケない。

スープが溢れたら、机をどけたり敷物を洗濯したりの大惨事になる。
つまづいてコケたら、膝やオデコから流血の大惨事になる。

ほんの少しの気遣いが大きいのですね。

そもそも雨はや湿気は敵ではありません。雨は陰です。陰とは「うるおい・やすらぎ・おちつき」です。現代社会に最も足りないもの、我々はパサパサに乾いたスポンジのように、これをはじき、こばみ、受け入れられなくなったのでしょうか。

食べ過ぎに気をつける。
スピードに気をつける。

慈雨の恵みをたっぷりと味わいつつ、しっとりとした時間を過ごしたいですね。


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