ドイツに来て一番驚いたのは、初めて風邪を引いた時。医者に「薬をください」というと「薬は出ません、風邪で必要なのは薬でなく休養。診断書を1週間出しますので仕事を休んで寝てなさい」とハッキリ言われた。「診断書はいくらですか」と聞くと今度は医者がめっちゃ驚いてた (ドイツで診断書は無料)
https://togetter.com/li/1283396
いろいろ調べてみましたが、この記事内容は本当のようです。
>> ドイツ風邪薬出さない理由 [1][2][3]
>> ドイツ診断書無料
ドイツなどでは、軽いカゼであれば自然治癒力に任せるべきだという風潮があるようです。
カゼそのものを治す薬はないと言われます。
というのも、カゼの90%はウイルスによるものであり、ウイルスを殺す薬はないからです。
カゼを治す薬がない。では、どういう薬があるのかというと、みな症状を和らげる薬です。症状が和らいで、ゆっくり休めればいいですね。このドイツの医師が言うように、必要なのは “休養” だからです。休養を取るために薬を用いる。正しいことです。
しかし、かりに症状が和らいで、ディズニーランドとかユニバとかに遊びに行ったならば、やぶ蛇です。 “休養” とは逆に、遊びに行くために薬を用いる。これが正しいことなのかどうか。
症状がひどくなければ、症状を和らげる必要はありません。かえって、すこし「だるさ」「しんどさ」などの症状があったほうが “休養” が取りやすくなりますね。ウイルスがまだ元気なのであれば、ディズニーランドに行く元気は無いほうがいい。下手に症状が和らぐと、ついはしゃぎたくなるのが人間というものです。
カゼを引くと動けなくなったり食べられなくなったりしますね。これは、カゼを引く前に動きすぎていたり食べすぎていたりするからです。カゼを引くと正気に戻るので、過去の行き過ぎを埋め合わせしようとするのですね。普段から落ち着いて生活していれば、埋め合わせの必要はありません。だからカゼも引かないし病気にもなりません。普段から落ち着きがなければ (正気を失っていれば) 、動きすぎや食べ過ぎに気付かぬままに体に負担をかけ続け、過ちを犯し続けます。過ちがあるならば、つぐなって埋め合わせする必要があります。
そもそも、不必要であるならば薬は服用してはなりません。なぜ服用してはならないかというと、体に負担をかけるからです。体のどこに負担をかけるかというと、肝臓です。
肝臓は、口から入ってきたものを、人体組織に変えたり、解毒したりする働きを持っています (≒東洋医学の脾) 。 口にしたものは必ず、肝臓という関所で処理が行われるのですね。だから処理に手間のかかるものは負担になります。たとえば、アルコール性脂肪肝炎や非アルコール性脂肪肝炎、そして薬物性肝障害です。
- アルコール性脂肪肝炎…アルコールの飲み過ぎ。アルコールが大量だと処理に手間がかかる。
- 非アルコール性脂肪肝炎…アルコールでないもの (=食べ物) の摂りすぎ。食べすぎると処理に手間がかかる。
- 薬物性肝障害…薬の飲み過ぎ。飲み過ぎると処理に手間がかかる。
このうち、アルコールや薬物は、体の組織を作るのには不要です。だから、できるだけ少ないほうが肝臓の負担にならないということになります。
そもそも肝臓は、食べ物から人体を作ります。脳も、血管も、神経も、目の玉も、内臓も、手も足も、そして免疫細胞も、人体とは何もかもが食べ物 (他生物のタンパク質) から作られるということを考えてください。他生物のタンパク質のままでは人体になりませんので、どこかで人体のタンパク質 (10万種類あるといわれる) に変えているのです。それが肝臓なのですね。原子レベルの分解と再結合を行って、ヒトの各種タンパク質や、その元になるアミノ酸を作っています。
つまり、肝臓が疲れてしまって「できのいい仕事」ができなくなったら、人体も「できのいい組織」を作れなくなってしまう。「できのいい免疫細胞」も作れなくなってしまう。こうして人体は「できの悪い状態 (=病気) 」になって行くのでしょう。できの悪い製品が生まれるのは、できの悪い製造元を疑わなければなりません。
免疫細胞がやっつけてくれるのはウイルスだけではありません。ガンなど、様々な病気をやっつけてくれるのです。
肝臓 (肝細胞) が疲れているかどうかは、数値ではわかりません。数値 (AST・ALT・γ-GTP) でわかるのは、肝細胞がどれだけ死んだかです。「死にそうに疲れている状態」は、まだ死んでいないので、うかがい知ることはできません。
知らぬ間に肝臓が疲れて、できの悪い人体しか作れなくなっているとしたら…。
根本的に考えた時、「人体の生みの親」である肝臓が健全でないと、健全な人体にはならないと考えられます。ところが、この「根本的」ということを考えるのが、我々はどうも苦手なようです。だから「その場しのぎ」という方法を考えたがります。
一般的に世の中は、この「その場しのぎ」というものを、悪いことであるとみなします。たとえば企業経営であれば会計が大切ですが、健全な経営をしている会社は「その場しのぎ (決算のごまかし) 」を決してしません。役所であれば「その場しのぎ (文書の改ざん) 」は悪いことであると言う常識があります。こういうことをやれば、罰せられる可能性すらあります。
「その場しのぎ」はその時はよくなるのですが、長期的に見ると悪い結果をもたらします。だから法律で処罰されるのですね。
この常識を、もっと医療でも取り入れるべきです。だから、このドイツの医師は「その場しのぎ」を用いないのですね。目先の利に走らず、長期的に見て重要である「安静」を選択したのです。学ぶべき点が多々あると思います。
ただし注意すべきは、命の危険に際しては「その場しのぎ」が最も重要な医療になるということです。命あっての物種、とりあえず命をとりとめなければ始まらないからです。時と場合によって使いこなす。さじ加減とはこのことです。
命に関わる差し迫ったものでなければ、最も重要な医療は「安静」です。
カゼのように数日経てば治る病気ですら「安静」なのです。他の治りにくい病気 (あらゆる慢性疾患) において、それが必要ないなどと誰が言えるでしょうか。
薬が “やぶ蛇” にならない「適切な用い方」こそ重要だと言えるでしょう。
細菌を殺す薬はあります。抗生剤です。日本ではカゼに抗生剤が出されることがありますが、細菌によるカゼは10%に過ぎず、それ以外の90%には無効です。だからカゼに効く薬はないと言われるのです。もちろん10%の細菌によるカゼであれば有効なので、区別をつけることが必要になります。じっさいに区別をつけている医師を見学したことがあるのですが、痰などを採取してシャーレで数日培養して細菌を確定していました。「なぜみんな先生のようにしないんですか?」と聞くと「めんどくさいんでしょうね」とのこと、この方はNHKの取材も受けておられました。抗生剤を乱用すると耐性菌が生まれるので、国際問題になっています。このままでは抗生剤が効かなくなる日が来るのです。それでも抗生剤を出す医師が後を絶たないのは、薬を欲しがる患者側にも問題があります。抗生剤を出さない医師を信頼する風潮があれば、そういう医師は淘汰されていなくなるはずです。結果として正しい医療が行われ、耐性菌の脅威からも身を守ることができるのです。