腎臓の難病 (ネフローゼ症候群) … その後、何が起こったか

たった一度の治療、たった一本の鍼で、尿タンパク4.52が、0.78にまで下がった症例を、かつて本ブログで紹介した。

「これ見てほしいんですけど、信じられないことが起こったんです…。」
「え? …どこ見たらいいんかなあ。」
「ここなんですけど、0.78まで下がってるんです! いままでゼロ台なんか見たこともないのに! 何をしたって入院したって、ゼロ台なんか一度もなかったんです! なんでこんなことが起こったのか考えてみたんですけど、なにか変わったことをしたとしたら、ここで治療を受けたことしか思い当たらないんです…。」
「ちょっと待ってね。前の数値を確認するから…。…ああ本当や、これは奇跡が起こったなあ。」
「私もそう思います! 主治医の先生は、 “これは僕にも意味が分かりません” って言っておられて…。」
「こないだがウチで初診で、その5日後が、たまたま病院の日だったんですね?」
「はい、そうなんです。」

むくみ… 指定難病222;ネフローゼ症候群の症例 より

指定難病222のネフローゼ症候群である。おそらく、専門家であればあるほど “ありえない” と、疑いの眼で見た方もおられたと思う。当然である。その後の経過がないからだ。検査のミスや機器の故障が考えられる。

当院初診は2022年8月27日 (女性・当時40歳) 。だが治療は計5回 (最終は9月16日) で途絶えた。遠方で通院が困難とのことであった。その後の経過を記せなかったのは、その理由からである。

その患者さんが、1年3ヶ月ぶりに来院された。2023年12月4日のことである。このとき、あれ以降の数値をいただいた。見れば、1年余で少しずつ悪化し、現在は5.73まで上昇している。

2022.01.27…2.46
2022.03.11…3.34
2022.06.02…3.37
2022.08.04…4.52
2022.09.01…0.78 (8/27当院初診、2診目9/2)
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2022.10.13…1.48
2022.12.08…2.21
2023.02.09…2.86
2023.04.13…2.83
2023.06.15…3.76
2023.08.24…3.72
2023.11.02…4.06
2023.12.01…5.73

罫線以下が、新たに頂いた経過である。
1回の鍼治療で0.78まで激減し、治療中断後、少しずつ少しずつ上がってきている。

そして、あらためて驚いた。実に1年以上、去年8月よりも数値の良い状態が続いていたのだ!

治療中断して1ヶ月後の1.48という数値に注目したい。これによって、激減した0.78がフロックやミスではなかったことがよく分かる。
また、初診時の数値 (4.52) まで再上昇するまで、1年以上かかっているということも特記すべきであろう。

じつは、治療する側の僕も、たった1回の治療 (検査日が初診の5日後) でこれだけ数値が良くなるとは思いもしなかった。

治療中断後は、その後の経過が非常に興味のあるところだったが、知ることは叶わなかった。今回、再来院されたことによって、鍼 (養生も含む) というものがいかによく効くものであるかを、まざまざと見せつけられたのである。

上グラフのアルブミンの数値にも注目したい。尿にタンパク (アルブミン;タンパク質の一種) が出てしまっているので、タンパク尿 (アルブミン尿) が出れば出るほど、血中のアルブミンは少なくなる。よってアルブミンの数値は高くなったほうが改善である。当院初診の一回の鍼治療の後、アルブミンの数値が2.5から3.0に回復している。これも、検査ミスではなかったことを示している。その後も診断基準 (3.0以下) を満たさない数値が12月まで続いている。

これも僕の想像を遥かに上回っていた。全5回 (初診8月27日〜最終9月16日) にすぎない鍼治療である。

このような、奇跡としかいいようのない事実を、中国伝統医学はその大きな懐のなかに隠し持っているのである。20年来の乾癬が3ヶ月でほぼ完治を見た症例といい、遺伝子異常であり指定難病でもあるオスラー病の症例といい、想像以上の力量をこの医学は持っている。現代医学の手厚い治療を受けつつ良くならない病気が、一気に良くなった実例がここにある。フロックではないことを証明するためにも、こういう症例をどんどん発表していかなければならないと思う。

こんなに良くなったのに、なんで来院 (こ) なくなったのかなあ…と思っていた。
こんなに良くなっていたら、来なくなるのも当たり前か…と思った。

仕切り直して、再度治療である。

過去をたどれば、2016年4月にネフローゼを発症し、その5月24日には尿タンパクが10.1、血中アルブミンは1.7まで悪化した経緯がある。いやが上にも慎重に診る必要がある。ネフローゼ症候群は、尿タンパクが3.5以上 (正常値は0.2未満) 、血液のアルブミン濃度が3.0以下 (正常値は4.0以上) が診断基準である。

現在、去年の4.52よりも数値が悪くなり、5.73である。5.00以上が入院のレベルとのことであるが、主治医と相談のうえ入院は見合わせている。切羽詰まった状況である。

尿がほとんど出なくなっている。1回量は大さじ1杯もない。
ほとんど尿意がなく、回数は1日4回。体重はこの数日で2kg増えた。

下肢全体がむくみ始め、階段を昇るとき鉛のような重さがある。手で触れると、趾尖から鼠径部に至るまで気の流れがない。

数値抜きで、去年よりも良くないのは明白。

あのまま治療を続けていれば…との思いは消し難い。「流れ」というものは臨床でも本当に大切なのだ。一度手放すと、二度と戻ってこないことがある。

だが、今それを言っても始まらない。

明日も予約を取って帰った。あさっては水曜日で休診である。
その翌日の木曜日は再検査である。数値が下がっていなければ入院。
この2回の治療にいちるの望みをかける。

家庭もある。個人事業主でもある。
入院だけは避けたいとの思いがある。

今回は、治療を継続したいとおっしゃっている。

二度目の奇跡は起こせるか。

二匹目のどじょうは今度も柳の下にいるだろうか。

(つづく)

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