太陽と「穴」…365の精を得る

さんさんと降り注ぐ陽光。

太陽とは陽である。われわれが求めてやまない光。

コロナ明けて以降、旅行に出かける人が増えた。
旅行に出かけるのも、太陽を求めているのである。

太陽とは、大空という空間に浮かんだ「たった一つの固い物質」である。

その太陽も、日暮れとともに西の大地に沈む。
「穴」に入るのだ。

「穴」とは、大地という固い物質に空いた「たった一つの空間」である。

われわれも、「穴」に入る。

そもそも子宮という穴に入っていた。
その穴から出てからも、布団という穴にもぐり込む。
そしていずれ、墓穴に入るのである。

穴に入っては生まれかわり、光を求めては人生という旅路を行き、そしてまた穴に入り、また朝が来れば生まれ変わる。毎日毎日、穴に入っては生まれ変わる。365日、それを繰り返すのである。

西の大地に没し、東の大地から出る…太陽がそうであるように。

太陽と穴とは、陰陽関係である。ほぼ12時間おきに、穴に入ったり出たりする。悠久の時を旅してきたホモ・サピエンスは、その多くの時代をそうしてきた。日没とともに穴 (洞窟) に入る。日の出とともに穴から出る。

現代人は、布団という穴になかなか入ろうとしない。深夜0時にしてなお、光 (電灯) を求める。

光を求める。求め過ぎる。
旅を求める。旅に出る。旅路を急ぐ。

出てばかり。出づっぱり。

その結果、太陽が照りつける。激しく、イライラと。
干上がった大地を、なおも照りつける。
イライラと激しく照りつける。

だから、みんなイライラしてる。
あるいは、オーバーヒートしているのに気づかない。
スピードオーバーに気づけない。老いも若きも。

求めてやまない太陽。元気。
ただし、求めすぎると熱にやられる。焼けこげる。

イライラも少陽病ではある。初期ガンや動脈硬化 (脳梗塞の初期段階) なども、症状を遥かに上回る邪気に犯され、イライラと生き急いでいる。
しかし、真の少陽病は “黙々として飲食を欲せず” である。つまり、いじけているのである。いじければ、穴に入ってジッとしていたがる。穴でジッとしていると、やがて生まれ変わる。イライラしたままでは治らない。いったんいじけなければ (静かにならなければ) 、少陽病は治らない。

あらゆる病気は、穴に入って休むことにより治癒する。
最も治りやすい病気である “カゼ” も、休んだら治るではないか。
病を得て床に臥せるのは、穴に入りそこねた分を取り戻す時間である。
カゼでさえ3日はかかる。重病になるほど長くかかる。

それを、より速やかにする。
鍼である。
鍼を、ツボに入れる。

経穴 (ツボ) とは、穴である。全部で365個ある。
そのうちの、たった一つの穴。
肉体という物質に存在するたった一つの空間」が存在する。

五臓六腑の5と6、経絡の12、経穴の365の謎に迫る
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その穴に、鍼 という「空間に存在するたった一つの固い物質」が入る。
精となる。
陰が養われる。陽が出生する。

精とは、静である。

ああこのしずけさ。おちつく。
やがて、元気を生む。

陰陽の転化。
すなわち昇降出入。精をれると元気がる。

たった一筋に理想を求めて成長すること。
これが元気である。元とは源である。

今日の雨も穴だ。
この闇も穴だ。

穴というのは、ってジッと休むところである。

明日の日のを迎えるために。
一点輝くあの理想をめざして成長するために。

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