さんさんと降り注ぐ陽光。
太陽とは陽である。われわれが求めてやまない光。
コロナ明けて以降、旅行に出かける人が増えた。
旅行に出かけるのも、太陽を求めているのである。
太陽とは、大空という空間に浮かんだ「たった一つの固い物質」である。
その太陽も、日暮れとともに西の大地に沈む。
「穴」に入るのだ。
「穴」とは、大地という固い物質に空いた「たった一つの空間」である。
われわれも、「穴」に入る。
そもそも子宮という穴に入っていた。
その穴から出てからも、布団という穴にもぐり込む。
そしていずれ、墓穴に入るのである。
穴に入っては生まれかわり、光を求めては人生という旅路を行き、そしてまた穴に入り、また朝が来れば生まれ変わる。毎日毎日、穴に入っては生まれ変わる。365日、それを繰り返すのである。
西の大地に没し、東の大地から出る…太陽がそうであるように。
太陽と穴とは、陰陽関係である。ほぼ12時間おきに、穴に入ったり出たりする。悠久の時を旅してきたホモ・サピエンスは、その多くの時代をそうしてきた。日没とともに穴 (洞窟) に入る。日の出とともに穴から出る。
現代人は、布団という穴になかなか入ろうとしない。深夜0時にしてなお、光 (電灯) を求める。
光を求める。求め過ぎる。
旅を求める。旅に出る。旅路を急ぐ。
出てばかり。出づっぱり。
その結果、太陽が照りつける。激しく、イライラと。
干上がった大地を、なおも照りつける。
イライラと激しく照りつける。
だから、みんなイライラしてる。
あるいは、オーバーヒートしているのに気づかない。
スピードオーバーに気づけない。老いも若きも。
求めてやまない太陽。元気。
ただし、求めすぎると熱にやられる。焼けこげる。
あらゆる病気は、穴に入って休むことにより治癒する。
最も治りやすい病気である “カゼ” も、休んだら治るではないか。
病を得て床に臥せるのは、穴に入りそこねた分を取り戻す時間である。
カゼでさえ3日はかかる。重病になるほど長くかかる。
それを、より速やかにする。
鍼である。
鍼を、ツボに入れる。
経穴 (ツボ) とは、穴である。全部で365個ある。
そのうちの、たった一つの穴。
「肉体という物質に存在するたった一つの空間」が存在する。
その穴に、鍼 という「空間に存在するたった一つの固い物質」が入る。
精となる。
陰が養われる。陽が出生する。
精とは、静である。
ああこのしずけさ。おちつく。
やがて、元気を生む。
陰陽の転化。
すなわち昇降出入。精を入れると元気が出る。
たった一筋に理想を求めて成長すること。
これが元気である。元とは源である。
今日の雨も穴だ。
この闇も穴だ。
穴というのは、入ってジッと休むところである。
明日の日の出を迎えるために。
一点輝くあの理想をめざして成長するために。
イライラも少陽病ではある。初期ガンや動脈硬化 (脳梗塞の初期段階) なども、症状を遥かに上回る邪気に犯され、イライラと生き急いでいる。
しかし、真の少陽病は “黙々として飲食を欲せず” である。つまり、いじけているのである。いじければ、穴に入ってジッとしていたがる。穴でジッとしていると、やがて生まれ変わる。イライラしたままでは治らない。いったんいじけなければ (静かにならなければ) 、少陽病は治らない。