先天の気・後天の気を補充するには

よいご質問をいただいたのでご紹介します。

【質問】
先天の気と後天の気が両方足りない場合、どうしたらいいか。
気を補充して体力をつけるには、どうしたらいいか。

【回答】
まず、ご存じない方のために、先天の気・後天の気について簡単に説明します。

先天の気 (腎臓) とは、卵子と精子が合わさって生まれた命のことを言います。これが尽きると寿命です。生まれつき体が弱いとか、幼少に何らかの症状があるとかは、みな先天が弱く生まれています。

後天の気 (脾臓) とは、先天の気を補い続ける栄養分です。胎児はへその緒から、出生後は口から取り入れます。

幼少期の症状 (禀賦不足・先天不足)

もともと生まれつき何らかの症状 (先天性股関節脱臼・脱腸・未熟児など) を持って生まれてきた人、あるいは幼児期に何らかの症状 (アトピー・喘息・頭痛・便秘なと) をもっていた人、こういうものを「禀賦不足」あるいは「先天不足」と言ったりします。

こういう人は、多くは生まれつき下 (先天) が弱く、その分、上が強くなっています。電車の一両目・二両目をイメージしてください。上が一両目、下が二両目です。二両目はガラガラで、その分、一両目がギュウギュウです。

このギュウギュウは緊張です。緊張は、熱に変化して上半身を中心に炎症を起こしやすくなったり、ストレスを感じやすくなったりします。また下の弱りは下半身の弱さとして出たりします。

ポイントは、一両目 (上=上半身) と二両目 (下=下半身) の継ぎ目です。この継ぎ目は “中” です。中はお腹であり消化器です。東洋医学ではこれを脾臓と言います。

つまり、継ぎ目がしっかりすると、一両目のお客さんが二両目に映ることができ、両車両とも仲良く座ることができるのです。継ぎ目をシッカリさせる、つまり脾臓 (後天の気) を強くする。そうすると下 (先天の気) が補え、しかも上、胸のあたりがスッキリするのです。

弱いと言っても弱いといっても残念に思う必要はなく、自分の体をよく知ってそれに合わせて生活すれば、強く生まれた人よりも健康で長生きすることができます。強い人は過信になるので良くない場合が多いですね。筋肉隆々のスポーツマンが短命に終わるというのは、ままあるケースです。

後天の気がカギになる

先天の気は後天の気によって補うことができます。つまり、後天の気を充実させれば、その余りが先天の気を補ってくれるのです。

これは老化にも同じことが言えます。老化は先天の気が弱ることによって起こるからです、

後天の気とは栄養のことを指すのではなく、「土」のことを言います。土は水分や栄養分を蓄えてくれ、通気性もありますね。人間の体そっくりです。土が少ないのに肥料 (栄養) ばかりを与えてしまうと、花は枯れてしまいます。いい土はフワフワで適度な水分と栄養分を蓄えています。

いい土はどんなものでも柔らかく受け止めてくれます。太陽が照り付けてもプールサイドのように急には熱くなりませんし、太陽が隠れたからと言って凍り付いたりもしません。大雨が降っても急に流れないようにしみ込んで保持します。大きく重厚な土には温かさと包容力があるのです。

この土のことを東洋医学では脾臓と言います。いかにこの土を豊かなものにしていくか、そのために必要な知識とは…それを一つ一つ勉強していくのが東洋医学です。

後天の気を養う

土だけではいい土にはなりません。樹木 (肝臓) があり、大気 (肺蔵) があり、太陽 (心臓) があり、水 (腎臓) がある。そういうなかで、分厚くフワフワで栄養分にとんだ、いい香りのする土が育てられます。

木が少なければ木を植え、空気が汚れていればそれをきれいにし、水が足りなければ適度な湿り気を与え、日差しが少なければそれを補う。脾臓だけを治そうとしても土は良くなりません。

こういう要素を理解することが、気を補充する手段だと思います。そのために、基礎から一つ一つ勉強していきたいと思います。

東洋医学を勉強しよう」をご参考に。

〇〇が体にいい…には注意

へたに小乗的なアドバイスをして、それでよくなったとしても、たぶんすぐに元に戻ります。小乗的なことを一つ一つ理解していくうちに、大乗的な本質が見えてきます。子供に、いい点を取る方法や、野球がうまくなる方法を一言で説明することは難しいですね。

それよりもまず、すぐに効果は出ないかもしれないが、漢字を一つ一つ覚える、素振りを一振り一振りこなす…というふうに基礎からやることです。その積み重ねの上にのみ、びっくりするようないい結果が期待できるのだと思います。

ただし、こう言ってしまうと根も葉もなくなるので、「自分でできる4つの健康法」というのをブログに上げています。日本人として、また自然のなかに生きる動物の一員として、当たり前のことを書いているので、期待外れかもしれませんが。

上の説明で、「後天の気は栄養のことを指すのではない」といいましたが、栄養をとればとるほど後天の気が増すわけではないという意味です。
教科書的には、後天の気とは飲食物から得られる栄養分と考えてください。
土という比喩を使った方が、栄養の摂りすぎ (食べ過ぎ) はかえって後天の気を損なうという説明がしやすいと思います。
植木鉢で花を育てるとき、肥料 (栄養) が多すぎると土がダメになって枯れてしまいますね。
五行説 (木火土金水) によると、脾臓は土に配当されます。

脾臓とは

いきなり脾臓という言葉が出てきて、混乱しそうなので補足させてください。
ここでいう脾臓は東洋医学的な脾臓で、西洋医学でいうものとは全く違います。もともと脾臓という言葉は2000年以上前からある東洋医学オリジナルの言葉です。肝臓とか腎臓とかもみなそうです。

現在は、違う意味で用いられています。

脾臓とは、簡単に言うと消化・吸収・全身への栄養機能をいいます。もっとかみ砕くと、概念が狭くなりすぎますが、消化器です。

東洋医学の五臓六腑とは何かを改めて知っていただきたいと思います。

五臓六腑って何だろう」をご参考に。

肝臓 (西洋医学の) には解毒作用があります。食べたものは小腸で吸収され、それは全身を巡らずに、門脈を通って、いったん肝臓に直送されます。そこで解毒されて、初めて純粋な栄養となり、心臓に送られて全身をめぐります。肝臓 (西洋医学の) がなければ、食物から栄養は取り出せないのです。

そう考えると、肝臓 (西洋医学の) は広義の消化器とも言え、脾臓 (東洋医学の) の一端を担っていると言えます。口が最初の消化器であるとすれば、肝臓は最後の消化器です。

木 (肝) と土 (脾) は切っても切れない関係です。自然界を見ていると確かにそうですね。木があって、初めて土には栄養分が宿り、水分を保持することができるのですから。

腹八分目に医者いらず

脾臓 (東洋医学の) がダメになると命 (先天の気) がなくなります。これは、肝臓 (西洋医学の) がダメになると命がなくなる…という部分と、このようにして重なると思うのです。

食べ過ぎると脾臓 (東洋医学の) がダメになる。
食べ過ぎると肝臓 (西洋医学の) がダメになる。

視点はちがうが、見ているものは同じだと思うのです。

肝臓 (西洋医学の) がダメになって解毒できなくなると、脳に毒 (アンモニアなど) が回って命がなくなります。肝臓 (西洋医学の) は沈黙の臓器とも言われますね。自覚なく、水面下で生命力は少しずつ弱ってきているのです。

東洋医学では、その弱りを脾臓 (東洋医学の) の弱りとして診断します。

その弱りを強くしていくのが治療であり、あらゆる病気を治すための土台になります。「腹八分目に医者いらず」とは含蓄のある言葉です。脾臓を強くするための基本となります。

生命力を雪だるま式に をご参考に。

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