数脈について

いいご質問があったのでご紹介します。

【質問】
私は脈が早めです。特に検査で引っかかったことはないけれど、頻脈傾向なのかな、と思っています。養生方法はありますか?

【回答】
頻脈は東洋医学では数脈と言います。あまりひどくないようですね。

養生法はその人その人で異なりますので難しいですが、数脈がなぜ起こるかということが理解できれば、すべきことは何なのか、自然と進むべき道が見えてくると思うのです。

ハッキリとした数脈はあまり良くない。気を付けなければなりません。なぜ数脈は気を付けなければならないのか、それを知ること自体が病気を未然に防ぐ「未病を治す」にもつながっていきます。

そういうわけで、数脈とは何かを考えます。

数脈は熱

中医学では、数脈は熱です。これが多い。

ドキドキすると脈が速くなりますね。あるいは運動すると脈が速くなります。心と体の「動き」と脈は深い関係があります。

そもそも心臓も脈も、太いか細いかの違いだけで本質は同じです。その本質は「陽動」つまり「動き」です。 人間で言えば、陽気で活発な人柄をイメージするといいでしょうか。こういう人は、ともすると熱すぎる。

つまり、陽動は熱と親和性が強いのです。

よって、邪熱 (実熱・虚熱ともに) は、すぐにこの陽動を刺激します。だから脈が早くなる。中医学で、数脈は多くは熱である…とするのはこういう意味があります。

過剰な感情の動き・過剰な体の動きも熱です。メンタルにもフィジカルにもオーバーヒートがあるのです。あとは暑さも熱です。高熱時も脈が早くなります。邪熱が陽動を過剰にし、そのおさまりが付かなければ、ドキドキが止まりません。

数脈は弱り

中医学では、数脈は陰・陽・気・血の弱りが原因で起こることもある…とも説きます。

陰陽気血といえば、つまり正気そのもので命です。胃の気と表現すこともできるでしょう。胃の気とはバイタルにかかわる正気を表現するニュアンス、あるいは生命力の中心部分をいうニュアンスですが、たしかにそういうときにも数脈は見られます。死期の兆候として微弱な数脈がみられるのが極端な例です。

人無胃気曰逆.逆者死。<素問・平人気象論18>

心臓の陽動はいろんなものに支えられています。我々が「動く」ときもそうですね。地面がないと動けないし空気もいるし、いろいろ要ります。

要るものとは家です。心臓は家だと考えてください。そのなかに陽動という性格を強く持つ住民が住んでいます。その住民が神 (しん) です。心臓と神を合わせて心神と言います。家は、屋根 (陽や気) と、柱 (陰や血) でできています。

動悸…東洋医学から見た9つの原因と治療法 から引用

この家が丈夫でシッカリしていれば、神は安らかです。しかし、屋根に穴が開き、柱があやういと、もともと持っている陽動性が露わになり、落ち着かなさを露呈します。これが動悸の基本病理です。「動悸…東洋医学から見た9つの原因と治療法」をご参考に。

無症状の動悸

数脈にもし、こうした「症状」を伴わないならばどうでしょう。

そういう数脈は「無症状」の動悸…と言えます。

例えば子供が高熱を出す。脈をとると驚くほど早い。だからしんどい。だから動けない。
…だからジッとする。陰静が養われる。正気が回復する。治る。

もし、しんどさが出なければどうなるでしょう。

無症状である。しかし邪熱があったり陰陽気血の弱りがあったりする。
それは非常に危険なのです。
何かよく分からないが、脈をとると早い…という人は注意が必要です。

豊かな時間を

そんなつもりはないけれど、自分は知らぬ間に無理しすぎているのかな…、そういう意識で、自分自身に向き合う時間を持ってください。気が下 (臍下丹田) に下がります。

それは豊かな時間になるかもしれません。

自分と向き合う、体と向き合う
自分に向き合う。これを東洋医学的に言い換えれば、「心神」 が「肝魂」に向き合う姿だ。これは、反射的行動 (肺魄) に反映される。 心神と肝魂は表裏一体、協調して「こころ」を形成する。 反射的行動は、その人の「生活習慣」に大きく関わる

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