遅脈について

【質問】
若いころから徐脈で、24時間心電図によると普段は45回/分ほどで、睡眠時には30回/分を切ることもあります。運動をすると直ぐに疲れてしまい、休んでもなかなか脈拍が落ちつきません。睡眠を取っても疲れが取れません。どのように養生すればいいでしょうか。

【回答】
徐脈が問題です。東洋医学では遅脈と言います。
人により、養生方法は様々ですので、一概には言えません。ただし、遅脈がなぜ起こるかということを理解すれば、その人に合った養生法が見えてくるのではないかと思います。

もちろん、遅脈がなぜ起こるかということを理解するだけでも、膨大な内容を勉強する必要があります。ここではまず基本的なことしか言えませんが、それを足掛かりにして理解を深められたら…と思います。

遅脈の病理

まず、脈がなぜ動くかという生理です。「動き」というのは「東洋医学の気って何だろう」でご説明したように機能、つまり気です。

気は次の6つの作用に分けることができます。
①推動作用
②温煦作用
③気化作用
④防御作用
⑤固摂作用
⑥栄養作用

このうち、脈の「前に進む動き」は①推動作用に相当します。この推動が衰えたり、推動が邪気によって邪魔されたりすると、遅脈になります。これが遅脈の病理です。

遅脈は主に寒証を示す

質問者の方の症状をみますと、「運動をすると直ぐに疲れてしまい」とありますね。これは気虚 (気の弱り) とよばれる証候です。質問者の方は、推動の衰えがある可能性が高いです。

また、推動は②温煦作用に助けられています。温煦作用とは温める働きのことです。温かさが脈の動きを助ける、血を温かくすることによって血は流れやすくなるのです。

たとえば、食器の汚れを流し落とす時、冷たい水よりも、温かいお湯の方が、流しやすいですね。

遅脈の基本病理は寒証です。寒証が多いと考えたらいいです。

気の6つの作用 より転載

温めればよいわけではない

ただし注意があります。温かい方がよいと言って、熱すぎるお湯で洗うとヤケドをします。

温めた方がいいからと言って、体を無理に温めようとすると、邪熱が生じることがあります。この邪熱は、気の②温煦作用の仕事を奪い取って、脈を流れる血を熱します。

そもそも血は温煦の助けで動くことができるのですが、温煦を邪熱にとって代わられると、血が動きすぎて、血管を傷って飛び出し、出血してしまうことがあります。これを動血といいます。のぼせて鼻血が出るのなんか、これですね。

邪熱は必ずしも動血を起こすとは限りません。ただし確実なのは、様々な病気の原因になるということです。じつは、邪熱は遅脈の原因にもなります。

あらゆる邪気 (気滞・痰湿・邪熱・瘀血) は、気の①推動作用を邪魔します。推動ができなくなると遅脈になる可能性があります。遅脈は寒証と決めつけるわけにはいかないのです。

まとめ

推動も温煦も「気」です。なぜ気が消耗するに至ったのか、東洋医学を勉強しながら、自分を見つめていく…。その過程で、「気」が補充されていくことを願っています。

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