陰陽とは生命そのものです。小は受精卵から、大は地球まで、球形が生命の始まりです。
陰陽とは、陰と陽との交流です。陰が陽になり、陽が陰になり、終わりなく循環し続けます。
太極図 (陰陽太極図) は、「陰陽魚」と呼ばれる、白魚 (陽) と黒魚 (陰) からなります。白魚は黒い目を持ち、黒魚は白い目を持ちます。
黒い目は、陽中の陰です。陽にはそれを支える陰 (陽中の陰) が秘められているのです。白い目は、陰中の陽です。陰にはそれを支える陽 (陰中の陽) が秘められているのです。これらの目は奥深くに秘められたもので、本来は表面から見ることができません。
この図には上下がありません。だから円で描かれているのですね。宇宙から地球の北極を見た時、日本が上かアメリカが上かという議論と同じです。白魚が上に来たり下に来たり左に来たり、いろんな図がありますが、全て正解です。それぞれに意味があります。
太極図は平面図で描かれますが、本当は球形であると考えています。地球に地軸 (自転軸) があって、それを中心としてぐるぐる回転しているように、太極図も回転しており、「太極球」も回転しています。
地球にも「昼半球」と「夜半球」がありますね。日本が昼半球 (白魚=陽) の中にあるとき、アメリカは夜半休 (黒魚=陰) にあります。ぐるぐる回っているうちに、やがて日本が陰になり、アメリカが陽になります。太極図を理解するには、この捉え方が大きなヒントになります。
地球の昼半球と夜半球には、太極図のようなS字曲線はありませんが、これは太極図が右回転していることを図で表現しようとしているからです。「動き」を静止図で表現しているのです。「動き」というのは「陰陽」という概念が最も示したい要素です。
陽があれば必ず陰があり、陰があれば必ず陽があります。この様相を、抱き合う陰陽魚が示しています。一枚の紙があれば、必ず表と裏があるのと同じです。
陰陽って何だろう をご参考に。
たとえ今、陽が全面に現れ輝いていたとしても、それは見えざる陰の支え (内助の功) があってのことです。夜には、目には見えないが昼が地面の下に隠れています。昼には、目には見えないが夜が地面の下に隠れています。これが陰中の陽、陽中の陰で、陰陽魚の「目」がそれを表しています。太極図ではこの「目」が図示されますが、本来は隠れていて見えないものです。
球というのは、原始的な陰陽を説明するのに最も都合の良い形です。人体で言えば、五臓は実質臓器で、球形に相当します。六腑は管腔臓器で、筒形 (ドーナツ形) となります。五臓という基礎があって、六腑に発展していくのです。
五臓六腑って何だろう をご参考に。
奇恒の府って何だろう…東洋医学の解剖学 をご参考に。
まるで、受精卵 (球形) が細胞分裂して、やがて原口 (げんこう) を作り、口から肛門にかけての管を貫いて筒形となり、一人前の人体になるのと良く似ていますね。
東洋医学の「空間」って何だろう をご参考に。
回転は陰陽そのもの (働き) を示します。回転することによって命が大きくなっていくのです。もしかしたら、宇宙 (銀河) もこんなふうにできたのかもしれません。銀河も地球のように軸を中心に回転 (自転) しています。その真ん中にはブラックホールがあって、全体としては楕円だとも言われています。ブラックホールは、一度入ったら抜け出せない、光でさえも抜け出せないと言われます。だから黒く見えるんですね。まるで吸い込まれたら抜け出せない「鳴門の渦潮」のようです。
話がそれましたが、いま目の前にいる患者さんが、球形のフェーズにあるのか、筒形のフェーズにあるのか、それを分別することはとても大切です。ツボを使うにしても湯液を使うにしても、どちらのフェーズで用いているのかを分からぬままにやると、正しい弁証とは言えません。
中医学では、六経弁証でそれを重要視します。どちらのフェーズにあるかを、まず分類することが基本です。この2つのフェーズは陰陽です。つまり球形と筒形は陰陽なのです。筒形が太陽病と陽明病と少陽病、球形が太陰病と厥陰病と少陰病です。六経弁証を用いずとも、陽病 (六腑) と陰病 (五臓) を正しく区別することは、弁証の基本ではないでしょうか。これは八綱レベルで意識されなければならないほど、基本的かつ最重要の分類です。表裏・虚実を統括するレベルのものです。
球形では邪気を外に排出することができません。ですから補法が中心になります。とにかく陰陽を大きくする、そうすると管ができます。管ができたら、大便とともに邪気を外に排出することができます。管の内側は裏で、外側が表になります。裏ができることで表ができるので、表から汗とともに邪気を外に排出することができます。つまり、管ができることで瀉法が可能になるのです。
いかにして管を作るか。これは、いかにして陰陽 (太極球) を大きくすることができるか…と同じことです。
三陰三陽って何だろう をご参考に。
今の体が球形なのか筒形なのか。最も簡単な区別の仕方は脈診だと思います。平脈は必ず “管腔” つまり筒形です。この筒の中を水穀の精 (胃の気) が流れています。細脈などの幅のない脈は、細すぎて筒になれないため “実質” つまり球形です。位相幾何学的には球形の分類です。滑脈などの幅のある脈は、太いので “管腔” つまり筒形 (ドーナツ形) を保っています。しかし、これとても誰もができる判別法ではなく、非常に奥が深いものです。細脈を見誤って大脈としてしまうこともあります。安易には用いないでください。
東洋医学の脈診って何だろう をご参考に。
太極図が球形であるという証明をしておく必要があります。太極図は球形になる。そのためには、太極図の持つ意味をよく理解することから始めるべきでしょう。ナマの臨床は立体です。書物のような平面ではありません。立体的に理解することの重要さです。
図の通りにやれば、立体太極図は作れます。僕は大根と人参を使ってイメージを確認しました。オタク魂炸裂ですね。
驚いたことに表面には、人参色のハート形と、大根色のハート形が現れます。太極球は、黒と白のハートが抱き合うのです。ハート形が命を表すのは真実なのかもしれません。
球形は生命の始まりです。もしかしたら、宇宙もそうやって生まれたのかもしれません。太極図、そして東洋思想は、受精卵と宇宙を分けて考えません。