むずむず脚症候群…東洋医学から見た原因と治療法

【質問】
むずむず脚症候群になってしまいました。
統合失調症で、抗精神薬を服用しています。
煙草を止めれば少しはましになるので、止めれば治ると思っていても精神的に弱くて駄目な自分が情けないです。禁煙以外に何か方法はないでしょうか。
精神疾患のため、死に場所をさがしてさまよい、夜に保護された経緯があります。

【回答】
むずむず脚症候群 (レストレスレッグス症候群) は、脚 (下肢) を中心にムズムズするなど、独特の不快感覚を自覚するものの総称です。アカシジアという病態でもあります。

アカシジアと統合失調症の関係 (やさしい)
アカシジアと統合失調症の関係 (くわしい)

症状と原因

むずむず脚症候群に、よく見られる症状として、

・じっとしていると不快感覚がひどくなり、落ち着かず、足を動かしたくなる。
・横になったり、椅子に腰掛けたり、じっと静かにしていると症状が悪化する。
・午後、とくに夕方から夜間にかけて悪化しやすい。
・床につくと悪化しやすいため、睡眠障害が起こりやすい。
・足を動かすと不快感覚が軽減する。
・なでたり もんだり たたいたりすると不快感覚が軽減する。
・不快感覚は深部で自覚されることが多い。 “骨がかゆい” など。

不快感覚には、たとえば以下のようなものがあります。
・むずむずするような感覚
・電気が走るような感覚
・チクチクするような感覚
・ピクピクするような感覚
・足がでたらめに動く、けいれんする
・蟻走感 (虫が這うような感覚)
・かゆさ
・激しい痛み
・ほてり

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不快感覚の原因として、鉄分の不足などが考えられているようです。鉄分はドパミンの材料となるため、材料が不足することによってドパミンが不足し、神経伝達がうまく働かかないことによって発症するという説があります。

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ドパミンは、3大神経伝達物質の一つと言われます。

ドパミン不足は、パーキンソン病にも見られます。

  • ドパミン過剰… 統合失調症 →ドパミンを抑制する治療 (抗精神薬を用いる)
  • ドパミン不足… むずむず脚症候群・パーキンソン病 →ドパミンを補充する治療

抑制しすぎないように、補充しすぎないようにして治療するのですね。

抗精神病薬の分類とその特徴について | 豊中市 千里中央駅直結の心療内科 精神科 - 杉浦こころのクリニック
千里中央の心療内科 杉浦こころのクリニック(豊中市)は、働く人のための「こころの癒し」を専門とする北摂千里中央駅直結の心療内科・精神科のクリニックです。

東洋医学から見た分析

これを東洋医学のメガネを通して、擬人化してみましょう。

たとえば子供です。おさえつけるとすねる、おだてると図に乗る。どっちつかずの状態です。

東洋医学でいうと虚実錯雑ですね。虚を補えば邪気が元気になる。実を瀉せば気虚が起こる。虚と実の両側面があるのです。それぞれを見ていきます。

虚証としての むずむず脚症候群

まずは虚からです。

鉄を補うことは大切です。そして、それが体に活着し、体に収まる (身に付く) ことが大切ですね。体の中の栄養分のことを東洋医学では “血” と言います。

血が体に収まるためには、それ相応の大きさの「受け皿」が必要です。受け皿が小さいと、たくさん取り込んでも入り切りません。

その受け皿のことを、東洋医学では “陰” といいます。陰とは “水のような静けさ” “落ち着き” “うるおい” “クールダウン” のことです。じっとしている時というのは、いちばん楽でないといけません。元気の補充ができるからです。そのいちばん楽であるべきときが、一番つらいということは、元気が補充されてもそれを受け止める “陰” が足りないということです。

受け皿に入るのは、血だけではありません。気もそこに入ります。

受け皿が小さくて、気が入りきらない。気を受け止められないと、気が余ってしまいます。だから落ち着かない。はみ出した気はつかいものにならないものなのですが、気の特徴である “動” の性質だけはシッカリともっているので、無駄な動きに使われます。落ち着きなく動き回ったり、足をゴソゴソさせたりします。つい喫煙してしまうのもその範疇です。

無駄な動きをすると、気が減少・消耗しますので、陰との釣り合いが取れて症状が落ち着くのです。もともと気の絶対量が多いわけではなく、受け皿が小さすぎてはみ出てしまうだけなので、全体としては気が減っただけになってしまいます。これでは解決にはなりませんね。だからジッとするとまた再発します。

そのうえ、喫煙も含めた “無駄な動き” に行き過ぎがあると、受け皿の材料である陰 (落ち着き) をも、消耗させます。そうなると、ますます受け皿が小さくなって、ジッとして気を補充しようとしても、落ち着きがなくなるのです。

こういう病態は、虚証です。腎陰虚・肝血虚・脾気虚などで説明されます。
・腎陰虚…午後、とくに夕方から夜間にかけて悪化しやすい
・肝血虚…実働部隊としての血 (ドパミンを含む) の不足
・脾気虚…飲食物から血を生み出す力の不足

むずむず脚症候群は、以上のような各種の虚証の可能性があるのですね。どれが中心になるかはその人それぞれですが。

午後からの悪化、とくに “ほてり” は五心煩熱のカテゴリーに入ります。
五心煩熱とは をご参考に。

実証としての むずむず脚症候群

一方、
・じっとしていると不快感覚がひどくなる。
・足を動かすと不快感覚が軽減する。
・なでたり もんだり たたいたりすると不快感覚が軽減する。

こういう病態は実証です。気滞の症状です。

純粋な気滞なら、適度なウォーキングなどの運動療法によって大きく改善します。

気滞証 をご参考に。

虚実錯雑

しかし、純粋な気滞として治療しにくい…というところが、むずむず脚症候群の特徴です。

虚証と実証が錯雑しているからです。虚 (陰虚・血虚・気虚) を補えば “実証としての気滞” がひどくなり、実 (気滞) を瀉せば “虚証としての陰虚・血虚・気虚” がひどくなってしまうのです。

これが “おさえつけるとすねる、おだてると図に乗る” と形容したように、治療の高度なテクニックと力量を要する部分です。

質問者はタバコについて触れておられます。ニコチンは交感神経を亢進させ、不快症状を増幅させると考えられています。

レストレスレッグス症候群の特徴と治療法・薬剤の使い分け|Web医事新報|日本医事新報社
レストレスレッグス症候群の特徴と治療法・薬剤の使い分け

質問者は “タバコを止めるとましになる” と分かっていながらも、それができず、しかも “死に場所をさがす” ほどの精神的苦痛を感じておられます。

虚実でいえば、虚なら虚になりきれない。実なら実になりきれない。どっちつかずの苦しみです。

肝魂と肺魄

幻覚・幻聴

統合失調症の特徴である幻覚・幻聴は、肝魂 (無意識) が病んでいます。

東洋医学的には非常に邪熱が深い病態で、これも慢性的になるとほとんどが虚実錯雑です。血虚や邪熱が原因となることが多いです。

魂之為言,如夢寐恍惚,変幻游行之境,皆是也.<類経・臓象類>

蟻走感・異常感覚

むずむず脚症候群の蟻走感などの異常感覚は、肺魄 (感覚) に問題が及んでいます。

感覚は、肺魄が支配しています。たとえば、肺魄が弱いと痛覚などが鈍かったり脳性麻痺のように身体がうまく動かなかかったりします。

魄之為用,能動能作,痛痒由之而覚也.<類経・臓象類>

肝魂から肺魄へ

しかし、むずむず脚症候群の場合は、感覚が “弱い” のではなく、感覚が “異常” になっていますので、肺に邪 (邪熱) が入った、と考えます。その邪熱は何処から来たのかというと、質問者の場合だと、肝魂から肺魄に入ったと考えられます。肺に熱が入ると口渇が出るのが特徴です。

統合失調症が改善してむずむず脚症候群が出たのなら、肺魄に邪熱が移動したと言えるし、改善しないのに出たのなら、肺魄にまで邪熱が広がった…と考えられるでしょう。肝魂と肺魄は陰陽関係にあります。

魄対魂而言,則魂為陽而魄為陰.<類経・臓象類>

どちらにしても、蟻走感…蟻が這うような感じ…は、肝魂独特の “夢幻活動” すなわち幻覚・幻聴が、ハッキリとした感覚として顕現したものと考えられます。よってむずむず脚症候群の異常感覚は、肺魄だけの問題ではなく、肝魂由来の邪気が肺魄に影響したと考えられます。

たとえば舞踏病ともなると、 “身体的な動き” を伴うのですから、肺魄は関わります。同時に肝魂も関わるのは明白だろうと思います。

ただし、肝魂の影響が少ないものもあるだろうとは思います。たとえば “電気が走る感覚” は、しびれのカテゴリーに入るので血虚の影響も考えられます。

どの程度の精神的な乱れ・迷妄があるかで、肝魂の影響がどの程度かをどの程度かを見抜くことになります。簡単に言うと “何を言っているかよく分からない” という訴え方をする場合です。ヒュアヒュア〜とかピュ〜とか、イメージしにくい言葉を多用する場合は迷妄さがあります。こういうのは時間がかかります。 “骨がかゆい” などはマシな方です。

迷妄さがなければ、肺魄 (知覚) の問題を中心に考えることになります。軽いものだと、気滞 (肺気の留滞) を取っただけで大きく改善します。

治療方法

まず、陰血を補うこと。そのためにも目を使いすぎず、早く床につくこと。これが自然とできるようにするのが治療です。

陰血を補うには脾を大きくすることが重要です。そのためにも間食せず、腹八分で、規則正しい食事です。これが自然とできるようにするのが治療です。脾 (うつわ) が大きくなれば、食物から得られる栄養分が活着します。脾 (うつわ) が小さいのに無理に摂ろうとするとムカツキが出ます。

鉄を効率よく身につけるために、脾を大きくしておくのですね。

そして気滞・邪熱を取ること。そのためにもストレスをなくす。これが自然とできるようにするのが治療です。これがうまくできないと、補った栄養分が邪気のエサになってしまいます。

元気になったから深酒をする…ではよくない。喫煙もそうです。

得られた元気 (栄養分) が、夜ふかしや飲みすぎ食べ過ぎ喫煙しすぎなど、変なパワーにならないように。適度なウォーキングなどの正しいパワーになるように。変なパワーはいずれ元気を漏らします。正しいパワーは元気を活着させます。

気滞・邪熱の原因はほとんどが肝に行き着きます。肝を整えることが重要です。そのためにも正しい考え方・正しい好みをもつ。これが自然とできるようにするのが治療です。肝が整っていると、パワーは正しいこと (健康になること) にのみ使われます。

そして、最終的には腎・肺を整えることです。魄 (感覚) を整えるには、精を充実させること、つまり腎を充実させることが重要です。腎精が充実すれば、肺魄はおのずと正しく機能し始めます。

並精而出入者.謂之魄.<霊枢・本神 08>

タバコは無理にやめると気滞をひどくすることがあります。気滞がなくなればタバコはそう欲しくなくなります。「強制」は心身ともにいい結果とはならないので、僕はやりません。

虚実錯雑は複雑です。養生だけでなく、その場に応じたコンサルティングが必要であることは確かでしょう。

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