「はい、舌みせて。…はい、いいですよ。舌の色がいいですね。悪いときは白くなってるんやけど、ちゃんと赤みがあります。まあ、上手に生活しておられるのかな? 調子は?」
「うん、いいですよ。」
体調がいいので、最近、内職を始めた。チアリーダーの衣装を作る依頼が大学からきたらしい。心配していたが、この舌の色なら大丈夫だ。
4月の初診時に、肺兪を中心に20センチにも及んだ虚の反応が、半年たって消失している。だから動けるようになったのだ。
「忙しいけど、つかれたら ちょっと横になって、またやるみたいな感じです。ここの痛みさえなかったらなあ。」
腫瘤部分の痛みである。
「この痛みは大事やで。もしこれがなかったら、ずっとやってしまうやん? 末期ガンでまったく症状がないのはよくない。症状はブレーキやから…。ブレーキがなかったら、つらくないもんやから無理ばっかりするでしょ? そしてある日とつぜん痛みが出る。それはホントに突然なんですよ。とてつもない激痛です。あとはもう…。」
「わあ、そうなんですか。」
「この程度の痛みは悪い痛みではなく、いい意味でのブレーキなんですね。ウォーキングでは痛くないんでしょ? 無理しすぎたら教えてくれてる感じですね。こうやって、マメにブレーキを踏んでいれば、クラッシュしないんです。」
「ああそうか…、分かりました。」
「最近、ウォーキングはどう?」
「雨がよく降るでしょ。たがら飛び飛びになってるんです…。行くときはだいたい20〜30分かなあ。」
脈を見ながら…
「ああ、それでいいよ。雨のときは止めといてって言ってるもんね。一応時間確認しときますね。20分、30分、40分…。うん、できるだけ30分やるように、そしてそれを超えないようにしてください。」
「先生って体とお話ができるの?」
「うん、そうそう。できるんですよ。」
「すごいなあ。」
「僕がすごいんじゃなくってね。体がすごいんですよ。体って何でも知ってるから、言うとおりにしていると間違いないですね。」
「はい。」
「ガンとかいうと聞こえは怖い感じやけど、ガンの患者さんで30分もウォーキングしていいって人なんか なかなかいないんですよ? 」
「そうなんですか。」
「そうなんです。30分も毎日やれって体が言うってことは、これからもっともっと…、ご苦労さんやけどね、まだまだ頑張れってことや! 」
当院のみでの治療を望んでおられる。