リウマチ…東洋医学から見た9つの原因と治療法

リウマチは気象病

東洋医学では、リウマチを外邪 (気象の変化) によるものと定義しています。よく知られているように、急に寒くなったり、暑くなったり、湿気が増えたりすると、リウマチは悪化します。

気象の変化によって病状が左右されるものを気象病と言います。

◉気象の変化によって症状が出現する,あるいは悪化する疾患の総称。
◉代表的なものとして,天気痛 (天気が悪いと古傷がうずく) 、メニエール病、喘息、めまい症、うつ病、頭痛、腰痛、肩こり、神経痛、関節炎、リウマチ、じんましん、吐き気、心臓発作、脳出血などが知られている。
◉メカニズムの詳細は研究課程にある。

臨床に携わっていると、問わずとも、患者さんは、「気象の変化が原因だ」と、強く訴えてこられます。

原因は外邪

東洋医学では、この訴えを真剣に受け止め、3000年かけて病理機序・治療方法を整理してきました。気候変動を「外邪」と表現し、なぜ外邪が人体に影響を与えるかについて、人体側にも原因を求め、外邪の影響を受けやすい体質上の問題を解析してきました。

東洋医学では、リウマチをおこす原因は2つに大別できます。それは、「外感」と「内傷」です。外感は、気象変化や感染による病因のことで、たとえるなら敵軍です。内傷は、外邪以外の体を弱らせる原因のことで、たとえるなら城の守りを弱らせる内部の混乱…城そのものの問題ですね。ストレス・食べ過ぎ・無理のし過ぎなどがあります。

外邪という敵軍

我々の体にとって、外邪 (気候の変動) は敵です。敵は体内に攻め入るため、虎視眈々と付け狙っています。ただし、体の備えが万全であれば、敵はいくら強くとも攻め入ることができません。ところが、体の備えにスキがあると、敵はあらゆる策を弄して侵入してきます。気象の影響を受ける原因は、気候の急変だけでなく、受け手の体にも問題があるということです。

東洋医学の考え方は、物質を基礎とせず、機能を基礎とする考え方です。
詳しくは「東洋医学の気って何だろう」をご参考に

外邪とは主に、風邪・寒邪・湿邪のことです。

城vs.敵

人体には皮毛 (≒皮膚と体毛) という外の守りがあります。城でいえば外堀のようなものです。その奥には肌肉※があって、経絡や筋骨をガードしています。内堀のようなものですね。

もし、外邪が筋骨に侵入すると、筋の拘縮や骨の変形が起こります。経絡に侵入すると体力が大きく縮小し、気象の変化をますます受けやすくなります。筋骨や経絡は本丸みたいなものです。そこに敵が侵入しないように、皮毛や肌肉でガードしているのです。健康な人の場合、外邪の侵入があったとしても、肌肉までにとどまります。

肌肉と筋の違い

日本では「肌肉」は皮下脂肪、「筋」は筋肉と言われることが多い。しかし中国では、現代中国語で「肌肉」という言葉を筋肉という意味で現在も使っている。つまり解釈が統一されていない。

肌肉・筋ともに筋肉のことを指すと考え、その意味の違いを陰陽論で考えてみよう。可視化できる (陽) と可視化できない (陰) で分ければ、深浅という陰陽の基準が明確になる。 すなわち以下のように整理できる。

肌肉は、皮膚の奥にあるピンク色の組織。血色・肥痩・脂肪・筋肉が可視的に伺える部分。表面が肌。奥が肉。≒皮下脂肪・筋膜・浅層筋肉。肌肉は陽の領域なので色別・識別できる。一方、筋は体表からは伺い知れない深部組織。≒深層筋肉。筋は陰の領域なので色別・識別できない。ちなみに皮毛の「皮」はただのカワであり、血色はない。

経絡への侵入は深刻な問題で、経絡は臓腑につながっており、臓腑に邪気が至れば生命が危うくなります。リウマチで心膜炎,心筋炎などの内臓病変を合併して死にいたる場合はこのケースです。

外邪については、外邪って何だろう」をご参考に。 
経絡については、「痛み…東洋医学から見た7つの原因と治療法」に詳しくご説明しています。

外邪の侵入

1.風・寒・湿・熱

風邪 (ふうじゃ) は先鋒役です。とても器用で素早く、体の備えのわずかなスキをついてかく乱し、堅い皮毛の守りに風穴を開け、寒邪や湿邪が体内に侵入しやすくします。風邪は肌肉 (肌表) にとどまります。

寒邪は、風邪のようにスキをついて侵入するという器用なことはできませんが、風邪が開いた突破口からいったん皮毛に侵入すると、非常に強い攻撃力を発揮します。肌肉に侵入してとどまり、寒の性質により、気の持つ「温める機能」を凍結させます。「めぐらせる機能」は「温める機能」の後ろ盾があってはじめて機能します。よって、経絡を温めることができなくなり、経絡が不通となり、激痛が生じます。温めると一時的にましになります。

湿邪も、寒邪と同じく、風邪が開けた風穴から侵入します。湿邪単独では侵入することはありません。寒邪のような強い攻撃力とは対照的に、ジワジワしつこく相手を攻めます。肌肉にとどまり、陰湿な粘りは気の持つ「めぐらせる機能」や「温める機能」を低下させ、重痛が生じます。

これら、風・寒・湿が肌肉に侵入し、それが長期に渡ると、これら三つの邪は、熱邪に変化することがあります。また、急に暑くなったときや、暑さが長期に渡って続くときなど、熱邪が体に侵入します。これらの熱邪は、「めぐらせる機能」を激しく焼き尽くし、経絡が不通となり激痛・炎症を引き起こします。冷やすと一時的にましになります。

2.攻防の最前線

体が外邪に抵抗するための最前線は、皮毛の外にあるのが健康状態です。ところが、気象病の場合、最前線は肌肉まで後退しています。なので、これら風・寒・湿は、皮毛から侵入し肌肉にとどまります。この最前線を、あらゆる手立てをもって、皮毛の外に押し上げるのが治療の眼目です。

3.筋脈・経絡に侵入

これら風・寒・湿・熱の邪気が肌肉に長く居座ると、やがて筋骨に迫ります。筋骨を脅かした結果、筋骨は力を消耗します。これは、経絡という境界を軸とした陰陽消長の法則が働いています。つまり、陽の領域 (皮毛・肌肉) の病状がマックスになると、陰陽消長 (経絡という境界を軸としたシーソー) の法則が働き、陰の領域 (筋骨) の病になります。

また、風・寒・湿・熱が陽の領域である肌肉に長く居座ったり、陰の領域が弱ったりすると、陰陽の境界そのものが縮小します。陰陽の境界は経絡です。経絡は気血が満たされているところなので、境界が小さくなると経絡が弱り、気血が弱ってしまいます。気血が弱ると皮毛・肌肉のガードが弱くなるので、ますます風寒湿の外邪に侵されやすくなります。

以上、外感…すなわち外邪が人体に侵入する過程を、外邪サイドから追ってみました。

侵入されやすい体とは

次に、内傷…すなわち人体サイドの問題が原因で、外邪の侵入を許す過程を見てみましょう。たとえるなら、城の守りの問題です。攻めてくる敵が大したことがなくても、守りが穴だらけだと、簡単に敵の手に落ちてしまいます。

1.風邪に侵入されやすい体

些細なことでストレスを感じているとします。その場合、プラス思考で納得したり、体を動かしてストレスを発散させたりすれば完璧です。これが正しい条達 (みち) です。ですが、多くはそううまく出来ないものです。

心には波風が立ち、大きな動揺が起こります。それを何とかしようと、ある時は、ストレスと戦おうとしたり、怒りによって押し切ろうとしたりします。

ある時は、甘いものを食べて中和しようとしたり、あるときはアイスクリームやビールなどでオーバーヒートした心を冷やそうとします。しかし、これらは全て誤った条達 (みち) です。誤った道は、道なき道です。行き止まりになったり、戻れなくなったりします。

㋐ストレス

心の波風は体内の波風であり、これを内生の風邪といいます。これは外邪としての風邪と結びつきます。内外の風は呼応し、容易に風邪の侵入を許します。

㋑冷たい飲食

過度に冷たい飲食物を摂取すると、体内に急激な温度変化をもたらします。体温で温かい部分と、冷たい部分とが激しくぶつかり合う結果となり、ここに内生の風邪が生まれます。気象でも、温かい空気と冷たい空気がぶつかり合うと嵐が起こりますね。内外の風邪が呼応し、容易に風邪の侵入を許します。

㋒食べ過ぎ

外邪から身を守る働きのことを衛気といいます。消化器 (脾胃) で作られる水穀の精をもとにして、衛気は作られます。ですから、食べ過ぎて消化器に負担がかかると、衛気が急激に弱り、容易に風邪を始めとした外邪の侵入を許します。

㋓無理のし過ぎ

ストレスを無理に押し切ってしまうと、ストレスや疲れに反応できなくなってしまうことがあります。こうなると万事に無理をしがちとなり、体を支える土台 (腎臓) が弱り、衛気をうまく作れなくなり、風邪を始めとした外邪の侵入を許します。

≫「風邪とは」 (外邪って何だろう) をご参考に。
≫条達については「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。

2.寒邪に侵入されやすい体

ストレスと戦うには、常に緊張状態を強いられます。緊張状態は興奮状態であり、興奮がストレスを上回るレベルになると、「つらさ」を感じにくくなります。気で持っている状態ですね。当然、寒さも感じず、防寒が不十分となり、寒邪の侵入を許します。

また、常に緊張状態にあると体力が奪われます。結果として体を温かくする力まで弱り、体内の冷えは寒邪と結びつきます。内外の寒は呼応し、寒邪の侵入を許します。

≫「寒邪とは」 (外邪って何だろう) をご参考に。 

3.湿邪に侵入されやすい体

また、甘いものの食べ過ぎは、栄養分を含んだ水がモタモタした状態である痰湿を肌肉に生じる原因にもなります。痰湿は湿邪と結びつきます。内外の湿は呼応し、湿邪の侵入を許します。

また、常に緊張状態にあると体力が奪われます。結果として栄養分を循環させ代謝させる力まで弱り、痰湿を生じ、痰湿は湿邪と結びついて、湿邪の侵入を許します。

また、外邪 (風寒湿) 、特に寒邪を受けた状態だと、気の「温める機能」「めぐらせる機能」が弱り、体液が滞り、痰湿を生じ、さらなる湿邪の侵入を許します。

≫「痰湿とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「湿邪とは」 (外邪って何だろう) をご参考に。 

4.熱邪に侵入されやすい体

また、常に緊張状態にあると、熱を持ちやすくなります。たとえば、空気も圧縮し、緊張状態が続くと熱を持ちますね。緊張から熱を生むのは法則です。この熱を邪熱と言います。

痰湿がながく居座っても邪熱をもちます。これら邪熱は肌肉に熱を持たせ、風・寒・湿の外邪を火邪に変化させながら肌肉に引き込みます。もともと熱を持ちやすい体質の人は、とくに外邪の火化が起こりやすくなります。

このような邪熱・火邪を体にもっている場合、これらは暑邪 (暑さ) と結びつきます。内外の熱が呼応し、暑邪の侵入を許します。

≫「邪熱とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。
≫「暑邪とは」 (外邪って何だろう) をご参考に。 

変形はなぜ起こる

以上をふまえ、リウマチの変形のメカニズムを考えましょう。ポイントは風邪・火邪です。風邪はもともと自然界の風と同じく、浮揚する性質があり、普通、筋骨という深い部分には基本的には入りません。それなのに入る、というのには、以下のような原因があります。

一つ目の原因は、深い部分の弱りです。外邪が陽の領域である肌肉にずっと留まると、境界である経絡に負担をかけ、結果として陰の領域 (筋骨) にも負担がかかります。その結果、筋骨に先鋒役の風邪の侵入を許すガードの甘さが生じます。

二つ目の原因は、先に述べた誤った条達 (みち) です。この道に導かれるように、風邪は本来はいることのない筋骨に侵入します。これは、上空を吹く風が海底に侵入するようなもの。通常あり得ない方向に矛先が向かっている。このあたりは、西洋医学でいうところの免疫の暴走を彷彿とさせます。

風邪が筋骨に侵入するということは、もともと筋骨に内生の風邪 (心の波風) があるということです。内外の邪気が呼応して初めて侵入が可能となるからです。筋骨という深い部分の 心に波風がある…。無意識の乱れ・暴走です。免疫は無意識 (オートマチック) の協調性・統合性の上に成り立っているのですが、いまだその機序が分かっていない謎の機構です。東洋医学では無意識を魂 (こん) と名付け、長い歴史の中で治療してきました。古代には無意識という言葉はなく、魂と呼んでいました。

条達・魂については、「東洋医学の肝臓って何だろう」をご参考に。

話を戻します。
風邪が筋に侵入すると、風燥の性質により、筋は潤いを失い、拘縮が起こります。風邪が骨に侵入すると、風の自由奔放な性質により、骨本来の沈着さを失い、形体が崩壊し変形が起こります。風邪が先鋒として開けた風穴。そこに湿邪が入ると有形化して結節を生じます。また、気血の弱りや滞りにより、有形の邪気である瘀血が生じると、結節や変形を頑強なものにしていきます。

三つ目の原因は、陰 (水のような静かさ) の消耗です。風・寒・湿が肌肉に侵入し、それが長期に渡ると、火邪に変化することがあるのは前述の通りです。その結果、筋骨は熱に焼かれて陰を消耗します。筋が陰 (潤い) を失えば拘縮。骨が陰 (静止) を失えば変形となります。

治療は「通絡」という概念を使います。絡脈を通じる。「痛み…東洋医学から見た7つの原因と治療法」で図に示したように、絡脈は皮毛・肌肉・筋骨すべてに通じています。皮毛・肌肉・筋骨の邪気を取り去り、経絡を通じ、痛み・変形を取る。通絡とはそういう概念です。

内傷による痹病

ここまで、述べてきたのは外感 (気候の変動) による痹病です。しかし、外感が全く認められない、内傷の痹病もあります。この類の痹病のことを、名医・藤本蓮風先生は「肝鬱痹」と表現されていると思います。

産後、あるいは中年と言われる年齢層になると、生命の土台となる下部 (臍下丹田) が弱ってきます。しかし、上部は強いままなので、相対的に上がギューギュー詰めの満員状態となり、上部が緊張してくるという変化が現れます。今まではストレスとは思わなかった些細なことでも、上が緊張しているとストレスがさばけなくなり、強い気滞が生じます。

気滞は緊張なので、熱化し邪熱を生じます。熱化すると上昇気流が巻き起こり風邪を生じます。また、緊張を緩めるために甘いものやお菓子・麺類・酒類を必要摂取量を越えて食べてしまいますと、湿邪を生じます。湿邪が寒湿となれば寒邪を生じてきます。また、気滞は循環を阻害し、循環しなくなった部分は、部分的に気血が不足して陽気が不足します。陽気が不足すると寒邪が生まれるので、部分的な内生の寒邪も生じる場合があります。

これらの風・寒・湿・熱はすべて内生の邪気で、気滞から生じたものです。この邪気は外邪と同じように痹病を作っていきます。

朝のこわばり、スターティングペイン

先ほど、臍下丹田が弱るという話をしました。実はこの弱りが、リウマチの大きな特徴である「朝の手のこわばり」を解くカギになります。こわばりとは、硬くなってしまっているが、動いているうちにましになるというもの。これは病理的に見て明らかに気滞です。

しかし、ただの気滞であれば、毎朝決まった時間に出るということはあり得ません。もっとランダムに、出たり出なかったりするはずです。決まった時間に弱りが出るということは、シッカリとした弱りがあることを意味します。この弱りが、気・血のいずれのものかと言うと、気はランダムで血は固定的です。よって血の弱りと言えます。

つまり、気実血虚があるということです。気実血虚とは、すなわち気も血も両方病んでいる状態、つまり陰陽ともに病んでいる状態です。普通は陽が病めば陰がそれをカバーし、陰が病めば陽がそれをカバーしようとします。ところが、両方病むというのはやはり重症で、陰陽の境界がぼやけてきているからこのような現象が起こると考えられます。この場合、境界がぼやけるのは、陰陽の幅が狭くなってきているからです。

陰陽がともに病むと、正気・邪気のシーソーが動かなくなります。つまり、正気が増せば邪気が減る、邪気が減れば正気が増す…という法則が効かなくなるのです。すると、正気が増せば増すほど邪気も増す…という変則が生じます。朝は体力が一番ある時です。その時に邪気も一番多くなっているのです

気実血虚は、気虚気滞とも関わります。傷寒論私見…桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯〔62〕をご参考に。

朝起きが悪い

話のついでに考えます。朝起きが悪い…しんどくて動けない、というのは、一般的に気虚と理解されることがあります。これを気滞と考えてみましょう。眠りという静止の後で起こり、動いているうちにましになる。この点から見ると気滞です。朝という決まった時間帯にしんどい。この点から見ると、上記の朝の痛みと同様に血虚と言えます。気が動かなくなれば、気が足りなくななったのと同様の症状となるのでしょう。

夕方になるほどしんどい、というのは、一般的には血虚と理解されることがあります。もっと詳しく言うと、血が足りなくなり、血がなければ気は生まれないのですから、気血ともに足りなくなってくるからです。この、気が足りなくなるという部分で、しんどさを自覚します。ですから直接的には気虚が原因です。

では、どちらの方が重症なのでしょうか。

両者ともに言えるのは気血ともに病んでいるということです。これは陰陽ともに病むということ (陰陽同病=陰陽幅が狭くなり機能しない) と同義です。そのうえ朝のしんどさは、気滞は実、血虚は虚です。ですから虚実という陰陽もともに病んでいる…つまり二重に陰陽同病となっているのです。一方の夕方のしんどさは、気虚と血虚なので虚としてしか病んでいません。虚実という陰陽は機能しているのです。よって朝のしんどさの方がより重症であると言えます。

考えてみれば当たり前のことです。寝た後しんどいということ自体、おかしい。

スターティングペインも同様です。気滞ならば痛む条件はランダムになりますが、動くときに痛いということは、それ自体、虚があるということです。動くということは正気を使うことだからです。いっぽう動くとましになるということは気滞です。ゆえに気実血虚があると考えられます。

たとえば、起床時の痛みはないけれど、昼の散歩のしはじめは痛いとします。これはどういことでしょう。起床時は、一晩体を休めたために正気が充実しているため、虚の側面が少なく、昼の散歩は半日活動して正気がややくたびれたため、虚の側面が出てきたからであると考えます。こういうタイプの人は、起床時痛がある人と比べて、虚の側面が少ない人であると言えます。

いずれにしても、陰陽の幅を広げるということが、外感・内傷を問わず、リウマチを治すうえで不可欠だと考えられます。

9つの原因と治療法

前置きが非常に長くなりました。以上をふまえ、いよいよ本題にうつります。

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1.風邪偏勝

【解析】風>湿・寒。肌に留まる。

【特徴】遊走痛 (痛む場所が移動する) 。主に大関節。関節運動制限。痛み。だるさ。悪寒発熱を伴うことがある。舌に白苔。

【治療】風邪を取り除き、必要ならば湿邪と寒邪を取り除きます。
外関・申脈・身柱・陰陵泉・陰谷など。
漢方薬なら桂枝加附子湯・防風湯など。

2.寒邪偏勝

【解析】寒>風・湿。肌に留まる。

【特徴】患部に熱感なし。固定痛 (痛む場所は移動しない) 。関節運動制限。比較的激しい痛み。急な痛み。温めるとまし。患部は腫れても赤くならない。舌に白苔。苔は潤っている。

【治療】温めることにより、通じなくなっためぐりを復活させ、寒邪を散らします。必要ならば風邪・湿邪を取り除きます。
外関・申脈・三陰交・志室・身柱など。
漢方薬なら烏頭湯など。

3.湿邪偏勝

【解析】湿邪>風・寒。肌に留まる。

【特徴】痛みが頑固。固定痛。皮膚の痺れ・感覚麻痺。手足が重く動きにくい。雨で悪化。腰背が冷えて重い。舌に白苔。
もやもやして胸苦しく、吐き気を伴うこともある。気分もダラーっとする。

【治療】めぐらせる機能を助け、湿邪を排除します。必要ならば、風邪・寒邪を取り除きます。
合谷・外関・申脈・三里・陰陵泉など。
漢方薬なら薏苡仁湯など。

4.熱邪偏勝

【解析】熱邪>風・湿。熱邪は肉に、風邪は肌に、湿邪は肌・肉にまたがって留まる。風寒湿の外邪がながく肌にとどまり、火邪と化して肉に侵入。
脂っこいものを過食して肉に邪熱を生じる。
ストレスなどの緊張から肉に邪熱を生じる。

【特徴】発赤。腫脹。熱感。関節痛。患部に触れると痛がる。温めると悪化・冷やすとまし。関節運動制限。舌に黄苔。口渇。心煩。尿黄。発熱。

【治療】熱を取り除き、経絡の通りを良くします。
督脈上のツボ・手の十井穴など。
漢方薬なら白虎加桂枝湯など。

5.湿熱流困

【解析】湿>熱。または熱>湿 (=火邪偏勝) 。肉に留まる。
肌の湿邪が化火しながら肉に侵入。
甘いもの・油濃いもの・おかきなどの食べ過ぎで肉に湿熱が生じる。
蒸し暑さ (湿邪・暑邪) が肉に侵入。暑邪は熱性で伝変が迅速なので、すぐに肉に入る。

【特徴】下肢の筋肉・関節に症状が出る。発赤。熱感。腫脹。重だるい。痺れ・感覚麻痺。力が入らない。歩行困難。
熱感よりもブヨブヨした感じが強く、下肢に出ていれば湿>熱。
熱感が強く上半身に出ていれば熱>湿。
舌に黄色い苔。口渇があるが飲みたがらない。口中に熱感。尿があまり出ていない。胸がモヤモヤして不安感 (湿>熱) 。小便黄濁 (熱>湿) 。

【治療】熱を取り去り、湿を小便として排出して、経絡の通りを良くします。
督脈上のツボ・陰陵泉・手の十井穴・照海など。
漢方薬なら四妙丸など。

≫湿熱については「湿熱とは…邪気のステージ」をご参考に。 

6.痰濁痹阻

【解析】痰湿が肉に留まる。
外邪が肌に侵入、肺臓・脾臓を損傷し痰湿を形成。
食べ過ぎによって、脾臓を損傷し痰湿を形成。
無理のし過ぎによって、腎臓を損傷し痰湿を形成。

痰湿形成の原因は「浮腫…東洋医学から見た5つの原因と治療法」の「 4.湿熱」で述べた「モタモタする水」の発生原因と同じです。ご参考に。痰湿があると、脾臓・腎臓を弱らせ、体力が弱り、体が外邪に抵抗するための最前線が後退します。結果として外邪の侵入を許します。

【特徴】筋肉・関節。腫脹。痺れ。疼痛。関節運動制限。舌に白く粘りのある苔。
①内科的症状。すなわち、胸腹の痞悶・膨満。味を感じない。むかつき。白く粘った痰。
②頭の症状。めまい (回転性ではなく、フラッと不安定になる) 。頭が重く、覆われたような不快感。

【治療】痰湿を取り去る治療を行います。必要に応じで風寒湿の外邪を取り除きます。
豊隆など。
漢方薬なら二陳湯・小青龍湯など。

≫「痰湿とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

7.瘀阻絡道

【解析】瘀血が筋骨に留まる。
気滞 (緊張状態) は瘀血を生む。瘀血がまた気滞を生み、気滞はストレスを感じやすい精神状態を生み出す。心の波風は毛・皮・肌に風穴を開け、新たな風寒湿の外邪を招き入れる。

【特徴】刺すような痛み。激痛。固定痛。押さえると痛い。腫脹。塊。舌は紫がかった色になる。
口乾。顔色暗黒。皮膚乾燥して光沢なし。

【治療】瘀血を取り去る治療を行います。
三陰交・膈兪・血海・臨泣など。
漢方薬なら桃紅飲など。

≫「瘀血とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

8.気血両虚

【解析】風・寒・湿・熱が陽の領域である肌肉に長く居座ると、陰陽の境界 (経絡) そのものが縮小し気血が弱る。ために外邪に抵抗するための最前線が後退、ますます風寒湿の外邪の侵襲を受ける。外邪は経絡に侵入し、気血の機能を阻害する。

【特徴】手足の関節のだるい痛み。皮膚の痺れと感覚麻痺 (夜に顕著:夜になると気血の運行が緩慢になる) 。運動後に症状軽減するのは邪気の強さを示す。

舌は赤みの無い白さ。苔は少ない。脾臓の失調による栄養不足。何か元気がない。
気虚…面白・気短・神疲・ジワッとした自汗。
血虚…動悸・驚きやすい (血が心を養わない) 。

【治療】気血を補う治療を行います。必要に応じて外邪を取り去る治療を行います。
外関・三陰交・照海・三里など。
漢方薬なら黄耆桂枝五物湯など。

9.肝腎両虚

【解析】陰の領域を支配する肝腎の弱り。風寒湿熱の邪気が筋骨に至る。風寒湿が長く陽 (肌肉) に留まると熱化する。熱は陰 (筋骨) を乾かし弱らせる。

【特徴】筋拘縮・骨変形。亀背。腰 (腎の腑) ・膝 (筋の腑) が冷えて痛む。関節屈伸不利。

頭暈。耳鳴。心悸して落ち着かない。
舌は淡紅 (あるいは淡白) 。苔少。
脈は沈細弱。
①肝血不足…淡白舌・細脈・眩暈・動悸
②腎陰不足…淡紅舌・沈弱脈・耳鳴
肝腎不足は①②の両方を兼ね備える。

【治療】陰 (肝血・腎陰) を補う治療を行い、筋骨に入った風邪・熱邪を取り去ります。必要に応じて温める治療を行い、筋骨に入った寒邪・湿邪を取り去ります。

照海・三陰交など。督脈 (太陽経・腎) をしっかりさせ、任脈 (陽明経・湿) を緩めると腰が伸びる。
漢方薬なら独活寄生湯など。

まとめ

リウマチは、これら9つの原因をすべて持っていると考えてください。ただし、9つのうち、必ずどれかが中心になっているはずです。それを主体的に治療します。どれが中心になるかは、患者さんによって異なります。また、季節によっても主体となるものが変わってきます。住んでいる環境にも左右されます。これらを把握し、変幻自在な治療を行うには、詳しく問診することが不可避です。

しかし、基本となる軸は不動のものです。リウマチは気候の変動やストレスなどによって悪化します。ストレスを受けると、些細な気候の変動にも影響されてしまうし、気候の変動を受けると、些細なことでもストレスに感じてしまいます。

要は、外邪に抵抗するための最前線を皮毛の外にまで押し上げること。最前線を押し上げるには、体力が必要です。体力を補いつつ、体力を弱らせる原因を除去し、体を和やかにする。体が和めば心も和み、ストレスを受けにくくなる。総合的に診ていくことが重要です。

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