てんかん…東洋医学から見た5つの原因と治療法

驚との関わり

素問の記載

今から2000年以上前の医学書、黄帝内経・素問に、すでにてんかんについての記載が見られます。素問によると、てんかんは「驚」との関係が深いとされます。

人、生而有病巓疾者.… 病名爲胎病.此得之在母腹中時.其毋有所大驚.氣上而不下.精氣并居.故令子發爲巓疾也.<素問・奇病論篇 47>

ここでは、生まれながらにてんかんを病む場合について述べられています。母親が胎児を宿しているときに、ひどい「驚」に出会うと生まれてきた子供がてんかんを患う。「驚」というのは、外からやってきた情報の大きな波です。これが「精神」を襲います。

精と神を侵す

精神は、普段は下焦 (臍下丹田) に鎮まっています。精とは体力のことで、防波堤のように神を守ってくれています。神とは「こころ」のことで、気 (機能) の最も高等なものです。

情報の大きな波が、防波堤を越えて、気に直接襲い掛かるのです。このとき、防波堤の一部が損壊します。一度損壊すると、そう高くない波でも、防波堤をやすやすと越えてしまいます。つまり驚が自覚できなくても、発作が起こるのです。

てんかん発作の原因

風と痰が清空を侵す

盖癇疾之原,得之驚,或在母腹之時,或在有生之後,必因驚恐而致疾。盖恐則気下,驚則気乱,恐気帰腎,驚気帰心。并於心腎,則肝脾独虚,肝虚則生風,脾虚则生痰。蓄極而通,其発也暴,故令風痰上涌而癇作矣。 <寿世保元・癇症>

神すなわち気は、もともと陽動性をもっていて、動き回ったり上に昇ったりしやすい。しかし、普段は精という丈夫な防波堤に守られているので、落ち着いています。ところが、防波堤を越えて波が気を襲うと、そのもともとの上に昇りやすい性格を露わにして、上に急上昇します。これを「風」と言います。自然界で言えば上昇気流のようなものです。

この上昇気流は、さまざまな汚れたものを一緒に巻き上げて、上空に達します。このよごれたもののことを、「痰」と言います。

風と痰については、脳梗塞…東洋医学から見た原因と予防法・治療法 をご参考に。

上空とは脳のことです。東洋医学的に言うと、清空と言います。清空に達する入り口のことを清竅と言います。ここに風に巻き上げられた痰がへばりついて、清空が機能しなくなる。意識を失う。この状態がてんかんです。

清空・清竅については、めまい…東洋医学から見た6つの原因と治療法 をご参考に。

てんかん発作の原因

以上の説明でもっとも重要なのは、精という防波堤の部分的な損壊が「起こった」ということです。この損壊がある限り、驚 (興奮) という波が襲いやすくなるのです。たとえそれが些細な波であっても、被害が出てしまう。だからてんかん発作は、精神的緊張があるときはもちろん、特に理由がなくても起こってしまうのです。

てんかん発作は「驚」による誘発がハッキリする場合もありますが、ハッキリしない場合もあります。いちど精の防波堤に欠損が出てしまうと、その欠損部分から容易に波が侵入してくる。些細な波でも侵入してくる。発作をいちど起こすと、反復して起こしやすくなるのです。

なぜ脳梗塞のような後遺症を残さないか。こまめに簡単に風痰が昇るからです。神 (気) が非常に上りやすい。脳梗塞はためてためて、一気に大量の風痰が襲うので、致命的となるのです。

精を欠損させるものは「驚」ばかりとは言えません。精を欠損させる要素とは何か。以下に列挙します。そしてこの精を欠損させるものが、てんかんの原因とも言えます。

5つの原因と治療法

痰火襲神

邪熱が精を損傷しつつ神を襲い、上昇しながら津液を乾かし痰を作り、痰を巻き上げながら清竅をふさいで発作を起こすもの。

邪熱には、ストレス (肝鬱気滞) から起こる邪熱、食べ過ぎから起こる邪熱、外邪から起こる邪熱があります。治療で邪熱を取り除き、発作が起こらないようにします。

治法:清肝瀉火・化痰開竅。

湯液:竜胆瀉肝湯合涤痰湯。

鍼灸:霊台・行間・蠡溝など。

風痰閉阻

ふだんから飲食不節があって痰をもっているところに、たまたま気滞が精を損傷しつつ神を襲い、痰を巻き上げながら清竅をふさいで発作をおこすもの。

気滞には、ストレス (肝鬱気滞) によるもの、疏泄太過が疏泄不及に転じたものがあります。気滞による緊張を緩めようとして飲食過多が起こります。治療で気滞を取り除きつつ、痰を取り除き、発作が起こらないようにします。

治法:涤痰熄風鎮癇。

湯液:定癇丸。

鍼灸:合谷・太衝・豊隆など。

気虚血瘀

もともと精が弱く気血の推動も弱いところに、脳部の外傷による瘀血が清竅をふさぎ(瘀血阻竅) 、発作をおこすもの。

“脳為元神之府.” 李時珍<本草綱目・辛夷>

推動を弱らせる要素 (疲労) が重なると瘀血が増して発作が起こりやすくなります。治療で気を増し瘀血を除くことで、発作が起こらないようにします。

治法:補気化瘀・定風止癇。

湯液:黄耆赤風湯送服竜馬自来丹。

鍼灸:臨泣・三陰交・血海・膈兪など。

心脾両虚

後天の精が弱いために、神 (気) が些細な刺激で容易に上亢し、脾虚による痰を巻き上げながら清竅をふさぐ。

飲食の不摂生、体の動かしすぎ、体の動かさなさすぎ、これらは脾臓を弱らせ、後天の精を脆弱なものにします。治療で脾虚を補い、痰を作らないようにすることで、発作が起こらないようにします。

治法:補益心脾・理気化痰。

湯液:帰脾湯合温胆湯。

鍼灸:胆兪・神門・太白など。

肝腎陰虚

痰火が虚に転じたもの。

痰火の熱が強すぎると、熱をクールダウンする体力に負担がかかり続けます。肝腎はクールダウンし、落ち着かせる力の元になります。火事を消し止める放水車が足りなくなると言えば分かりやすいでしょうか。

治法:滋養肝腎。

湯液:大補元煎。

鍼灸:照海・陰谷・関元など。

発作時の治療

てんかん発作を起こしている最中に治療をすることは滅多にありません。しかし、ないとは言い切れませんので、まとめておきます。

陽癇

前駆症状:
眩暈・頭痛・胸悶・欠伸などが前駆症状として起こることがある。特に前駆症状がない場合もある。

発作時の症状:
倒れる。気を失う。面色潮紅し、そのうち青紫あるいは蒼白となる。歯を食いしばる。白目になる。項背が強直し、上下肢にけいれんが起こる。泡を吹く。痰がからむ。叫び声をあげる。二便を漏らすことあり。

発作後:
疲労感・頭痛が残る以外は、通常の状態に復する。

治法:急いで開竅醒神する。続いて、瀉熱・涤痰 熄風する。

湯液:黄連解毒湯送服定癇丸。

鍼灸:急いで人中・十宣・合谷などを刺し、醒神開竅する。

陰癇

発作時の症状:
面色晦暗。手足清冷。双眼半開半合・意識がなくぼんやりする。倒れて横になる。拘急。時にけいれん。泡を吹く。叫ばない、声が出るとしても微小。

発作後:
脱力感が残る。あるいは通常の状態。

治法:急いで開竅醒神する。続いて温化痰涎する。

湯液:五生飲。

鍼灸:急いで人中・十宣穴を刺し、開竅醒神する。

急いで回復させる意味

発作は、精と神とが離決することを意味します。精は陰で、神は陽です。陰と陽とは夫婦のようなものです。お互いお互いを助け合う、これらが離れ離れになると、精は神を養えなくなり、神は精を養えなくなります。この状態は非常によくありません。

てんかんは重度になると知能障害を併発していくケースがあります。神は人間の知性です。神を養えないということは何としてでも避けなければなりません。そのためにも、精を傷つける要素を取り除き、精を養い頑丈なものとしていく。

5つの原因を取り除くことが必要なのです。

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