狭心症…東洋医学から見た7つの原因と治療法

冠動脈の血流が悪化して心臓が酸欠を起こした病態を、狭心症と言います。酸欠がひどく、心筋の一部が壊死をおこした病態を心筋梗塞と言います。

どちらも胸苦しい痛みが主な症状で、東洋医学ではこれらを「胸痹 (きょうひ) 」と呼びます。急激な血流の悪化は、突然死にも結び付く、たいへん危険な病態です。

普段から心労・陰陽幅の不足・水面下の疲労の蓄積などが重なると、その人のウィークポイントは心臓になってきます。ウィークポイントである心臓を舞台に、正気 (生命力) と邪気 (病的副産物) のせめぎあいが起こります。正気が優勢で、邪気が劣勢になれば、狭心症は治癒します。たとえ心筋梗塞であっても、梗塞は残りつつも心機能を回復させることは可能です。

しかし下図のように、正気が劣勢で、邪気が優勢になると、狭心症や心筋梗塞の症状とともに、生命の危険が生じます。

≫「正気と邪気って何だろう」をご参考に。

1.気滞

≫「気滞とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

ストレスは肝臓を阻害します。東洋医学の肝臓は、端的に言えば条達機能です。条達機能とは、のびのびと若木が真上に伸びるような自由闊達さです。そういう働きが人体にはあります。気 (循環機能) は、この条達機能に支えられています。

ストレスは条達機能を妨げます。このようにして、働きが鈍くなった気のことを、気滞といいます。病的副産物の一つです。この気滞が心臓の機能を妨げると、冠動脈の血流が阻害され、締め付けや圧迫感を伴う痛みが生じます。

治法:疏調気機,和血舒脉…気のめぐりを整え、血のめぐりを良くする。
鍼灸:公孫・外関・少沢・少衝・中衝など。
漢方薬:柴胡疏肝散。

2.瘀血

≫「瘀血とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

気滞が血の流通を妨げると、瘀血 (めぐらない血) という病的副産物が生じます。瘀血は気滞をますますひどくし、心筋梗塞のような心臓の組織的な問題に進んでいきます。胸を刺すような鋭い痛みを伴います。

治法:活血化瘀,通脉止痛…瘀血を取り去り、脈を通じて痛みを止める。
鍼灸:公孫・然谷・京骨・至陰など。
漢方薬:血府逐瘀湯。

3.邪熱

≫「邪熱とは」 (正気と邪気って何だろう)  をご参考に。 

気滞は緊張です。圧縮した緊張状態が続くと熱化しやすくなるのは万物に共通する自然現象です。こうして生まれた邪熱は体液を煮詰め、痰湿と呼ばれるドロドロした濃い体液を生み出します。この痰湿が気滞と結びつき、冠動脈の血流を阻害します。邪熱を取り去ると、痰湿は自ずと消え去ります。

治法:疏肝清熱…気滞を取り去り、邪熱を取り去る。
鍼灸:公孫・少沢・少衝・中衝など。
漢方薬:丹栀逍遥散。

4.痰湿

≫「痰湿とは」 (正気と邪気って何だろう) をご参考に。 

≫「胸痛と湿邪』をご参考に。

痰湿は邪熱からも生じますが、飲食の問題からも生じます。つまり、甘いもの・脂っこいものの摂り過ぎ、間食の習慣、冷たい飲食の摂り過ぎです。その他、運動不足、クヨクヨしすぎても、脾臓 (消化吸収し栄養分を活動に変える働き) を弱らせ、栄養分がドロドロした粘っこい水のような状態で、体内に蓄積します。こうして蓄積した痰湿は、気 (循環機能) を妨げ、気滞を伴って冠動脈の血流を阻害します。胸の重苦しい痛みが特徴です。

治法:通陽泄浊,豁痰開結…脾臓の働きを鼓舞し、痰湿を取り去り、滞りを通じる。
鍼灸:公孫・豊隆など。
漢方薬:瓜蒌薤白半夏湯加味。

5.寒凝

急に寒くなったり、冬の寒い時期に、狭心症や心筋梗塞が悪化するのは良く知られています。気の循環機能は温める力に支えられているので、冷えると循環しにくくなり、気滞や瘀血を生じ、急な悪化の引き金になります。体を温める治療を行い、寒凝を散らします。

治法:温経散寒,活血通痹…体を温め、血流を活発にして滞りを通じる。
鍼灸:公孫・陽池・足三里・太谿など。
漢方薬:当帰四逆湯。

6.陽虚

≫「陰陽って何だろう」をご参考に。

陽虚とは、陽 (温めたり循環させたりする原動力) の弱りです。老化や、過労からも起こりますが、気滞・痰湿・瘀血・寒凝が長引けば、当然体力を消耗します。その消耗する部分が、陽ということです。心臓の陽が完全に消え去ると心臓が止まってしまいます。ですから、陽虚は非常に危険な状態です。

陽が消耗すると、気滞・痰湿・瘀血・寒凝を生じやすくします。ちなみに過労とは、しんどいのに無理に行うことで、肉体労働・精神労働・過激な運動などです。

治法:補益陽气,温振心陽…陽を強め、心臓を活性化する
鍼灸:公孫・陽池・足三里・太谿など
漢方薬:参附湯合桂枝甘草湯。

7.陰虚

陰虚とは陰 (クールダウンしたり潤いを与えたりする力) の弱りです。老化や過労からも起こりますが、邪熱が長引いても陰を消耗します。陰が消耗すると、さらに邪熱を生じやすくします。陰と陽はお互いを支えあって存在しており、陰が弱って陽をバックアップしきれなくなると、陽の弱りが生じ、危険です。

治法:滋陰清热,養心安神…陰を強めて邪熱を消し、心臓を安定させる。
鍼灸:公孫・照海など。
漢方薬:天王補心丹。

虚血性心不全

一つの例を出しましょう。

20✕✕年✕✕月26日、あるタレントの突然の訃報が報じられました。原因は「虚血性心不全」。もともと不整脈があり、倒れる直前に、番組収録で激しい運動をし、 その後、大量の食事をとった後、倒れたとのことです。その番組収録中、体調不良を訴えたが、ドクターストップとはならず続行したとの情報も。

これを東洋医学的に分析するとどうなるか。過労と飲食過多があったことは間違いありません。番組収録の激しい運動で、陰を一時的に激しく消耗。クールダウンする力が失われ、邪熱が急増する。

そこに油脂分を多く含んだ食事を大量に摂取。食事は邪熱に煎じられ、大量の痰湿が生じる。痰湿は気の循環機能を大きく損ない、気滞を生みながら、もともと不整脈というウィークポイントがあった心臓に侵入。気滞は瘀血を生み出し、血流が急激に悪化。

冠動脈の太さは、大量の気滞・痰湿・瘀血の邪気を受け入れる容量を持たず、不全状態になった。心臓の陽 (循環する力) が全く抵抗できないほど、気滞・痰湿・瘀血の邪気の速攻が激しかった。こう推測できます。

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