野球肩

小学4年生。ウチの息子。

3月 19日 (土) ・20日 (日) ・21日 (月) は3連休で、野球づけ。

19日、投球フォームを直すために、かなり投げたらしく、帰宅後、右肩が痛いと訴える。こんなに痛いのは初めてのこと。
20日、練習試合で、1日3試合。右肩は痛かったが、ポジションはサードなので、こなすことができた。
21日、今日も終日練習。起床後、ユニホームに着替え、パジャマを衣装ケースに乗せようとしたが、肩が痛い。そこで、出発前に朝から治療を行う。

痛む部位は、右肩関節の前部。

▶診察

脈診
女脈。左沈脈。幅は (±) 。疲れが取れにくい状態が見受けられる。四霊、もしくは胃兪・三焦兪・腎兪が適応する可能性が高い。表証はない。

空間診 (空間弁証)
空間は左下に虚の偏在。左大巨に手をかざすが、生きた反応なし。

そこで、うつ伏せで、腰の腎兪に手をかざす。左に生きた反応がある。左が虚、右が実。

ツボを手で触れながら、鍼をどのような傾きにすれば最も生体が応じるかを確認する。

▶治療

左腎兪に金製古代鍼をかざす。皮膚に直角にではなく、水平に、臀部方向に向ける。ツボが充実し、気の流れが起こり始めた瞬間に鍼を離し、左手で軽くツボを押さえ、処置を終える。 (補法の鍼)

▶その後の経過

治療を終えて、すぐに練習に向かう。アップでブリッジをすると痛かった。ランニングを終え、キャッチボールを始めたときも痛かったが、続けているうちに、だんだんましになる。お昼休憩までに、痛みは完全になくなっていた。その後も痛みは消失したまま。23日 (水) には、父親 (ぼく) とピッチング練習をして遊ぶ。今日は肩が特に軽い、とのこと。

▶病因病理

空間弁証による治療は、とくに整形外科的疾患で効果が期待できる。

本症例の病因病理をまとめる。

1.普段と異なる動き (投球フォームの改善) がまず原因としてある。これによって右肩に部分的な疲労が生じる。これが「右上前の気血の凝集」である。
2.普段と異なる動きは、全身的な疲労として体に影響する。これが「左下後の気血の弱り (虚) 」であった。
この2つの変化が起こったために、この2つ (陰陽) が互いに悪影響し合い、痛みが生じたと考えられる。つまり、右上前の「気血の凝集」が取れにくくなり、滞って痛みが生じる。

治療で、
・まず、左下後に気血を集めることによって、右上前の気血の凝集が散る。
同時に、全身の気血が均等になる。
・すると、全身の気血がめぐり、全身的な疲労が取れる。
同時に、部分的な疲労 (主訴の痛み) が取れ、新たに生じなくなる。

▶考察

もう少し分かりやすく説明する。

この治療は、ただの痛み止めではない。ポイントはいくつかある。

  1. 全身的な疲労が取れにくい状態になっていた。それを治療で取れやすくした。
  2. 右肩の前部は、人体を空間としてみたとき、右上前になる。治療を行った左腰 (腎兪) は、左下後になる。
  3. 鍼といっても、金属をかざすだけ。皮膚に触れてさえいない。

1.からわかるように、健康な子供がスポーツで痛みを出すということは、炎症を自力で鎮めることができないからである。その裏には、必ず全身的な疲労がある。疲労を取れやすい状態にしておきさえすれば、睡眠・運動・食事・談笑などをきっかけに、日常生活の中で疲労は勝手に取れていく。アイシングでは、肩の炎症は取れるが、疲労は取れない。

2.で分析したように、肩痛は、右上前で気が満員電車になっているとイメージする。右上前と空間的に対角にある左下後で、気がガラガラの電車になっているとイメージする。ここに気を集めることで、結果的に右上前を定員通りの電車に戻し、気の流れを正常化する。 “気 (機能) の流れが正常化する” ということは、体の機能の過亢進 (炎症) や低下 (疲労回復力の低下) が均等化することを分かりやすくイメージさせる表現である。左下後に気を集めることで、右上前を軽量化することができれば、目的達成となる。

3.は、目的を達成するための処置である。刺さなくても、刺激を与えなくても、その目的が達成できさえすれば効く。どういうカラクリで肩痛が起こっているかが、体全体という視点から俯瞰できていると、治療に必要なものが見えてくる。

必要なものは刺激ではない。気をダイナミックに動かすためのカラクリの理解である。刺した方が気が動くならば刺すし、刺さないほうが動くなら刺さない。

このように考えるのが、空間弁証である。

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