地支 (十二支) とは

五運六気って何だろう で展開したように、東洋医学において天干・地支の意味付けは重要です。ここでは、地支すなわち十二支の詳細を説明します。

地支とは、月の陰影の変化から一年を12ヶ月に分けたものです。これによって春夏秋冬の熱さ寒さ…つまり「気候」を12段階に分けて説明します。

夜は太陽の光が届きません。日中に比べると、晴れや雨による気温の変化が少ない。そのため、気候の変化を正しく認識できます。そんな闇のなかで、古人は「一年のゆるやかな温度変化 (気候) 」を感じ取ったのです。

闇には月が出ます。月には「影の部分」がありますね。
「光と影」を「陽と陰」とみると、
・影は陰でその輪郭を捉えることができます。
・光は陽でその輪郭は捉えられないですね。
輪郭あるものは物質 (陰) を反映します。「影の部分」で地 (陰) がどの程度盛んとなっているかを推察したものと考えられます。天 (陽) は輪郭が捉えられません。

そのようにして地を見、「地の十二支」を見ることによって、「天の六気」すなわち気候を洞察しようとしたのでしょう。気候は輪郭が捉えられません。つまり目に見えません。

地支が天の六気 (風・熱・湿・火・燥・寒) を生むのです。

(シ)  陰暦11月。新暦12月ごろ。種を倉庫で大切に保管する。

子者,北方至陰,寒水之位,而一陽肇生之始,故陰極則陽生,壬而為胎,
《素問入式運氣論奧》

「子」は「種子」また胎児。冬至を中心に陰が極まり (至陰) 、一陽が生じる。

(チュウ)  陰暦12月。新暦1月ごろ。種を蒔くにはまだ早い。

「丑」は「紐」。紐にしばられていまだ抜け出せない。

丑。紐也。…象手之形。《説文解字》

(イン)  陰暦正月。新暦2月ごろ。まずは土作りから、いよいよ準備を始める。

演変 (時の流れとともに進展変化すること)。 字源は、矢を収納する入れ物の口から 矢を出そうとすること。「寅」=「↑」+「口」。前に進む力 (矢) がいよいよ表に出る。

寅言万物始生蚓然也,《史記・律書》

万物が春の蚓 (みみず) のように生まれる。寒いようでも畑を起こすと、もうミミズが活動を始めている。

(ボウ)  陰暦2月。新暦3月ごろ。堅く閉ざした冬芽を開き、新芽が出る。梅の花が開く。倉庫の扉を開き、種まきを始める。

卯,冒也。二月,万物冒地而出。象開門之形。故二月為天門。《説文解字》

卯は「冒」。
「冒」は始まり (冒頭) 。
先陣を切る (冒険) 。
また覆う (帽子) 、緑が覆い始める。

門を開く図をかたどった象形文字。

(シン)  陰暦3月。新暦4月ごろ。芽から葉が出て一気に繁る。

辰は「振」。勢いよく動く。賑・震・晨。

辰震也。三月昜气動。靁電振。民農時也。物皆生。震振古通用。振、奮也。律書曰。辰者、言萬物之蜄也。律曆志曰。振美於辰。《説文解字注》

【訳】辰は震である。3月は昜气 (陽気) が勢いよく動く。雷電が振るう。民は農繁期である。万物が生まれる。震と振は古来から意味が通じる。振は発奮である。《律書》にいわく、辰は万物の (蜄…動也《康煕字典》) である。《律曆志》にいわく、辰は若葉が一気に繁って密集するさまである。

字源は明らかでないが、蜄=蜃 (おおはまぐり・みずち) を象ったとする説がある。気を吐き、蜃気楼を起こす伝説の動物である。《律書》にいう “辰は万物の蜄” とは、新暦4月に万物が蜄のように気を吐く…ということを言うのかも知れない。新暦4月は、急に花が咲き芽が吹いて景色が一変する。それを蜃気楼と重ねたのだろうか。

蜄は竜のような動物ともされるが、《和漢三才図会》には天に向かって気を吐く様子が描かれている。辰は日月星の総称でもあり、特に北辰 (北極星) を指す。蜄の吐く気は、天の星屑まで描き出したのだろうか。

(シ)  陰暦4月。新暦5月ごろ。緑葉が盛んとなる。早い作物は収穫ができる。苗代をつくる。

巳は「盛」。巳と已は同源で、已 (すで) に盛ん。極盛。

巳者,言陽気之已尽也。《史記・律書》

陽気が全て出尽くしてマックスである。

蛇の象形文字。かがんでいるものが起き上がる。

起とは…経絡流注の字源・字義 を見よ。
また、己と巳 を見よ。

(ゴ)  陰暦5月。新暦6月ごろ。夏至。草木は、光合成の本格化によって栄養を吸収しつつ、盛んに成長する。苗代から苗がドンドン伸びる。

午者,陽尚未屈,陰始生而為主。又云午,長也,《素問入式運氣論奧》

午は「長」、生長化収蔵の長。
また「杵キネ」、杵で臼を撞く。

午。啎也。五月,陰气午逆陽。《説文解字》
【訳】午は啎 (さからう) である。5月に陰気が陽に午逆する。

巳で陽が極まり、午で一陰が生じる。巳の昇ってゆく陽に逆らうように午の一陰がキネのように突く。成長 (陽) が盛んである一方、光合成で栄養の取り込み (陰) の本格化が始まる。

(ビ)  陰暦6月。新暦7月ごろ。草木は光合成を盛んに行いつつ成長を続ける。稲はますます伸び、繁る。

未,味也。六月,滋味也。五行,木老於未。象木重枝葉也。《説文解字》

木に枝葉が繁茂した姿を描く象形文字。

未者,言万物皆成,有滋味也。《史記・律書》

「未」は「味」。草木みなそれぞれ形体が完成し持ち味が明らかになる。滋味 (うまみと栄養)を備える。

(シン)  陰暦7月。新暦8月ごろ。草木、稲ともに、最も背が高くなる。

「申」は「电=電」に通じる。

電 (稲妻) のように縦に「伸」びる、の意味があり、草木の伸長の極みとなる。

成長の極みは、これ以上伸びない、成長が損なわれる…に意義展開する。よって「申」は「賊 (敗) そこなう」の意味がある。

申賊万物。《史記・律書》

また「申堅」… 稲などの植物が、もっとも背が高くなり、葉が堅くなって出穂する。

申堅於申。《漢書・律歴志》

まとめると、植物の成長 (陽) が損なわれる=成長が止まる=もっとも背が高い状態=堅くなる。

(ユウ)  陰暦8月。新暦9月ごろ。万緑が深く色づき、堅く分厚くなる。稲穂が熟し栄養でいっぱいになる。

「酉」は酒器の象形という説がある。酒。醸造して熟成することから、成熟の意味をもつ。

酉者.万物之老也.《史記・律書》

「老」は緑色が深い・野菜がひねて堅い。成熟。老熟。深厚。

酉者.飽也.《天文訓》
酉.秀也.《釋名》

「飽」は、稲穂が栄養でいっぱいになる。「秀」は、禾 (稲) から出た穂がたわわに垂れ下がるという意味がある。

「酉」は地平線「一」の下ににしずんだ「囧」であるとも取れる。

「明」は「朙」とも書く。「囧」は窓の象形で、窓は暗い部屋を明るくする。囧 (あき) らか。
《説文解字系伝》では、囧=朙=明 と、同列に扱っている。


(ジュツ)  陰暦9月。新暦10月ごろ。樹木の緑は色を失い、栄養は深く根幹に入る。稲の刈り入れ。

「戌」は斧のような武器あるいは鎌のような農機具を示し、稲のような植物を刈り取る。また「戌」は「滅 (烕・灭) 」に通じ、火 (陽気) が地中 (戊) に隠れる。また「戊 (土)」+「一 (一陽) 」で、土の中に一陽が潜む。

戌,滅也。九月陽気微,万物畢成,陽下入地也。五行,土生於戊,盛於戌,从戊含一。
《説文解字》

(ガイ)  陰暦10月。新暦11月ごろ。樹木は葉を落とし、幹枝の骨格のみが露出する。ハゼかけをして米を堅く乾燥させる。

「亥」は動物の骨格を描いたものである。「骸」は骸骨 (がいこつ) として用いられる。
骨は「堅い」というイメージを持つ。「核」・「閡 (とじる・とざす・そとからふさぐ) 」に通じる。
骨は土台で根本である。「荄」(根) に通じる。

亥。荄也。…亥者、閡也。…亥、核也。《説文解字注》

陽気はことごとく「荄 (根) 」に封蔵される。

天干 (十干) とは
天干とは、太陽の昇る様子、沈む様子を10段階に説明したものです。また、夏と冬とに見られるような太陽の高低差も10段階で説明します。この太陽の光が、地上の草木を照らし、「地の五運」を明らかにします。

天干 (十干) とは もご覧ください。

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