正気スコア… 肩こりがその場で消失した症例から

55歳。女性。2026/1/9初診。

もともと肩こりがある。デスクワークで悪化する。
その他、骨粗鬆症・家族性 (遺伝性) 高コレステロール血症・易疲労などがある。

前回治療時は、疲れにくくなってきた実感があるとおっしゃっていた。
今日は2月9日、ちょうど初診から1ヶ月。ざっと全体を診察する。正気の流れを任脈上 (胸腹部) で診ると、皮膚から1cm下のところまで流れがある。下段で説明するが、これは「可もなく不可もなく」というレベルである。治療前の状態としてはまずまずである。

まずまずだ。そう思って「どうですか」と聞いてみた。
すると「右肩が凝る」と言ってきた。

なんだと? 肩こり? どれどれ。

座ってもらって両肩に触れる。なるほど、少し右が凝っている。望診で流れを見る。すると5cm下にしか流れがない。全体状況を示す任脈で見た流れは1cm下、部分を示す右肩は5cm下、つまり、もともとはコンディションは悪くなかったが、急激な何らかの原因で部分的にのみ悪くなったことを示す。こういう時は問診だ。

「肩だけが非常に悪いですね。なんか原因として思い当たる事ないですか?」
「あるんです ^^; 」
「なに。」
「テレビ。」
「なんか面白い番組?」
「ミラノ・コルティナオリンピック、つい長時間見ちゃって…」
「ああ…」

豊隆を診る。予想通りの反応がある。

「つい食い入って見てしまいますよね。分かりますわ。でもそれが原因ですね。見るなとは言いません。ただ、初診のときに言いましたね? 目一杯のところまでやってはいけない、目一杯 (10) の一歩手前 (8のところ) でブレイク、方法は1分間でいい、横になって目を閉じる…。覚えてますか?」
「はい、覚えてます。」

この瞬間、豊隆の反応が消えた。
右肩を診る。流れが、さきほどの5cm下から、1cm下にまで回復している。全体の流れと揃った。任脈は1cm下のままなので。

「今、肩こりは?」
「なんか楽です^^」

ここで初めて鍼を打つ。百会に一本鍼。

抜鍼後、まず任脈の全体状況は、すでに皮膚表面まで流れが達している。
つぎに右肩は、こちらも皮膚表面まで流れが達している。

いい変化だ。

「今ね、肩も含めて全体にいい流れがあります。その関係上、ここ (胸) にもその流れがある。ここにホッとする感じがもし見つけられたら、そこに注目です。前にもそんなこと言ってましたね? また凝るんじゃないかと肩に注目すると、注目したらそれが育ってしまいます。悪いものが育ってしまうんですね。そうじゃなくって、ささやかでもホッとする感じがあるならそれに注目すると、それが育ちます。良いものを育てていきましょう。」

悪いところに注目しても得することはない。たとえば急性にどこかでぶつけたとかは患部を擦 (さす) ると痛みが引くが、慢性的なものにその法則は通じない。慢性的につらい場所は、その患部を擦ったり触ったり揉んだりすると、そこに注目が行くことになり、さわればさわるほど (行動を起こせば起こすほど) 、そこが気になってくる。気になると、脳がクルクル回転する。回転とは車輪が回転するようなもの、車輪が回転するとガソリンが減る。ガソリンとは血 (病気を治す燃料) のことであり、それが弱くなることでさらにつらさが慢性的になっていくという悪循環がある。つらさを育ててどうするのか。

遠方の患者さんのため、この日は1時間半後にもう1度治療した。
鍼を打つ前に流れを診ると、肩・任脈それぞれ、さっきの治療後に出た流れを維持している。
肩はどうかと聞くと、もう気にならないとのこと。

1回の鍼で即座に癒えたのである。

脈 (脈管) に流れがある以上、経脈にも流れがあるはずであるという仮定のもと、ここ3年ほどその流れを診るトレーニングを患者さんを診ながらやってきた。最初は腹部や肩・腰など手のひらを当てやすいところで、体に直接触れて診察していた。当時はそれが正気を診ているとはまだ知らずに取り組んでいた。

そもそも生命には流れがあり、どんな体の悪い人でも体の奥深くには必ず流れがある。この流れが無くなればそれは死体である。そして健康な人ではその流れが皮膚の表面にまで達している。皮膚表面・皮膚裏面・皮膚から1cm下・皮膚から2cm下・3cm・4cm・5cm…。このように数字で割り出して正気の状態を数値化する。皮膚から下の場合、数値が大きくなればなるほど正気は困窮していることを示す。

逆に皮膚表面にまで流れが達している時は、正気が本来の働きができているときである。皮膚表面からさらに上に流れがあればなおよい。1cm上・2cm上と、数値が大きくなればなるほど正気が強いことを意味する。

これを仮に「正気スコア」と呼びたい。

  • 1cm上…とても良い
  • 皮膚表面…良い
  • 皮膚裏面…やや良い
  • 1cm下…可もなく不可もなく
  • 2cm下…やや悪い
  • 3cm下…悪い
  • 4cm下…とても悪い

このやり方は僕独自のものであり、他にもやり方はあるだろう。一つ言えるのは、正気のレベルを把握することは必須であり、その要素のないものは中医学とは言えないということである。まずは問診から察する事から始める。ただし問診に頼り切っていては素人の域を出ないので、徐々に体から情報を得ていく。これが切診や望診である。西洋医学でも、画像検査や血液検査で、生命を把握しようとしているではないか。

鍼をどのツボに打つかよりも、生命が今どのような状態にあるか (病態把握) の方が重要である。軽症ならツボだけで行けるだろうが、重症はそうはいかない。そんなものだけでやろうとしても信念が続かない。病態さえわかれば、それがよくなるようにツボを工夫したらいいのである。

「流れ」を診る診察法は、三脈同時診法が基礎となる。この脈診法が一瞬でできる技術は「もの心がついた」くらいの状態と考えたらいいだろう。流れを知るには、そこから大学合格くらいの成長が必要である。脈拍は動いてくれるが、経脈は拍動してくれない。動いていないものの動きを診るのは難しいのである。

このように手のひらを皮膚に密着させる方法でやってきたのだが、下着を着ている部位は難しく、また喉や鼻などの凹凸のある部分も不可能だった。そのため皮膚から手のひらを離して、手をかざすやり方に変更し、診察のトレーニングをしてきた。

長所は凹凸や衣服を度外視して診られるということ、短所は手を密着させるよりもはるかに難しいということだった。難しさゆえに、時間がかかる。1分ほどかかるのである。この時間のロスは非常に大きい。1時間に10人が当時の僕に課せられたミッションだったが、そんな中でも弛 (たゆ) まずその診察を続けてきた。経験でわかるのである。今は苦しくとも、真剣に取り組んでいればいずれ手に取るようにわかる日が来る。ずっとそうやって克服してきた。だからこそ数多くの診察項目をそれぞれ数秒で診断できるようになったのである。

思った通り、そうやっているうちにある日突然、目で見ただけでわかるようになった。よく見える日は数秒、モタモタする日でも10秒くらいあれば流れの深さが何cmまで達しているかという診察が出来るようになった。そして、手のひらで診ている時よりも、はるかに広範囲の流れが一瞬で見えるのである。

最初は手で触れて切診で丹念に診ること、それが望診で診られるようになる日が来る。
それによって診察スピードが上がり、かつ正確に診ることができるようになる。

開眼したのは、ちょうど1時間に11人診なければならない状況に変わりつつあった頃だった。まさに天佑である。

初診で来られたばかりの患者さんは、流れは皮膚表面付近にはなく、深いところにしか見つけられないのが通常である。深すぎて「cm」で表すこともできない。それが治療を加えると流れが太く大きくなり、だんだん浅いところにまで達し始める。5cm下・4cm下・3cm下・2cm下・1cm下・皮膚裏面と…。

そしてついに皮膚表面まで達した流れは、さらに畳み掛けて治療をすると、皮膚表面より1cm上・2cm上・3cm・4cm・5cm…と太くなっていく。

ちなみに今現在ブログを書いている僕の体を診ると、35cm上まで達している。普段から自分を治療して診ているのではない。先日スタッフに「流れ」の説明をしているときに、初めて診て初めて知った。自然 (大自然や体) と一体化すれば生命力は自ずと大きくなる。

正気スコアで診察するレベルになると、3つの邪気スコアは正常値を示すことも付記しておきたい。
短期邪気スコア
長期邪気スコア
中期邪気スコア

脳付近の末期ガンで余命宣告を受けたものが、すでに1年を元気な状態で経過し、さらにガン中央部が崩壊し抜け落ちている画像を本ブログで紹介したことがある。週に1回、1日3回の治療スケジュールを続け、治療のたびに皮膚表面以上 (3cm上) に達した流れが頭部に診られ、さらに次回来院時の鍼を打つ前も皮膚表面の流れを維持していた。これは、治療に来ていない6日の間も流れを維持し続けたことを意味する。奇跡的な画像は、そんな中で得られたものであることを告白しておく。

末期ガン崩落… 余命宣告もガン中心部が消滅した症例の考察
末期ガン (頭部) の症例検討である。中医学に基づく鍼治療を行ったところ、「3月に倒れる」との宣告を大きく上回って、同年11月になるも片道数時間かけて当院に通院している。その経過中、ガン中心部に大きな空洞ができた。

正気とは流れである。生命とは流れである。

最初は、か細い “せせらぎ” のような流れでも、それを育て、大河のような大きな流れにしていくのである。

その流れは、流れを邪魔する堆積物 (気滞・痰湿・邪熱・瘀血) を、下流へ下流へと、体の外へ外へと、押し流してくれるに違いない。

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