かかとの痛み…ホクロまで取れた?

74歳男性。

「半年前から右かかとが痛いんですわ。左かかとも痛いけど、右に比べると半分くらいです。両方痛いから、歩けないんです。ソファーに座っていても、かかとが地面につくので、かかとを浮かさないと痛いんです。」
「それは相当、痛いんですね。」

本人の強い希望で、他の治療は受けず、当院のみの治療である。

問診

夜の足のほてり・耳鳴り・散歩から帰ってくると痛みがひどくなる・目が疲れる。腎の問題がある。特に腎の陰 (体をクールダウンする働き) が弱っている。

かかと患部の弾力感・熱感・発赤・腫脹。また、痛みが下半身に起こっている・痰が出る・舌の黄色く厚いコケ。牛肉が好物。湿熱がある。湿熱とは痰湿と邪熱が結びついたものである。湿熱の場合、湿>熱になると、下半身に症状が出る。逆に、熱>湿になると上半身に症状が出る。湿は水の性質を持ち、下に下にくだろうとするからだ。熱は火の性質を持ち、上に上にのぼろうとするからだ。

触診

体をよく診察すると、右胃兪に強い実の反応が出ていた。

診断

湿熱のもとになる痰湿がある。食べ過ぎや運動不足が原因だろう。
その熱が、年齢とともに弱りつつある腎の陰を圧迫。
腎は下半身を支配する。下が弱ったたところに、湿熱が注ぎ込んだ。かかとの痛みの理由である。
湿熱を除くと、腎が休まる。そのように弁証した。

1診目~3診目

右胃兪に鍼。

4診目

「痛みは?」
「同じですなあ。」
患部を見ると、はれている範囲は狭くなってきている。
「炎症の範囲は狭くなってきてます。ただし、体重がかかる場所の炎症が消えるまでは、痛さは変わらないだろうと思います。」

右胃兪に鍼。

6診目

「先生、これ見てください。」
「なんですか?」
「頭のてっぺんにホクロがあるんですが、なんか浮いてきてますねん。こないだ、ちょっと引っ掻いたら、めくれて血が出てね。」
「どれどれ…。」
確かに、禿げた頭に500円玉大の大きなホクロがある。
「ああ、ほんとですね…。このホクロ、なんかかさぶたみたいになってきてますわ。もしかしたら、とれるかもしれませんね。端からめくれて、綺麗な皮膚が出てきてますよ。」
「やっぱりそうですか。」
「また血が出るといけないので、触らないようにね。このホクロが取れたころに、かかとの痛みも取れるかもしれません。かかとの腫れは徐々に引いてきていますからね。」

右胃兪に鍼。

8診目

「痛いのが、ましになってきました」
頭のホクロは半分くらいの面積に。
足のほてりは治っている、とのこと。湿熱を除くことで、腎が補われている。

右胃兪に鍼。

12診目

「かかとは、奥の方でちょっと痛む程度です。」
ホクロは全部とれた。かかとのはれも取れた。
湿熱はほぼ取れたとみて、腎を補うよう治療指針を変更。
「カカトの痛みと、頭のホクロは、同じ原因で起こっています。湿熱の、湿を強く帯びた方がカカトに下り、熱を強く帯びた方が頭頂に上ったんですね。」
「はあー…! 天地ですなあ…!」
「まあ、この辺が東洋医学ですよ。ぼく、頭のホクロのことは知らなかったんです。カカトを治そうと一生懸命やっていると、知らないところまで治ってきた。体ぜんたいが、よくなってきてると思いますよ。」

左腎兪に鍼。以降、同処置。

18診目

「痛かった右のカカトは全く痛みません。いまは左の方が長時間歩いた後ちょっと痛い程度です。」
「そもそも、どっちのカカトから痛くなったんですか。」
「左からです。」
「ほんとに悪いのは左だったんですね。この左のカカトが取れたら、腎はかなり回復したということがいえると思います。」

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