アトピーを治したらコレステロールも下がった

49歳。女性。2023年6月5日初診。

顔面のアトピーで来院された。悪化するので化粧ができなかったが、現在は顔面のアトピーは略治、皮膚は安定し、化粧することができるようになっている。初診当初、塗布していたステロイドは、脈診で判定しながら少しづつ減らして現在0。

脈診で “体の声” を聞く
藤本蓮風先生の御尊父、藤本和風先生。その患者さんが、かつて近所におられた。その方いわく、「ピーナッツが好きでね、でも和風先生は脈を診て、” ピーナッツは一日〇〇個までやで ”っておっしゃるんです。」僕が鍼灸学校に通っていたころだった。

10月21日の治療で、驚くようなご報告をいただいた。

上限120のコレステロールが、倍近くの210もあったものが、
治療開始からわずか4ヶ月、正常値となったのである。

今回と前回では検査方法が違う (正常値が違う) ので比較しにくいが、上限値の倍近く (1.77倍) あったことを基準とすれば211から100前後まで急下降したことになる。

ただアトピーを治そうと、必要なことを指導していたのだが、どうも体は根本的に改善してきているらしい。東洋医学だから、それは当たり前といえば当たり前なのだが、素直にとてもうれしい。

東洋医学の「証」って何だろう
【質問】 鼻炎と胃腸炎は、東洋医学的に関係があるのでしょうか。また慢性炎症についての考え方をお尋ねしたいです。 …このご質問にお答えしつつ、東洋医学の基本である「証」とは何かを説明します。

脾胃に熱があるということは、食べ過ぎているということがまず疑わしいが…。

そうではなかった。

問診すると、他院の指導を受けて、それをストイックに実行されていた。
他院の指導とは…
・糖質をとらない。甘いもの・米などの炭水化物を一切食べない。
・間食をとらない。
・顔を洗わない。
・化粧をしない。

間食を摂らない指導は当院も行う。甘いものを控えるというのも分かる。

しかし、米を一切食べないのはよくない。糖質というククリで、米とその他 (お菓子・パン・メン) をゴッチャにするのは良くない。

実は、当該患者は食に関しては、もともとご自身で強い制限をかけておられた。20歳のころにダイエットをして、おかずをメインに食べ、米は添える程度にしていた。そんな生活を、アトピーが悪化する48歳まで続け、さらに、くだんの指導で米を一切食べなくなって一年半を経過している。

だから脾胃に熱が生じたのである。

20代のころ、献血をひんぱんにしていたが、それでもらった血液検査の結果を見ると、いつもコレステロールが高い目だった。自分はそういう体質かなあ…と思っていたという。ずっと血液検査をしていなかったが、今年 (2023年) 1月に、それ以来となる血液検査を久しぶりに受けたところ、LDLコレステロールが211もあった。再検査を勧められたが受ける機会がなかなかなく、なので薬も飲んでいない。その間、かなり悩んでいた。身長151cm、体重42kg、非常に整ったスタイルであり、しかもこんなにストイックに食事制限をしてきたのに数値がこんなに高いと、手の打ちようがないと感じて当たり前である。6月から当院で週に2回の治療を開始 (米食も開始) してアトピーが改善し、余裕ができてやっと再検査を受けた。それが今回の検査結果 (10月) である。

だから、この結果にとても喜んでおられた。

当院を受診する方で、コレステロールが高い患者さんはほとんどいない。すでに薬で下げているからである。またコレステロールを下げることを目的に受診する方も皆無である。中医学的治療のみでコレステロールがどの程度下がるかは興味のあるところではあるが、なかなかケースを得る機会が少ない。そんな中、本症例は、長く高値が続いているものが薬を飲みそびれ、また中医治療によってアトピーを治療する…という状況下で、コレステロールが極端に下がって正常値となった。こうした偶然のシチュエーションの中で得られた本症例は、ほんとうに貴重な経験だった。

「ほんとうは、お米が好きなんです。それをもう、無理に辛抱しなくていいんですね。」

そうである。

そしてそれだけではない。コレステロールが高いと動脈硬化になり、脳梗塞や心筋梗塞になりやすい。そこまでモロに行かなくても、あらゆる毛細血管がダメージを受けることは確かであり、内臓諸器官はすべて毛細血管でできているので、毛細血管がやられるとあらゆる病気の温床になる。たとえば肝臓も毛細血管の集まりだが、ここの流通が悪くなって非アルコール性脂肪肝 (NAFLD) ともなると、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) だけでなく、各種ガンやアルツハイマー病の原因となる。

非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) と薬物性肝障害
原因不明の肝炎についてご質問をいただきました。まずは肝臓が何をする臓器なのかを知ることが大切です。なぜ肝臓が窮地に立たされたのか、その原因をご自分の生活習慣に照らし合わせて考えることです。専門家の診察と指導を仰ぐことです。

だから僕も、とても嬉しいのである。

体内の各種ステロイド (steroid) ホルモンは、コレステロール (cholesterol) を材料に作られる。コレステロールは生命維持に必要な栄養なのである。そのコレステロールは余っているのに、ステロイドホルモン (副腎皮質ホルモン) が足りないとは皮肉な話である。

外用のステロイドを使う必要があるということは、体内のステロイドホルモンが足りない証拠である。しかし、ステロイドホルモンが足りないならその原料となる栄養 (コレステロール) をたくさん摂ればいい…という理屈は成り立たない。油っこいものを多食すればアトピーが治るという理論は成り立たない (かえって悪化する) からである。栄養をたくさん摂っても、栄養がたくさん余っていても、それを活用できなければ何の意味もなくなる。それどころか、死病を引き起こす結果となる適例である。

栄養について考え直す必要がある。人体は栄養を取り込み、それを活用できるものに変えてこそ成り立つ。そのキャパを超えたたくさんの栄養を摂取して、その栄養を活用できないならば、たくさんタンパク質をとろうがたくさん鉄をとろうがたくさんカルシウムをとろうがたくさん塩をとろうが水を飲もうが何の意味もない。それどころか、コレステロール過剰のようなことが起こらぬとも限らない…とはただの杞憂であろうか。

初診時、以下のように指導した。

「白米を食べてください。白米は砂糖も塩も使わない、世界でも類を見ない料理です。その味は淡白で、それそのものだけでは食べすぎることがありません。食べすぎるのは他の食材、つまり+αで食べる、パンとか麺とか、おかずとかお菓子とかの副食物です。パンや麺をできるだけ避け、白米を主食にして、白米と副食物の割合を決め、副食物が多くなりすぎないように工夫して食事を摂りましょう。」

この指導に、素直に耳を傾け、従ってくれた。もちろん、糖質が体に良くないという情報は脳裏をかすめただろう。しかし僕を信じてくれた。

その瞬間に足三里・豊隆・上巨虚の反応が消えた。そして本来の肝に反応が出るようになった。肝脾同病で、肝鬱化火と脾胃湿熱が同時にあったものが、脾胃が消えて肝のみになったのである。

その後、いままでの糖質制限を続けつつ、しかし白米だけは例外として、ご飯5おかず5の割合を守って食事を取るように心がけてきた。つまり、おかずがもう一口欲しくても、ご飯がもうたくさんとなっていたら、おかずを食べると5:5が崩れるので食べてはいけないのである。これで自然と腹八分目になる。「ご飯におかずをそえる」というのは、これほど大切なことである。

一言で言うなら和食である。庶民が食べてきた和食。昔ながらのものが結局は一番だった。そういうことはたくさんある。あちこち目移りする浮気性はよくない。これは真理である。

大正・昭和の宗教家、出口王仁三郎は数々の予言をしているが、
・米は勇気
・野菜は仁愛 (やさしさ)
・魚は知性
を養い、動物の肉を多食すると性質が獰猛になる…と説いている。
このうち、魚が知性を養うに関しては、DHA(ドコサヘキサエン酸)が脳を活性化し学習能力を上げるということが時代を経て言われるようになった。現代人は肉食が多くなって、みんな獰猛 (イライラ) になっている。これは中医学的にも同じことが言える。米と野菜と魚をバランスよく食べ、勇敢で心優しく頭の良い人になりたいものである。

▶穀気とは
中国伝統医学では、米は「穀気」と呼ばれる。おかずには「栄養」はあるが、この「穀気」がない。「気」は本来「氣」と書くが、これは米から出る湯気 のことである。この湯気は、宗気を意味すると考えられる。宗気とは、前に進む力、循環させる力 (推動) である。アトピーの原因になる邪熱を追い出すだけでなく、コレステロールでよごれた体を循環させ、コレステロールを胆汁酸に合成 (気化) し、胆汁として胆管→十二指腸→小腸→大腸→肛門から外へ押し出す力 (推動) である。そういう力を、本当に持っている可能性を示唆する資料として、本症例は意味がある。

胆汁とデトックス… 朝食は一口でも
朝食を取らない人が増えましたね。一昔前は小学校でも「朝ごはんを食べましょう」と指導していました。朝ごはんの必要性について、「胆汁」をキーワードに考えてみましょう。

また宗気の前に進む力、循環させる力 (推動) は、元気に活動する力でもある。当該患者は車の運転中に強い睡魔に襲われることが常にあったが、当院受診後はそういうことは無くなった。穀気 (米) によって宗気が補われ、はつらつと活動する力が増した側面が大きいと考えられる。

もちろん、白米を食べさえすればコレステロールが下がったり元気になったりするという話ではない。鍼もしているし、おかずとの割合も守っているし、間食もしていないし、ウォーキングも始めたし、いろんな要素が関わる。だから「白米さえ食べれば」というエビデンスを構築するのは不可能だし、これらの複雑な生活習慣をまとめたエビデンスを得るのも無理だろう。

この良好な検査結果が得られる以前のある日、当該患者とこんな会話があった。

「先生、コーヒーなんですけどね、今までは5杯も6杯も飲んでたんです。先生から “カフェインは控えめに” と伺っていたので、ずっと飲んでなかったんですが、たまたま今日久しぶりに飲んだんです。そしたらね、ぜんぜん美味しくなかったんです。不思議だなあって。」

「へえ、なんでやとおもう?」

「好みが変わったのかな。」

「好みってすごく重要なんです。たとえば体の水分が減ってくると、水を好みます。水分が足りると水を好まなくなります。だから体の水分は正常に保たれる、これは正しい好みです。ところが、たとえばメタボのおっちゃんがいるとしますね。肝臓は脂肪肝で、脂肪肝はガンや脳梗塞を引き起こす原因になります。そういうおっちゃんが、霜降り肉を好んで食べる。これ、おかしいんですよ。脂肪はもう体に十分足りているはずで、それどころか余って肝臓をダメにしている。体が正常なら、霜降り肉を見ただけでオエッてなるとか、霜降り肉を食べただけで胃もたれするとか、そうならないといけないわけです。そうやって拒絶するなら、脂肪肝は治るわけですからね。でも、多くはそうはならない。相変わらず、ギトギトした口を開けて嬉しそうに放り込むわけです。これは正しい好みとは言えませんね。この時点で、ものすごい異常が体に起こっているわけです。」

「うんうん、なるほど。」

「カフェインも同じことです。カフェインには興奮作用があるので疲労を感じにくくさせ、かえって疲労が取れにくくなる可能性があります。それを好まなくなったということは、疲労が取れ、アトピーなんかの炎症を起きにくくし、肝臓の持つコレステロールを排泄する働きを活発にしている可能性がありますね。好まなくなったということは、すごくいいことです。多分、体の循環が良くなったので、精神的なストレスも少なくなったんですね。コーヒーを飲まなくてもホッとできるようになったんですよ。カフェインを求めなくなったので、苦さだけが気になりだしたんでしょう。」

「押入れ」の疲れ
疲れがあるはずなのに感じない。それは、片付けるべきものがあるのに目に見えないのと同じです。つまり、押入れに入ってしまっている。 詳しく説明します。

どんなものを好むかで、健康なのか不健康なのか、今の状況が伺い知れるのである。

「おもしろいですね…。うん、白いお米はいつ食べても美味しいです^^」

「いい好みですね。その好みは、健康であるための必要条件です。逆に言えば、白いお米が美味しく感じないということは、何か問題があると見ていいんですね。」

 
白米を主食にする
 

他院で「顔を洗ってはいけない」「化粧してはいけない」という指導も受けていたことは冒頭に述べた。しかし、ぼくは「洗っていい」と指導した。顔を洗わないことでアトピーはマシにはなっているかもしれないが、それでアトピーを出なくしたところで、それが自然なこととは思わないからだ。化粧もOKを出した。これは僕の判断ではなく、脈診で体に聞いた結果による指導である。実際、顔を洗い化粧をすることでアトピーは一時的に悪化した。しかし順調に回復し、いまは略治の状態となっている。

本人は、化粧ができてすごく喜んでおられる。
白米も「食べていいんだと思うと嬉しい」と笑顔である。

正しい知識を得た。正しい好みに変わった。

女性の命ともいえる鏡に映す装い。化粧。
日本人が昔から行ってきた習慣。白米とおかず。

無理に操作などしようと思わないほうがいい。

自然を意識するだけで、いい成り行きは従ってくる。

体は自ずと整うのである。

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