稟とは…経絡流注の字源・字義

稟の字源・字義

稟 【訓】うける 「禀」は異字体。

賜穀也。从㐭从禾。《説文解字》

【訳】穀を賜るなり。㐭と禾から成る。

「㐭」とは、くら・米くら。
「禾」とは、稲のこと。たわわに実ってしなだれた稲。

「稟」とは、とくに高官から褒美(ほうび)として与えられる穀物のことである。
高官が下位の者に穀物を与える。
そこから「附与・賞与・さずける」の意味に、
また「承受・うける・たえる」の意味に派生する。
また上司から部下へ、あるいは部下から上司への「報告・連絡・つたえる」の意味が派生する。

今聞.吏.當受鬻者,或以陳粟,豈称養老之意哉.《漢書·文帝紀》

【訳】官吏が(ほうびとして)穀物を与える。その時なんと粥(かゆ)をもらう、あるいは古米をもってすると聞くが、これがどうして(官吏に)養老の気持ちがあると称することができようか。…米をさずける

人函天地陰陽之氣,有喜怒哀樂之情,天稟其性而不能節也。《漢書·禮樂志》

【訳】人は天地陰陽の気を函(い)れ、喜怒哀楽の情を有す。天はその性を稟(さず)けて止まないものである。…さずける

人稟天地而生而謂之命.《新唐書·蕭瑀傳》

【訳】人は天地より稟(う)け生ず。しかしてこれを命という。…うける

後時年十歲,干理家事,敕制僮御,內外諮稟,事同成人。《後漢書》

【訳】その時10歳、家事に干渉し、勅を制し僮(しもべ)を御し、内外に諮問し報告し、大人と事を同じくした。…つたえる・報告する

臓腑経絡学での読み方

《素問》《霊枢》、また中医学でも「稟」はよく使われます。たとえば「稟賦不足」は先天的に正気が弱い場合に用いられます。よって字義を知っておくことは重要です。

流注上では余り出てきませんが、衝脈の流注の理解の一助になります。

夫衝脉者.五藏六府之海也.五藏六府皆焉.
其上者.出於頏顙.滲諸陽.潅諸精.
其下者.注少陰之大絡.出於氣街.…並於少陰之經. 滲三陰.…滲諸絡而温肌肉.
《霊枢・逆順肥痩38》

【訳】衝脈は、五臓六腑の海である。この海から五臓六腑は生命力を授けられるのである。
その海は、上は頏顙に出る。そこで諸陽に染み渡り、それが呼び水となって諸精に流れ込む。
その海は、下は少陰の大絡に注いで気衝に出る。少陰を介して三陰経に染み渡り、諸絡を介して肌肉(体全体)に染み渡る。

このように、稟の意味を知っていると、衝脈が五臓六腑の「上官」であることがよく分かりますね。また、五臓六腑の海である衝脈が、頏顙から得られた水穀を呼び込むことにより、海を満たしていることもよく理解できます。

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