注の字源・字義
注 【訓】そそぐ
灌也。从水主聲。《説文解字》
液体が柱のようにまっすぐに流れる様子。
容器の口から注ぎ込む。上から下の容器に灌(そそ)ぎ込む。
意義拡大して、集中・凝集・限定。「注視する」「注意する」
挹彼注兹.《詩経》
【訳】あれ(大きな器の水)を汲み取り、ここ(小さな器)に注ぐ。
暴雨下如注,水潦成流。《東觀漢記》
【訳】暴雨が注ぐがごとく降り、水潦(雨が降り地上にたまる水)が流をなす。
対義語は「滴」。注はつながっている。滴は一滴一滴。よって注は、連接に通じる。
首尾連注,千里不絕。《北史・周法尚傳》
【訳】先頭から後尾まで連なり、千里を途絶えることがない。
注釈・脚注のように、意味を分かりやすく示す意味もある。これは水が器に満たされると、容器の底が浮き出て見えやすくなることから来ている。やはり器が関係する。
臓腑経絡学での読み方
《霊枢・経脈10》では、心中・胸中・肺といったところに「注」いでいます。こういう部分を容器のようなものと見なし、そこに脈気が入ると考えると、イメージしやすいと思います。
脾足太陰之脉.起於大指之端.…入腹.屬脾.絡胃.…其支者.復從胃別上膈.注心中.
《霊枢・經脉10》
【訳】脾足太陰の脈は、母趾の端に起こり、…腹に入り、脾に属し、胃を絡 (まと) う。…その支なるものは、胃より別れて膈に上り、心中に注ぐ。
後天の元気である脾が、胃から得た飲食物をもとに後天の精をつくり、それを心に注ぐ様子がわかります。心という器に、脈々と途切れることなく精気が凝集してゆく様子がイメージできます。
同時に、脾と心の連接関係を見て取ることができます。心脾両虚証などがイメージできますね。