廉とは

廉の字源・字義

廉 【訓】かど レン

「廉」は「广」+「兼」。

兼の字源

「禾」は稲などの穀物が実るイネ科の植物。
「兼」は「禾禾+又 (手) 」

よって、「兼」は、1つの手で2つの稲穂 (禾禾) を持つ。あわせ持つ。→「兼ねる」。

これが基本イメージである。

  • 「禾禾」の真ん中に「手」が入るデザインは、稲穂を刈る手の動きと取れる。→鎌

兼→廉

兼にはその他に、「並ぶ」「全て」という意味がある。
・ “兼,并也” 《説文解字》【訳】兼は并 (ならぶ) である。
・ “夫日兼照天下 ” 《韓非子·難四》【訳】太陽はことごとく天下を照らす。

これがさっきの基本イメージとどう関わるか。

これは田に植えられた稲をイメージすると分りやすい。
・「禾禾」で示される「2本の稲」は、等間隔に並んだ稲の列を象徴する。→「並ぶ」
・「等間隔」は「整然」をイメージさせる。整然とまとまる。完全にまとまる。→「全て」

廉の字源

このイメージが「廉」に受け継がれる。稲が植え整えられた田は、必然的に「四角」くなり、直線と「角目」が美しい「整然さ」がある。このように意義が展開したのが「廉」である。

補瀉って何だろう より転載

「广」は家屋である。

「禾禾」すなわち2本の「禾 (稲) 」が並び立つ様子を、2軒の家屋に見立てる。立ち並ぶ家屋は立体的にも角目があり、区画的にも田のような角目がある。整然とした美しさがイメージされる。

また、きれいな角にはきれいな直線が必要であるが、まっすぐに引かれた直線が急に曲がる。急に方向転換するイメージが付加される。

そこから、家屋など立体的なものの「側辺 (側面) 」という意味になる。

  • 歪みのない角目のある美しさ。→清廉潔白。それを破る行為は破廉恥。
  • 急な方向転換は、角目の美しさをともなう「いさぎよさ」につながる。→廉価 (潔い価格)。
  • 「簾」…竹を割ったようないさぎよさ・真っ直ぐさ・涼やかさ・角目の美しさ。
  • 「謙」…稲がまっすぐに整然と並ぶ様子は「折り目正しさほ」を思わせる。穂を垂れる姿 (毅然としたマインドの急な下方転換) 。
  • 「嫌」…円 (円と四角と陰陽) ではなく、四角 (方形) のカドの尖った様子。これを攻撃的なイメージとし、「女」 (陰) を付加してネガティブ ・陰湿的なイメージにした。「妨」 (女+方) もこれに共通する。
  • 「歷」 (歴) は、整然と並び立つ (禾禾) 過去からの足取り。止=足。
  • 「曆」 (暦) は、整然と並び立つ (禾禾) 日付。

臓腑経絡学での読み方

肺手太陰之脉.…上骨下入寸口.…其支者.從腕後.直出次指内.出其端.
《霊枢・經脉10》

【訳】肺手太陰之脉は、…橈骨茎状突起を上り、骨の廉 (カド) を下り、寸口 (太渕穴) に入る。…その支なるものは、腕 (手関節) の後ろから、人差し指の内廉 (内側面:解剖学的肢位ではない) まっすぐ出て、その端 (商陽穴) に出る。

《霊枢・經脉10》では、
・角 (かど) という意味、
・角を曲ったところの平面、
この両方の意味で用いている。これに付け加えたいのは、経脈によってブロックごとに整然と区画されたものとして人体が表現されているイメージである。また、この部位にある経穴には、角目正しいきちんとした効果、急な効果 (急な方向転換) を得られるニュアンスを付加してもよい。

たとえば上巨虚穴は「巨虚上廉」とも言われる。この穴名の「廉」を、「カドを際立たせる」と捉えるならば、方形を拡大するということにつながり、瀉法に適した穴ということが言えるかも知れない。たしかに、例えば便秘があって上巨虚に実の反応があるとしたとき、この反応を取れば (上巨虚を使うとは限らない) 、即座に (角目正しくきちんとした) 通じが付くことは珍しくない。

その他、「廉」の付く経穴の名称としては、下巨虚 (巨虚下廉) ・上廉・下廉・廉泉などがある。

「廉」という字が出てくるたびに、このようなイメージを重ねるとおもしろい。

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