47歳・女性。
心臓のあたりが苦しい。
お粥しか食べていない。明らかに元気がない。
大きなストレスがあった。それが原因とのこと。
今朝から月経が始まる。昼までにはドバッと出るはずが、量が少ない。色はいつもどおり。
診察・治療
胸部に手をかざす。
緊張が、左不容 (季肋部) →左乳頭→左鎖骨あたりまで達している。
もし乳頭にまで達していなければ、胸の苦しさは出ない。乳頭以上になると出る。
この法則は、心筋梗塞・狭心症・呼吸困難・うつなど、胸の痛みや苦しさを訴える際に共通する。
三陰交に手を触れる。
左右ともに、シッカリした瘀血の反応がある。月経が始まれば、瘀血の反応は消えていてもおかしくない。これは月経が始まっているのに、瘀血が下っていないということだ。経血量が少ないのが、やはり問題である。月経量が増えてこないといけない。
右内関に鍼。5分置鍼後、抜鍼。
効果
胸部の緊張が乳頭以下のレベルに下がる。
三陰交の瘀血の反応がとれる。
「いま、胸はどうですか?」
「ハイ、苦しさは感じなくなりました。」
その日の夕刻、出血量は1日目のいつも通りの多さになった。
かつ、胸の苦しさの再発なし。
考察
そもそも月経とは、ダムのようなものである。
一定の貯水量をキープし、オーバーすると放水する。
もし降雨がなければ、放水を止める。生活用水に必要な分を保持するためである。
陸上選手などは練習がハードすぎると月経が止まる。血を使いすぎたからである。
月経量が減ったり、一回とんだりするのは、基本的にはこういう生理がある。体は一定の体力を守るために考えてくれているのだ。
しかし、すべて生理的なものではない。その一例が、今回の症例だ。
ストレスによって気滞が生じた。その気滞が血の流動を妨げ瘀血を生じ、経血量を少なくした。その根拠が三陰交の反応である。
正気と邪気って何だろう▶気滞とは をご参考に。
正気と邪気って何だろう▶瘀血とは をご参考に。
そもそも47歳、閉経が近いということも考慮しなければならない。だからなおさら、このような診断が必要となる。経血量が少ないのが、生理的なのか病的なのか。年齢を重れば重ねるほど、貯水量が少なくなり放水量が減ることもありうるし、放水の必要があるのに円滑な排出が困難になることもありうる。
今回のケースは、放水の必要があるのにできない場合に相当する。血は体内に貯留物として滞り、病気の材料となる。よって放水を手助けすることは、様々な病気を治療したり予防したりすることにつながる。今回では、胸痛のすみやかな治癒につながった。
狭心症…東洋医学から見た7つの原因と治療法 をご参考に。
すなわち、右内関で気をめぐらせることにより、左右の三陰交の瘀血の反応が取れる。その結果、瘀血としての血の凝集が緩み、経血量が増えた。血が流暢に動き出すとともに、気滞がさらに安定して緩み、ストレスに端を発して起こった胸の苦しさが消失、安定した。