2026年5月2日(土) 19時30分~20時43分放送のNHKスペシャル、タモリさんと山中伸弥先生による「がん克服のカギ」を視聴した。有酸素運動 (早歩きなど) を3年間行うと大腸がんの死亡リスクを30%も減らす…これが冒頭の話題だった。
まずは、このすばらしい研究と努力を称えたい。

そして、当院でもこれをやっている。
通院中の患者さん、あるいは当院ブログの愛読者の方はご存知だろう。これはまさに当院が数十年前から推奨していることである。目に見えて体力 (生命力) がついていく。有酸素運動がガンに有効であるという仮説を推し進めているのだ。
ただし、当院の推奨には条件があって、脈診によって体の声を聞き、ウォーキングなどの運動をやってよいかどうかを判定し、ゴーサインが出てからスタートすることになっている。そのウォーキングによる負荷が適切なものであるならば、ウォーキングの時間を徐々に長くしていくことが可能であり、それを継続すると、なかにはさらなる負荷となる「早歩き」を体が求めてくる場合もあり、さらにジョギング、さらに筋トレというふうに、より大きな負荷をかけたほうがよいと脈診で判定される場合がある。
しかし、ガンに限らず初診の時点でウォーキングを指導することは少なく、まして早歩きやジョギング筋トレをやってよいと判定されることは皆無である。はじめから負荷をかけすぎると、膝や腰が痛くなったりカゼをひいたり体調をくずしたりして、運動が継続できなくなるのがオチとなる。だから治療を行って生命力を上げなから、負荷を少しずつかけていく。
すなわち、生命力のレベルに合わせて、負荷をかけるかかけないか、また負荷をかける場合にどの程度のものにするかを、こまめに脈診でチェックして、負荷が生命力を上回らないように留意するのである。

んっ? と思ったのは、ナレーションの「健康指導のみのグループと、有酸素運動を “かならず” 行ったグループの2つを調査した」(要約) というフレーズだった。
かならず?
そんなことが可能だろうか。実際の臨床では、負荷を超える運動を続けると、膝や腰が痛くなったりカゼをひいたり体調をくずしたりして、運動が継続できなくなる。これが現実である。抗がん剤ですでに体調を崩している人もいるだろう。今回、有酸素運動を行うグループに参加したガン患者において、ほんとうに全員が有酸素運動を3年も続けられたのだろうか? 実際にそんなことがあるだろうか? 僕の臨床ではまったく考えられない。全員とは信じられない。ギブアップした人が多数いるはずなのだが。ギブアップせざるを得ない人が多く出ると思うのだが。
つまり、ギブアップした人は統計に入れていないのではないか。被験者として継続する意思がないものとして母集団からハネているのではないか。だから “かならず” と言えるのではないか。
もしそうだとしたら統計そのものに意味がなくなる。続けられなかった人の数を明示すべきである。
なぜなら、ギブアップせざるを得なくなった人は意思が弱い人ではなく、生命力がもともと弱い人だからである。逆に、有酸素運動を継続できた人は生命力がもともと強かった人である。
この推察した内容が、もし現実に行われたとしたならば、生命力の強い人ばかりを検証したことになる。だとすると、ガン生存率が上がるのは当たり前のことである。
ただ単に、生命力の強い人のみをフルイにかけたに過ぎない。

考えが、あまりにも単純。
こういうものは、あちこちに散見される。
たとえば、痛ければ痛みを止めることしか考えない。

たとえば、栄養が足りなければ栄養を詰め込むことしか考えない。

そして、運動が足りないと見ればなんでもかんでも運動させようとする。

この単純さが、何も知らない世間を惑わすことがないよう切に祈る。有酸素運動を行ってギブアップとなってしまうならば、その理由は体調不良を起こしたからであり、その体調不良はガンに悪影響をもたらすという必然があるのだから。

