出血 (大量下血) の症例

▶︎初診日 (20✕✕ . 2 . 5) までの経過

71歳。女性。

1年前から脱肛があり、徐々に大きくなってきている。肛門科では「加齢による脱肛」との診断を受けている。この1年間、出血はなく、紙につくことすらなかった。

ところが半月前から、いきなりの大量出血である。これが続けて6回。しかも、だんだん出血が頻繁になってきており、自力で立ち上がれないほどとなった。この病状には、そういう激しさがある。

  • 1/15

    朝の排便時に突然、肛門から大量出血。トイレが鮮血で真っ赤に染まる。痛みは全くない。出血後、しんどさは感じなかった。過去に出血の経験はない。1年前から脱肛がある。痛みはない。

  • 1/16

    朝の排便時、同様の出血。最近脱肛が腫れあがっていたが、出血後は小さくなった。

    (小康状態)

  • 1/29

    2週間ぶりに同様の出血。しんどくない。肛門科を受診。痔があるとのこと。出血を止めるための座薬が処方される。

  • 2/1

    3日ぶりに同様の出血。しんどくない。出血後も脱肛が腫れあがっている。座薬を使っている。

  • 2/4

    3日ぶりに同様の出血。フラフラする。しんどいので散歩に行かなかった。

  • 2/5

    昨日に引き続き、同様の出血。フラフラが強く、朝からずっと寝ている。
    鍼治療を希望し、治療を依頼。
    出血に関して、以後は当院のみでの治療である。

1日30錠以上の薬剤の服用が多年に及んでいる。うつをはじめとし、不定愁訴が非常に多いため、クリニックで処方を受けている。ささいなことに不安を感じる。胆石の既往歴がある。

γ‐GTPが222 (正常値は48以下) で、危険値となっている。高値のγ‐GTPはアルコール摂取過多で見られるが、当該患者はアルコールを全くと言っていいほど飲まない。

▶︎西洋医学的な病理

▶︎▶︎γ‐GTPの値が意味するもの

γ‐GTPはアルコール性肝障害を示す指標になるが、非アルコール性脂肪性肝炎でも上昇することが分かってきた。当該患者の上昇の原因は、何が該当するだろうか。下のリンクを開いて推察してもらいたい。

https://www.kanen-net.info/kanennet/knowledge/inspection01

西洋医学的に見れば、γ‐GTPが危険値であることから、肝臓に負担がかかっていることは確かであり、肝炎が慢性的となって、肝硬変が進行しつつある可能性がある。肝硬変になると、次の2つの意味で出血しやすくなる。

1.静脈瘤を作り、それが破裂しやすくなる。
2.出血した傷を修復する力が弱くなる。

これらについて詳しく説明しておく。

▶︎▶︎肝硬変とは

▶︎▶︎▶︎コレステロールが多すぎる

まず、肝硬変はどのようにして起こるのだろうか。

食べすぎが日常的になると、コレステロール値か高くなる。コレステロールが高いと、中性脂肪が蓄積して脂肪肝となる。脂肪肝では、ところどころの肝細胞が肥大化する。肥大化すると他の肝細胞を圧迫して炎症を引き起こす。肝炎である。炎症を起こした肝細胞は死んでしまうが、死んだ肝細胞は線維化して固くなる。これが進むと肝臓そのものが硬くなり、肝硬変を起こす。また線維化するとガン細胞ができやすくなり、肝癌になることもある。

これが一般的だが、もう一つの要素がある。

▶︎▶︎▶︎仕事量が多すぎる

まず、正常な肝臓の働きをおさらいしておこう。

小腸から吸収された栄養分は、門脈という血管を通って肝臓に運ばれる。その血液には、栄養分・毒、この2つが入り混じっている。栄養たっぷりで体にいいはずの日常の食材も、分解される過程で毒 (アンモニアなど) が発生するからである。栄養たっぷりだが毒もたっぷりの血液は、門脈から肝臓に運ばれて解毒される。解毒された栄養豊富な血液は、肝臓から今度は心臓に送られ、全身を循環する。これが正常だ。

解毒は肝臓の大切な役割だ。肝臓は毒を無毒化して尿素に変える。もしこれができないと、毒が脳に到達して昏睡状態 (肝性昏睡) となり死に至る。

アルコールを例に取ってみる。アルコールを摂りすぎると、その分解過程で発生する毒により肝臓が傷つく。その結果、肝細胞は死んでしまう。

死んだ肝細胞は線維化して固くなる。これが進むと肝臓そのものが硬くなり、肝硬変を起こす。これは「コレステロール」と同じだ。

しかし、アルコール摂取を休むと、傷ついた肝細胞はやがて修復される。休肝日を設けると有効なのは、解毒の仕事を一休みさせることができるからである。「コレステロール」は、一日休んだくらいでは大差は出ないが、「仕事の休日」を与えるのは大きな差が出る。我々も働くことは嫌ではないが、休日は欲しい。肝臓もいっしょなのだろう。

▶︎▶︎▶︎摂取の過剰

まとめよう。

たとえば、アルコールの摂りすぎは肝臓によくない。その理由は上記の2つである。すなわち、
1.アルコールを摂りすぎると、脂肪肝になり、肝細胞が傷つく。
2.アルコールを摂りすぎると、解毒の仕事が増えすぎて、肝細胞が傷つく。

修復の暇を与えないほど常に食べ過ぎたり、何かを大量に摂取し続けると、肝臓に負担がかかって肝硬変へと進んでいく。普段の食事でさえ毒が発生し、アルコールでさえ休肝日が必要なのだ。

当該患者が大量に摂取し続けているものとは何だろう。ここまでの経過をよく読んで、各自で推測してもらいたい。

▶︎▶︎出血の理由

▶︎▶︎▶︎門脈の鬱血による出血

肝臓は毛細血管の塊であり、常に血液が流通している。

小腸の毛細血管から吸収された “栄養+毒” は、門脈という太い一本の血管にまとめられ、肝臓に直結する。その血管は細分化され、肝臓で毛細血管になり、再度太い血管にまとめられ、心臓に直結し、前進の循環ルートになる。

もし肝硬変が起こると肝臓内の毛細血管が機能しなくなり、肝臓内の血流が悪くなると、肝臓でせき止められるように血液が流通しにくくなって、手前の門脈で鬱血が起こる。門脈は出口をふさがれたホースのように、圧力が上がってパンパンになるのだ。肝臓が硬くないからこそ、門脈はスムーズに流れるのである。

行き場を失った血液は、門脈から枝分かれする細い血管に、しかたなく流入し、その血管の行く先で、血のたまった水風船のような瘤 (こぶ) 、つまり静脈瘤を作る。この枝分かれの細い血管は、食道や直腸にあって、食道静脈・直腸静脈と呼ばれる。これらの血管に瘤ができ、鬱血して破裂すると大出血が起こりやすい。

食道静脈瘤の破裂

食道静脈が鬱血し、静脈瘤をつくるとかなり危険で、これが破裂すると出血過多で亡くなってしまうケースがある。肝硬変の末期、突然口から真っ赤な血がゴボコボとあふれ出すとともに、見る見る血の気が引き、さっきまで生き生きしていた瞳が、呼び止める間もなく人形の遠い目のようになってしまう。有名な「食道静脈瘤の破裂」である。

直腸静脈が鬱血すると、痔出血の原因となることが多い。そのため直腸静脈は痔静脈とも呼ばれる。本症例は直腸静脈瘤が破裂した可能性が非常に高い

▶︎▶︎▶︎血液凝固因子の不足による出血

肝臓には血液凝固因子を作る働きがある。血が止まるのは血小板の働きによるが、その血小板の働きには肝臓が大きく関わっている。

肝硬変があると、その因子を作る働きが低下し、出血しやすくなる。

▶︎▶︎病理のまとめ

肝硬変により門脈が鬱結し、直腸に静脈瘤を形成し、静脈瘤が破裂することによって大量出血を起こしている可能性を視野にいれるべきである。出血前は肛門部がパンパンに腫れ上がるとのことである。加齢による脱肛のみでは片付けらられないと見るべきである。

また出血がこの半月でたびたび起こっているのは、肝機能が衰えてきているからであることを視野にいれるべきである。肝硬変によって肝機能が衰え、出血を続ける傷口をふさいで、血を止めようとする働きが弱くなってきている可能性である。

徐々に出血の間隔が狭まってきていることから、こうした事も踏まえ、大きな異変が起こりつつある危険性を認識しておく必要がある。

▶︎東洋医学的な病理

▶︎▶︎実熱による出血

東洋医学的に見ると、出血は、虚寒タイプと実熱タイプに大別される。

虚寒タイプの出血は色が薄く、ジワジワ少しずつ出血するのが特徴。体は徐々に衰弱していくが、急に命の危険レベルにはなりにくい。ゆっくりと腰を据えて治療することが可能である。不統血という。

実熱タイプの出血は色が鮮やかな赤で、一気にドバっと出るのが特徴。出血が大量に過ぎると、命の危険もある。早く手を打つ必要がある。迫血妄行と血熱妄行の2つに大別される。2つが同時に起こる場合もある。

本症例は実熱タイプである。実熱タイプの邪気は、もちろん邪熱である。

邪熱の原因は、多くはストレスによる気滞である。

正気と邪気って何だろう
我々の体のエネルギーを、東洋医学では「正気」といいます。正気とは体力です。生命力・回復力・持久力・適応力・治癒力…とも言い換えることができます。「邪気」とは、正気を邪魔するものです。邪気は2種類に大別できます。病理的産物と外邪です。

▶︎▶︎気分の熱による出血

浅い部分 (気分) で邪熱は形成される。血は深い部分 (営血分) に存在する。気分の熱が営血分に迫ると、営血分が動揺して出血が起こる。これを迫血妄行という。

たとえば2階建てで上下に部屋が2つあったとして、2階 (気分) の住人に問題 (邪熱) がある。下の1階 (営血分) の住人には問題がなくても、2階が上下階を仕切る床をドンドンとうるさく叩くと、それは1階 (血の領域) にも影響が出てしまう。

この場合は、2階を治療する。

あとで見ていただきたいが、4診はこの状態だった。

▶︎▶︎営血分の熱による出血

2階 (気分) の住人 (邪熱) が床に穴を開けて、はしごをかけ、1階 (営血分) に自由に行き来するようになった。これはあってはならないことで、1階はせっかく平和に暮らしているのに、プライバシー侵害である。このとき、以下の2パターンが有る。

  • 2階 (気分) の住民 (邪熱) が二人いたとして、その一人が1階に侵入したら「気営両燔」という。1階 (営血分) が犯されているので、出血が起こる。3診がこの状態だった。
  • 2階の住民 (邪熱) が二人とも1階に侵入して、2階には誰もいなくなったら、純粋な営血分の熱である。これを血熱妄行という。1・2診がこの状態だった。
出血…東洋医学から見た4つの原因と治療法
子供の鼻血のように軽いものから、潰瘍性大腸炎、また肝硬変末期の吐血のように生死にかかわるものまで、出血にはバリエーションがあります。東洋医学では、それぞれの出血を、偶然ではなく必然と考えます。どういう観点から出血を分析するのでしょうか。

▶︎▶︎理論を実践に

邪熱 (実熱) が、深い部分 (営血分) に影響する、あるいは侵入する。そして血絡を傷つけると出血する。邪熱が作られる浅い部分と、出血の原因になる深い部分。この二か所の邪熱の有無をよく見極める。そして邪熱を取り去ると、出血しなくなる。

問題は、この東洋医学の理論通りに治療できるかだ。こういう出血の場合、日本を代表する名医・藤本蓮風先生は「血海・三陰交・膈兪の反応をよく見よ」と指導されている。これらの穴処のいずれかにハッキリした反応を見いだせるか。

この手の感覚でこれが判別できなければ、目を閉じてバットをふるようなものである。出血を止めるなど到底およばぬことだ。

もし、明日も出血するとなると、衰弱が一気に進む危険がある。薄氷を踏む思いに信念の橋を架けられるか!

▶︎初診 (2/5)

緊急を要することなので、日曜日に朝から往診に向かう。
顔色が青白い。耳にも血の気が薄い。舌も白い。
横になって目を閉じている。
血海に両手をふれる。左血海に重量感のある邪気 (⧻) がある。ただし沈んでいて、このままでは邪気が取れない。一般の患者さんで、血海にこれほど強い反応は出ない。この邪気をきれいに取れれば、出血は止まると直感。まず、全体を調整して、左血海を浮かすことから始める。

▶︎▶︎腹診

臍の反応から。虚の反応。心神の治療は除外。
左不容の浅部に寒邪。寒邪はここ最近の急激な寒さに体が影響を受けたことを示す。
左不容の深部に邪熱。左章門の下、深部に邪熱。これらの邪熱は非常にとらえにくい。営血分の熱を示すと思われる。この熱の出所はストレスからくる肝鬱化火によるもの。
まず、浅部の寒邪を取らなければ、深部の邪熱がとれない。
左章門の熱が深すぎて、左血海にまで到達し反応が出ているのだろうか。
章門は左右の邪気の絶対量が同等。左右を司る胆経を動かす必要がある。
空間は左上が虚に偏している。左上の穴処が効果的である可能性。

▶︎▶︎脈診

沈脈。陰経の可能性。
幅は中等度。正気を補う必要がある。純粋な瀉法はできない。
中位の空間がない。いくつかのステップに分けて補う必要がある。

▶︎▶︎治療

以上をまとめると、左上の陰経に係わる穴処で、正気を補うことができ、しかも胆経を動かすことができ、寒邪を除くに適した穴処といえば…列缺※が浮かぶ。左列缺に触れる。効きそうな生きた反応がある。

※列缺については「2時間での解熱 (2歳) 」をご参考に。

左列缺に鍼。1番鍼を用いる。
まず、鍼をかざして補いやすい空間をつくる。
次に、刺入。穴処を補う。
さらに深く刺入。深部を補う。
さらに深く刺入。より深部に針先を運び、邪熱をとる。
その後、5分置鍼。鍼の入っている深さは約2ミリ。
その後、穴処を押えない瀉法の手技を用いて鍼を抜く。

左列缺後の反応は…
左血海の邪気が生き生きと浮いてきた。 よし!

念のため、他の所見も確認。
左不容の邪がとれる。
入れ替わるように、左章門に邪気が出る。その下の深い邪熱はなおある。
脈は幅あり。瀉法が適応。
腹診。力あり、瀉法が適応。空間は左下が実に偏している。

左血海に鍼。5番鍼を用いる。約1cm刺入し、すぐに抜く。穴処を押えない瀉法の手技。

左血海後の反応は…
左血海の邪気が消える。
左章門の邪気および、その下の深い邪熱が消える。

「3日間、お時間を下さい。もし、この3日の間に、今日みたいな出血があったら病院に行ってください。とりあえず、毎日治療しましょう。」と伝え、治療を終える。とにかく、3日間出血しなければ、体力が回復し、危険な波打ち際から離れることができると考えた。

▶︎2診目以降

  • 2/5
    初診 左列缺−左血海

    連日の大出血。血海 (⧻) 。

  • 2/6
    2診 左百会−左血海

    数滴の出血。血海 (⧺) 。

  • 2/7
    3診 霊台−左血海

    出血なし。血海 (+) 。

  • 2/8

    中等度の出血が2回。

  • 2/9
    4診 至陽

    中等度の出血。血海 (+) 。

  • 2/10
    5診 左百会

    出血なし。血海 (+) 。

  • 2/11
    6診 左百会

    出血なし。血海 (±) 。

  • 2/12

    出血なし

  • 2/13
    7診 左神門

    出血なし。血海 (−) 。以降も出血・血海ともに (−) 。

▶︎▶︎2診目 (2/6)

今朝、排便があったが、数滴の出血にとどまる。
顔色・舌色が回復してきている。
左血海に沈んだ邪気 (⧺) 。ただし、重量感は昨日の3分の2に軽減。
左不容浅部に邪気。初診は寒邪だったが気滞に変化している。左章門下方深部に邪熱。
左百会・左血海に鍼。左血海の邪気が消えたことを確認して治療を終える。

▶︎▶︎3診目 (2/7)

排便あったが出血はわずかに紙につく程度。
顔色・舌色がかなり回復。
左血海に沈んだ邪気 (+) 。重量感は初診の3分の1に軽減。
左章門に邪気。左章門下方深部に邪熱。熱が気分に出たか、あるいは新たな熱が気分に生まれたか。
霊台・左血海に鍼。左血海の邪気が消えたことを確認して治療を終える。

▶︎▶︎4診目 (2/9)

昨日 (2/8) 、朝の排便時に出血。ただし、量は以前に比べ少なく、半分くらい。
その日の昼にも排便時出血。この時も量は半分くらい。出血後、少ししんどく感じた。
今朝 (2/9) も、朝の排便時に出血。この時も量は半分くらい。出血後、しんどくない。

顔色・舌色に大きな変化なし。
左血海に沈んだ邪気 (+) 。重量感は2/7と同等。
左不容に邪熱。左章門下方深部に邪熱。
至陽に鍼。
左血海の反応は至陽の鍼で消える。血海に鍼を打つ必要がなくなったということは、営血分の熱の勢いが弱くなったということだろうか。だが、この2日で少量とはいえ3回も出血を見た。この辺が首をかしげるところだが、左血海の反応が取れれば出血は止まる、との当初の信念に基づき、治療続行。一度の出血量が減っているのだから、改善に向かっているとみる。

▶︎▶︎5診目 (2/10)

出血なし。紙につく程度。
左百会に鍼。
左血海に2/7と同等の邪気 (+) があったが、左百会で消える。

▶︎▶︎6診目 (2/11)

出血なし。紙につく程度。
左血海に初診の5分の1ほどの邪気 (±) 。
左百会に鍼。左血海の邪はこの鍼で消える。

▶︎▶︎7診目 (2/13)

出血なし。まったく紙につかない。
左血海は最初から邪気なし (-) 。完全に穴処が浮いていて良好。
左神門に鍼。

▶︎その後の経過

以降、3月10日現在にいたるまで、出血まったくなし。紙にもつかない。2/23には本人から、「脱肛が小さくなったので、もう出血しないと思う」という声が聞かれた。出血前は脱肛がキンキンに腫れあがるらしい。直腸静脈瘤が小さくなったのだろう。やはり門脈うっ血が改善した可能性がある。門脈うっ血が改善したということは肝臓が改善したと考えるべきか。

左血海の重量感のある邪は、3診目くらいから影を潜め、それに少し遅れるようにして出血が止まった印象がある。その後、血海そのものは、2/17 (10診目) に一度だけ鍼をしたのみで、ほぼ使用する必要がなかった。安定してからは、神門に処置をすることが多く、血海に軽く反応が出ていても、神門等の処置で消失した。神門には精神を安定させる働きがある。

▶︎まとめ

出血が止まるとともに脱肛が小さくなった。やはり直腸静脈瘤による腫れが疑わしい。そう考えると、1年前に起こった脱肛は、今回の出血の序章であった可能性が高い。

出血は物質的である。本症例で西洋医学的な病理を非常に重視しているのは、ホッとしたら痛みがマシになるとか、寝ていれば良くなるとか、そういうレベルではないからである。出血箇所の損傷が修復されねばならず、血液凝固因子も改善されねばならず、鬱血があればそれも解決しなければない。そういうことを鍼でやるには、それなりの力量が必要となる。

治療を継続し、不安を感じやすい性格は大きく改善した。

現在、1日3錠。

まず出血を止める。そして原因を少しずつで良いから取り除いていく。

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