髆と膊

髆・膊・臑・臂

《霊枢・經脉10》に見られる「髆」は、肩甲骨を指します

説文解字に端的に説明されています。

髆.肩甲也.

《説文解字》

《霊枢・經脉10》には「肩髆」と表現されています。「肩髆」も肩甲骨のことです。
また「肩髆内」とも表現されています。「肩髆内」とは肩甲間部のことです。
また「髆内」とも表現されています。《類経・七巻経絡類》によれば「髆内」も肩甲間部のことです。

「髆」は「骨+甫+寸」です。補とは…「甫」の字源字義 で展開したように、「甫」には “ピッタリ張り付く” という意味があります。肋骨にピッタリと張り付くように肩甲骨は位置していますね。

《霊枢・終始09》で見られる「膊」は、上腕部を指します。「臑」が上腕部内側面・前面を指すことから、
「膊」は上腕部の外側面・後面を指すと考えられます。

《霊枢・終始09》では「肩膊」と表現されています。文脈から、また《類経》の解説から見ると、
「肩膊」は肩関節周辺を指すのではないかと考えられます。

詳しく見ていきましょう。

中国人が「膊」の意味をどう理解しているか、百度百科で調べると、膊は “上肢で、特に肩にちかい部分の上腕部” とあります。

膊之下,胁之上曰腋。《類経・七巻経絡類》
ここでの「膊」は肩関節あたりのことを言っています。つまり「肩膊」と同義です。

膊臂之交曰肘中,穴名尺泽。肘以下为臂。《類経・七巻経絡類》
ここでは「膊」は上腕部のことを言っています。

「膊」は「肉 (月) +甫+寸」です。補とは…「甫」の字源字義 で展開したように、「甫」には “ピッタリ張り付く” という意味があります。体幹部 (肉=月) にピッタリと張り付くように上腕部は位置していますね。

字源・字義から見ても、上腕部であることが示唆されます。また「臑」との対比で、「臑」が上腕部の内側面・前面であるならば、膊はそれ以外の上腕部の範囲 (外側面・後面) ではないかと思います。

このように、髆と膊は異なるものです。

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